日本を蝕む「低圧分割ソーラー」という問題

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日本の電気代を押し上げる「低圧分割ソーラー」


 テレビや新聞ではまだほとんど話題になっていませんが、太陽光発電に関して「低圧分割ソーラー」という問題があります。実例を交えながら、低圧分割ソーラーの問題点を分かりやすく解説します。



そもそも低圧分割ソーラーとは?


 「低圧分割ソーラー」という言葉を初めて聞く人のために、低圧分割ソーラーとはどんなものか分かりやすく解説します。


見た目はメガソーラーだけど・・


 一見すると一つの巨大な太陽光発電所に見えても、実は細かく区切られた小さな発電所の「集合体」である場合があります。


 太陽光発電所は一定の規模を超えると「高圧」更に大きなものは「特別高圧」という区分になりますが、「高圧」以上の発電所は色々と規制が厳しく、設置・運営するにはコストが掛かります。


低圧分割ソーラーの模式図


 しかし一定規模を下回る「低圧」の発電所にはそうした規制の多くが適用されません。そこで、発電所を低圧として認定してもらうために、わざと細かく区切って申請することを低圧分割といいます(細かくといっても1区画100坪以上が多い)


現在は国が禁止


 こうした低圧分割は、2014年に経産省が省令で禁止したため、それ以降は表立って新設することが出来なくなっています。


 なぜ経産省は低圧分割を禁止したのか、その理由はこうです。


低圧分割ソーラーの問題点


 低圧分割ソーラーの問題点をまとめます。


規制が緩いから問題が起こりやすい


 記事冒頭でも紹介しましたが、低圧分割ソーラーは「高圧」のソーラー発電所に適用される様々な規制が適用されず、かなり緩いです。



 高圧になると課せられる規制や、必要な費用から逃れられる「メリット」があります。


 また、設置工事が杜撰な例があり、基礎工事が適切でなく強風で飛ばされたり、急斜面に設置して土砂崩れを起こす事例も発生しています。また、低圧でも保守点検が義務化されましたが、しっかりと対応している所有者は少ないと言われています。


 緊急時の連絡手段を確保するため、所有者の情報などを掲示する看板の設置が義務付けられていますが、低圧分割の太陽光発電所ではそれが無いものが少なくないとの指摘もあります。


立入禁止などの看板も必要

所有者連絡先や立入禁止の看板の設置は義務だが・・

日本全体の電気代を押し上げる


 高圧のソーラー発電の場合、発電所を設置する人が1台数百万円かけて変圧器(キュービクル)を設置する必要があります。しかし低圧分割されたソーラーの場合、設置義務は無く代わりに電力会社が電柱などの上に変圧器を設置して対応します。


 また、電柱などの設備も低圧分割によって余計に必要になる場合が多く、そうした諸々のコストを電力会社が負担することになります。


 電力会社が負担した費用は、託送料金という形で電気を使う全ての人が実質的に負担することになります。つまり、一部の人たちの利益のために日本全体が犠牲になるということです。


低圧分割ソーラーのせいで電気代が高くなる


低圧分割が疑われる事例の一覧


 実際に低圧分割が疑われる太陽光発電所の実例を紹介します。


新電力が手掛ける低圧分割ソーラー


 「低圧分割が疑われる例」を紹介します。
 なお、いずれの事案についても上で紹介したような問題が必ずしも存在するとは限りません。


会社名 場所 規模
藤田商店 香川県さぬき市鴨部字西山 など 49.5kW × 400区画
周辺10個の地番に40区画ずつ
AOIエネルギーソリューション 熊本県天草市有明町赤崎 45.0kW × 256区画
新出光ファシリティーズ
(新出光の関連会社)
福岡県北九州市門司区新門司 46.0kW × 30区画
TakeEnergyCorporation
(熊本電力親会社)
熊本県菊池市旭志麓字牛繁 など 49.5kW × 9区画
須賀川瓦斯 福島県岩瀬郡鏡石町久来石 など 40.0kW × 7区画と
30.0kW × 1区画
自然電力 大分県国東市武蔵町 など 40.0kW × 6区画
Looop 山梨県北杜市大泉町西井出井富 など 40.0kW × 2区画と
20.0kW × 4区画
エネルギー・オプティマイザー 茨城県小美玉市大谷 49.5kW × 5区画
チョープロ
長崎地域電力親会社)
長崎県西海市西彼町中山郷 など 47.5kW × 4区画
を2箇所
サニックス 福岡県築上郡築上町高塚 49.5kW × 2区画
連続する地番に1区画ずつ
シン・エナジー
(旧洸陽電機)
栃木県那須郡那須町高久甲 49.5kW × 3区画
連続する地番に1区画ずつ
亀井組 徳島県鳴門市大麻町 22.0kW × 3区画
連続する地番に1区画ずつ

・掲載基準
 資源エネルギー庁のFIT認定設備一覧(2019年2月23日閲覧)より
 同一もしくは連なる地番に出力50kW未満の太陽光発電を複数持つ
 家庭向けに電気を販売している企業やその関連企業


 抜粋したのは家庭向けに電気の販売も手掛ける「新電力」や代理店・関連会社ですが、新電力以外が手掛ける低圧分割ソーラーの方が圧倒的に多く存在します。


 上で紹介した事例の中には、2014年以前に認定を受けたものの2018年末時点で「運転開始前」となっている事例も見られ、太陽光発電の「未稼働案件」というまた別の問題を抱えている可能性があるものもありました。


 新出光系が北九州に保有する低圧分割ソーラーはGoogleMapの航空写真で見やすいです。一見すると一つの大きな太陽光発電所に見えますが、拡大して見ると中がフェンスで区切られているように見える部分もあります。 → GoogleMap


低圧分割ソーラーを探す方法


 資源エネルギー庁の「事業認定情報」から都道府県別の発電所一覧リスト(風力やバイオマス発電なども含む)をダウンロードすることが出来ます。


 ダウンロードしたExcelデータから、発電出力が「50kW未満」の発電所を探すと、同じような住所に同じ所有者が持つ太陽光発電所がズラズラと出てきます。


低圧分割が疑われる事例

低圧分割が疑われる事例

 Excelをお持ちでない場合は、ファイルを一旦パソコンにダウンロードしてからGoogleスプレッドシートという無料のウェブサービスに読み込ませると、閲覧出来ます。


 所有者情報などの看板の掲示義務を怠っている太陽光発電所の所有者を見つけるのにも役立つと思います。


まとめ 日本を静かに蝕む「爆弾」


 規制前に設置された低圧分割太陽光発電は違法とは言えないものの、規制をかいくぐり、そして必要なコストを社会に押し付けている点で批判の声が上がりそうです。




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