東京電力の高圧電力既存プランが廃止に 市場価格連動の選択方法を専門家が解説 | どれを選ぶべきか

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2026年3月末からの東京電力高圧電力、どれを選ぶべき?


 2026年をもって既存の高圧電力プランを終了する東京電力。新プランではベーシック/市場調整ゼロ/市場価格連動の3種類が提供されていますが、どれを選ぶべきか。メリット・デメリットと見落としがちなリスクを解説します。



26年3月末で旧標準メニューが廃止に


 東京電力エナジーパートナーでは、2026年3月末をもってこれまで提供してきた高圧電力・特別高圧電力メニューを廃止します。新規契約の受付は25年3月末をもって終了していますが、既存契約者に対してもこの変更が適用されます。


 新たな料金メニューは従来プランとは大きく異なる部分があり、従来プランには無かった「電気代が高額になる」リスクを孕んでいます。新料金メニューの注意点や選び方を詳しく解説します。


新標準メニューとは


 東京電力エナジーパートナーの新標準メニューの概要を解説します。


燃料費調整部分に大きな変更点が


 東京電力エナジーパートナーの新標準メニューは、従来プランの燃料費調整額に当たる部分が大きく変更されています。燃料費調整額に相当する部分を以下の3種類から選ぶことができます。


市場調整ゼロ ベーシック 市場価格連動
価格参照元 財務省貿易統計 燃料価格 財務省貿易統計 燃料価格
卸電力市場 電力取引価格
卸電力市場 電力取引価格
価格変動幅
平時の電気代
取引価格高騰時
電気代
かなり高
備考 一般的な家庭向けプランや
従来プランと同じ仕組み
時間帯により料金単価変動
→夜(22〜7時)がやや安

 ベーシックでは燃料費調整額に加え「市場価格調整」が加算されますが、概念としては燃料費調整額の計算方法の差と捉えてください。


 燃料費調整額の計算方法にこのような違いがあり、選ぶプランによってリスクの大きさも大きく異なります。「調整額」と言われると支払う電気代への影響は小さい、誤差のようなものだという印象を持ちがちですが、調整額の変動により電気代に2倍3倍の差が生じることもあり、燃料費調整額の計算方法が異なる上記3プランは全く別の料金メニューと言える差があります。


 以下、市場価格連動のメリット・デメリットに焦点を当てて詳しく解説します。なお、この記事では「ベーシックプラン」と「市場価格連動」をまとめて「市場連動型プラン」として解説します。




市場価格連動とは? リスクを正しく理解しよう


 初めて耳にする方も多い「市場価格連動」を分かりやすく解説します。


そもそも市場価格連動とは


 市場価格連動(市場連動型プラン)という言葉を初めて耳にする方のために、「市場連動」とは何か、家庭向けの料金メニューで一般的な「燃料費調整」と比較しながら解説します。


燃料費調整 市場連動
参照する数値 財務省「貿易統計」に記載された
燃料価格
日本卸電力取引所における
電力取引価格
価格変動の幅 小さい 大きい

 一般的な燃料費調整額は、財務省が毎月公表している「貿易統計」に記載された燃料の輸入価格を元に計算します。個々の電力会社が調達している価格ではなく、日本国全体で輸入した平均価格を元に算出されます。


 それに対し市場連動型プランでは、日本卸電力取引所における電力の「取引価格」を元に調整額を算出します。電力の価格はエリアごと・30分単位で値決めがされており、この取引価格を使用します。


 電力の取引価格は燃料価格、特にLNG(液化天然ガス)の価格で水準感が決まるため、燃料費調整と市場連動の間には一定の相関性があります。ですが電力取引価格は燃料価格の水準だけでなく電力需給の影響も大きく受けるため、燃料費調整と市場連動型は異なる値動きをすることが多く、「別物」といえます。


