本当にエコ?バイオマス発電に潜む「闇」

エコではない? バイオマス発電の問題点


 国内でも導入が進むバイオマス発電。環境負荷が少ない、クリーンなイメージがありますが、大きな問題点を抱えた発電方式でもあります。この記事では、そうしたバイオマス発電の問題点を指摘します。



実は幅広いバイオマス発電


 本題に入る前に、まずはバイオマス発電について簡単に説明します。


燃料の幅が広い


ドイツのバイオマス発電所


 一口に「バイオマス発電」と言っても幅はかなり広く、全てを一緒くたにして話を進めることができません。
 「火力発電」にLNG(天然ガス)や石油、石炭など様々な種類があるのと同じように、バイオマス発電も燃やす「燃料」は様々です。


 大きな分類としては2種類あります。
 まず、木材など固形物を燃やすタイプ。そしてもう一つが家畜の糞尿や下水処理の汚泥などから発生したメタンガスなどを燃やすものがあります。


 更に、燃料の原料はよくイメージされる木材(間伐材)などから木造住宅の廃材、食品廃棄物、家畜の糞尿、下水道の汚泥など多岐にわたります。




輸入燃料という盲点


 バイオマス発電の中でも、輸入した「燃料」を燃やすものが本当にエコなのか、私は疑問に思います。以下で詳しく説明していきます。


急増するパームヤシ殻の輸入


輸入量の推移

パームヤシ殻の輸入量の推移


 「貿易統計」によると、バイオマス発電の「燃料」として使われるパームヤシ殻の輸入額は2010年44億円だったものが2017年には85.3億円へと2倍近い拡大を見せています。


 パームヤシ殻(PKS)の主な用途はバイオマス発電の燃料であり、日本各地でバイオマス発電が増加するのにあわせて輸入量も増加を続けています。


パームヤシとは?


パームヤシの実


 パームヤシはあまり聞き慣れない作物ですが、「パーム油」という油を絞ることが出来る作物です。パーム油は「植物油脂」として加工食品に使われたり、洗剤や化粧品など工業製品にも使われる便利な素材です。


 ちなみに、日本では8割以上が食用として使われ、日本人は年間4Kgのパーム油を摂取していると言われています。


 油を搾ったあとのカスがパームヤシ殻です。


パームヤシの実の中身


パームヤシの栽培による環境破壊


 パームヤシの生産にあたって、産地では熱帯雨林の急速な伐採(20年で九州に匹敵する面積)が様々な環境問題を引き起こしています。


 土地を開墾するために行われる野焼き(焼畑農業)や、開墾されたパームヤシ農園などで発生する森林火災は主要生産国であるマレーシアやインドネシア、その隣国であるシンガポールで深刻な煙害を引き起こしています。


 また、先住民が生活の場を追われ、強制労働や児童労働といった人権問題を生じたり、希少な野生動物が生息地を追われるなどの被害も発生しています。


 パームヤシは植物で、大気中からCO2を吸収しているという理由(カーボンニュートラル)から、パームヤシ殻を使ったバイオマス発電は「CO2を発生しない」とされています。


 しかし、生産段階まで遡って見ると、必ずしも環境配慮型のクリーンな電源とは言い切れません。


 もっとも、日本に輸入されるパームヤシ殻の多くは現地でゴミとして処理されているものなので、バイオマス発電をやめたからといって熱帯雨林の破壊が止まるわけではありません。


パームヤシのプランテーション


輸送に掛かるコストは


 熱帯雨林の破壊と比べれば些細な問題ですが、パームヤシ殻を日本まで輸送する際にも環境負荷が発生します。産地であるインドネシア・マレーシアから船で大量輸送する必要があるためです。


 パームヤシ殻は石炭や天然ガスなどの化石燃料と比べて、重量あたりの熱量が低いです。同じ熱量を得るには、より大量に輸送する必要があるため、輸送時のCO2発生は化石燃料よりも大きなものとなります。


燃料 発熱量
(Kcal/Kg)
パームヤシ殻 4500
石炭 6203
軽油 9088
天然ガス(LNG) 13016

 現地でパームヤシ殻が廃棄物として処理されている現状を鑑みると、パームヤシの栽培を減らしつつ現地にバイオマス発電所を建設するのが最も効率的ではないでしょうか。インドネシアから日本まで船で10日掛かります。




推進すべきバイオマス発電は?


 バイオマス発電の全てに問題があるわけではありません。有意義なバイオマス発電を最後に紹介して終わります。


廃棄物を使ったバイオマス発電


 家畜の糞尿や下水処理で発生する汚泥、建物を解体した際に発生する廃棄物などを使ったバイオマス発電があります。


 こうした廃棄物はリサイクルが進められていますが、未利用のまま焼却され埋め立てられるものも少なくありません。


 活用するにあたっては品質の安定化(建築廃材であれば釘などの分別など)という課題はありますが、いずれも廃棄物として処理するにも費用が掛かるものなので更に有効活用されることに期待したいです。


地元産木材を使った発電


 林野庁の推計によると、日本では年間2000万m3の間伐材が発生し、そのほとんどが未利用となっています。伐採されたまま山林に放置されているものが多いということです。


森林の未利用間伐材


 また、林業の停滞にともない間伐すらされずに放置されている山林も増加を続けています。


 こうした地元産の木材を燃料とするバイオマス発電所を建設することで、林業を活性化し、過疎化が進む地方の振興も期待できます。


 山林の適切な管理は国土の保全という観点からも重要なことです。コストの問題はありますが、固定価格買取制度や最近導入が決まった「森林税」などを上手く活用して普及が進めば、様々なメリットが生まれるはずです。




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