家庭でも「高圧電力」は使えるのか
一般家庭でも「高圧電力」を契約することは出来るのか。制度の仕組みやメリット・デメリットを詳しく検証し、答えを出します。
目次
電気代が「安い」高圧電力
高圧電力のメリットは電気代の安さです。
電力量料金の単価を家庭用と比較してみると
まずは高圧電力と家庭向けの従量電灯プランの電気料金の単価を見比べてみましょう。東京電力のメニューを引用します。
高圧電力 | 従量電灯 | ||
---|---|---|---|
その他季節 | 16.38円/kWh | 1〜120kWh | 19.88円/kWh |
夏季 | 17.54円/kWh | 121〜300kWh | 26.48円/kWh |
301kWh〜 | 30.57円/kWh |
使用量によって発生する電力量料金の単価は、高圧電力(業務用電力)プランでは1kWhあたり20円以下であるのに対し、一般家庭でよく使われている従量電灯プランでは20〜30円となっており、高圧電力の方が明らかに安いです。
例えば食品を買う時も、コンビニなどで小分けになったものよりも業務スーパーなどで大きな箱ごと買った方がディスカウントが効いていることが多いですが、電力についても高圧電力は使用量が多くなりやすいため、その分割安な単価が設定されています。
また、家庭向けを含む低圧電力は2016年に自由化されたのに対し、高圧電力は2004年に自由化され競争が非常に激しいことも要因として挙げられます。
高圧電力は一般家庭で使えないわけではない
そんな電気代が安い高圧電力は一般家庭でも使えるのか。分かりやすく解説します。
一般家庭でも使えるには使える
高圧電力は条件を満たしてさえいれば、家庭でも使用することは可能と言えます。
そもそも高圧電力というのは、契約電力の大きさの区分でしかありません。一定以上を超えれば自動的に高圧電力となるため、一般家庭で使えないというわけではありません。
ですが高圧電力となるのは「50kVA以上」と、非常に大きな容量が必要となります。高級住宅街にある大豪邸でさえも、この契約容量を上回ることは稀です。この容量をクリアしている時点で一般家庭とは言えません。50kVAと言うと、4人世帯の平均的な住宅(50A=5kVA)の10倍の容量です。
したがって、現実的には「一般家庭」で高圧電力を使うことは難しいと言えます。
大規模マンションでは導入事例も多い
ただし集合住宅に限ってみると、高圧電力を間接的に利用している例は既に多々あります。
家庭向けの電力自由化がスタートする以前には、大型マンションなどで高圧一括受電という仕組みが導入されることがしばしばありました。これはマンション全体で高圧電力を購入し、それを各住戸に小分けして配電することで電気代を安くする仕組みです。
業者によって異なりますが、最低でも30〜50戸がまとまって契約する必要があります。建物の全戸が電気を共同購入する仕組みです。
一般家庭で高圧電力を使うデメリット
一般家庭でも一応は利用できる高圧電力ですが、仮に導入したとしてどのようなデメリットがあるのか。詳しくまとめます。
電気代は安いがその他のコストが高くつく
高圧電力の電気代の単価は安いですが、その他のコストが高くつきます。全体として見ると、一般家庭ではかえって割高となるケースがほとんどです。
例えば電気代に関して見ても、使用量に応じて発生する電力量料金は安いものの、基本料金は高額になります。
また、高圧電力を受電するにはキュービクルとよばれる変圧器を自分で設置する必要があります。キュービクルは小さなものでも、新車が購入できるほどの価格です。低圧電力の場合は電力会社が電柱の上などに設置した変圧器を利用するため、この設置費用が掛かりません。
また、キュービクルを始めとする設備の点検コストも増大しますし、電気主任技術者という有資格者を選任しなくてはなりません。主任技術者を外部委託するだけでも、月に最低でも数千円以上は掛かります。
諸々のコストをふまえると、高圧電力を使うべきでない施設で高圧電力を無理に使う経済的メリットは存在しないと言えます。
低圧のまま電気代を削減することは可能です
わざわざ高圧電力に変更せずとも、低圧のままでも電力会社を切り替えることで電気代を削減することは可能です。特に契約容量が大きい場合は、基本料金を割安に設定している新電力が多いため大幅な削減が可能です。例えば東京電力エリアで15kVA契約・月800kWhの場合、東電と比較して年間6万円・19%の削減が可能です。
シミュレーションは以下のページで。