 では市場連動型にはどのようなメリット・デメリットがあるのか。詳しく解説します。


市場連動型のメリット


 市場連動型プランは、電力取引価格が安定しているタイミングでは燃料費調整型と比較して電気代が安くなる傾向があります。


 電力会社は卸電力市場などから電気を調達し、顧客に供給しています。燃料費調整型の料金メニューであっても、卸電力市場から調達している例が多いです。電力会社は価格変動が大きい卸電力市場から調達した電力を、価格変動が小さい燃料費調整額で販売します。燃料費調整型では調達時の価格変動リスクや価格ヘッジコストを転嫁した値決めをするため、平時は燃料費調整型の電気代が高くなる傾向があります。


 分かりやすく言い換えると、燃料費調整型は保険料を支払って価格変動幅を抑制しているのに対し、市場連動型では保険に入らないか保険を掛ける割合を抑えることで保険料分を削減していることになります。保険事故(電力取引価格の高騰)が起こらない限りは、保険料負担の無い市場連動型が価格面で有利です。


市場連動型のデメリット・リスク


 市場連動型はいわば「無保険」あるいは十分な保険に加入していない状態です。事故が起きた時に負担が大きくなるリスクがあります。


 例えば2021年1月に電力取引価格の高騰が発生しました。通常この時期の電力取引価格は10円台前半ですが、月間平均で66.53円(東京エリア)と約5倍に高騰しました。新型コロナの影響で海外の港湾での船積み作業が滞ったことで日本国内で燃料不足が発生し、十分に発電できなくなったことが原因でした。


 電力取引価格が66.53円/kWhを記録した2021年1月を例に取ると、「市場価格連動プラン」の市場価格調整単価は概算で約+61.5円/kWh程度となります。月に10万kWhを使用する需要家の場合、通常時と比較して月の電気代が615万円も上昇することになります(2025年度市場価格連動プラン 基準市場価格12.64円、基準市場単価1.142円/kWh)


 「ベーシックプラン」に関しても、電力取引価格が2021年1月水準に高騰した場合、市場価格調整単価は13.84円/kWhとなります。月に10万kWh使用する需要家では平時と比較して電気代が138.4万円上昇することになります(基準市場単価0.257円/kWh:東電公式サイト料金シミュレーションページ掲載単価)


電力取引価格→ 66.53円/kWh
ベーシックプラン
市場価格調整単価
13.84円/kWh
市場価格連動型プラン
市場価格調整単価
61.54円/kWh

 電力取引価格の月間平均の最高値は2021年1月の66.53円/kWh(東京エリア)ですが、100円あるいは200円と高騰するリスクもあります。2021年1月に1日平均で154.6円を記録した日もあります。


 平時は安い市場連動型プランですが、何か事が起きた時に電気代が跳ね上がる恐れがある点には注意が必要です。蛇足ですが、2021年1月の電力取引価格高騰により少なくない電力会社が倒産や事業撤退に追い込まれています。そのような経緯から電力会社が顧客に電力取引価格の変動を転嫁するために市場連動型プランの提供を増やしています。


結論:どれを選ぶべきか


市場調整ゼロ ベーシック 市場価格連動
市場連動度合い 無し 約30% 100%
燃料費調整単価
2025年5月分
0.18円/kWh 0.15円/kWh 無し
市場価格調整単価 参考値
電力取引価格6.0円/kWh
無し -1.70円/kWh -7.58円/kWh
市場価格調整単価 参考値
電力取引価格66.53円/kWh
無し 13.84円/kWh 61.54円/kWh

 メリットもある反面、市場連動型プランには小さくないリスクがあります。当方としては最もリスクが大きい「市場価格連動」については非推奨、「ベーシック」についても慎重に検討することをおすすめします。原則として「市場調整ゼロ」を推奨します。


 東電以外にも割安な電力会社が見つかる場合もあるので、一括見積もりサービスを利用して他社と料金比較することをおすすめします。他社を検討する場合も市場連動型には注意してください。一括見積もりサービスについては以下のページを参照してください。


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