高圧電力の販売から「逃げ出す」新電力が急増中
2022年、高圧電力・特別高圧の販売から撤退する新電力が相次いでおり、混乱がひろがっています。その背景にある事情と、「撤退」の通知が届いた際の対処方法をまとめます。
目次
相次ぐ高圧電力販売からの「撤退」
高圧電力の販売から撤退する新電力が相次いでいます。日経新聞や業界紙である電気新聞の報道から、高圧電力の販売から撤退した新電力をまとめます。
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契約満了に伴い契約を終了(更新しない)する新電力も増えていますし、中には需要家に対し一方的に「契約解除」を通告する新電力も出てきており混乱が拡大しています。
撤退が相次いでいる背景
撤退が増えている背景を解説します。
エネルギー価格の高騰
最大の原因はエネルギー価格高騰を理由とした電力取引価格の高騰です。
2021年下半期以降、新型コロナ禍からの急激な経済活動再開や、インドネシアの石炭輸出停止、中国の石炭生産の停滞などを理由としてエネルギー価格が高騰しています。
更に2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻によるエネルギー供給への懸念の高まりから、一段とエネルギー価格が高騰しました。
エネルギー価格の高騰により、国内の電力取引価格が高騰しています。卸電力取引所の東京エリアプライスの月間平均値を見てみましょう。
12月 | 1月 | 2月 | |
---|---|---|---|
2018年度 | 10.97円/kWh | 11.01円/kWh | 10.66円/kWh |
2019年度 | 8.71円/kWh | 8.17円/kWh | 7.59円/kWh |
2020年度 | 14.35円/kWh | 66.53円/kWh | 8.29円/kWh |
2021年度 | 18.04円/kWh | 23.95円/kWh | 23.36円/kWh |
2021年1月に国内の燃料(LNG)不足による電力不足から価格が暴騰したため2021年度の価格はそれと比較すると落ち着いているようにも見えますが、コロナ前と比較しても2021年度の平均価格は高いことが分かります。
新電力は発電所を持つ会社と直接契約する相対調達などを行っており、全量を卸電力取引所からの調達に頼っているわけではありませんが2021年度の取引価格水準では多くの新電力が赤字になる水準です。
元々利ざやが小さかった
原価の高騰に加え、高圧・特別高圧電力では利ざやが小さいという事情もあります。
高圧・特別高圧電力の電力量料金単価は、家庭向けの低圧電力と比べて約半分の料金単価です。託送料金が低圧と比べて安い、1件あたりの販売量が大きいといった要因もありますが、供給される電力自体は低圧も高圧も同じです。低圧と比較すると高圧は利幅が小さいと言われています。
実は2021年末から低圧の新規契約受付けを「一時停止」させる新電力が増えていますが、この動きは高圧よりもワンテンポ遅れたものでした。低圧の方が利幅が大きいことが、この時間差に繋がっていると言えます。
契約していた新電力から撤退通知を受けたら
契約していた新電力から契約解除、あるいは契約更新しない通知を受けた場合の対処方法を紹介します。
すぐに他社への切り替え手続きを
高圧・特別高圧電力の契約は原則として相対見積もりが必要です。以下の一括見積もりサイトを利用して見積もりを取ることを推奨します。2022年3月現在、通常の数倍以上の見積もり依頼があり、「高圧撤退」の影響を感じているところです。
サイト名 | 対応種別 | 対応地域 |
---|---|---|
エネチェンジ | 高圧・特別高圧 | 全国 |
見積もりはいずれも無料で行えます。
記事冒頭でも紹介したように新電力の撤退が相次いでいる上、大手電力も新規契約を停止する動きが出ています。北陸電力では「急激な申込みの増加」のため2月下旬から高圧電力の受付を停止しています。行動するのは一秒でも早い方が良いです。
契約していた新電力からの供給が打ち切られた場合、最終保障供給約款という仕組みで電力供給を受けることが出来ますが最終保障供給約款は標準的なメニューより2割程度高い料金設定となっているので注意が必要です。
以前のような割安な料金は当面期待できない
エネルギー価格の高止まりにより、新電力の調達価格の下落も見通せない状況が続いています。2021年上半期以前のような新電力・大手電力が入り混じった激しい価格競争は現状難しく、結果として新たに契約する高圧電力の料金単価は以前よりも高いものとならざるを得ません。
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