同じ電力会社でもCO2排出量は変動する
電力会社ごとに大きな違いがあるCO2排出量。しかし、同じ電力会社であっても、電気を使う時間帯によってCO2排出量が大きく変動しているということは、あまり注目されていません。
CO2排出量が大きく変動する理由を説明した上で、家庭でも実践しやすい「排出量を減らす方法」を紹介します。
目次
電源構成は一定ではない
CO2排出量が大きく変動する、と言える背景には「電源構成」が大きく関係しています。
公表されているのは年間平均値
電力会社が公表している電源構成は、過去の「一定期間内」の実績に基づく実績値です。
特にことわりがなければ、前年度実績を電源構成として公表するのが一般的です。つまり、電力会社が公表している電源構成は前年度の「年間平均値」です。
電源構成は刻一刻と変わる
同じ電力会社であっても、実は電源構成というものは刻一刻と変動しています。電力需要が刻一刻と変わるため、それにあわせて各発電所の出力を変動させているからです。
「ベースロード電源」といわれる石炭火力や原子力は発電量を一定に保っていますが、「ミドル電源」や「ピーク電源」と位置づけられている発電所は、電気の需要に応じて発電量を大きく変化させます。
それにより、全体の構成としての「電源構成」も時間帯によって大きく変わります。
電源構成が変わればCO2排出量も変わる
1kWhの電気をつくるのに全くCO2を排出しない発電方法もあれば、1kWhごとに700g以上を排出する発電方法もあります。発電方法が変わればCO2排出量も大きく変わるのです。
1日の中でCO2排出量が少なくて済むのは
九州など太陽光発電の導入量が多い地域では、太陽光発電の発電量が多い時間帯の排出量が少ないです。具体的には正午頃を中心に11〜13時台が「底」となります。
九州の場合、同じ1日でも排出量が多い時間帯には1kWhあたり450g以上のCO2を排出するのに対し、排出量が少ない時間帯には150g程度にまで減ります。3倍もの差があります。
こちらはelectricityMapから引用した、2018年11月29日の九州エリアにおけるCO2排出量の推移です。太陽光発電の発電量がピークとなる昼12時頃に排出量が最も少なくなっています。九州では季節によっては電力需要の80%を太陽光発電がまかなう時間帯もあり、当然そのタイミングにはCO2排出量が少ない電力を使用することができます。
九州のほかにも中国、四国や沖縄エリアについても同様の傾向であるとみられます。
CO2排出量が変動しない電力会社もある
例えば東京ガスのように100%近い電力をある一つの発電方法に頼っている場合は、時間帯による変動はほぼ生じません(東京ガスの場合は95%がLNG火力発電) 複数の発電方法を組み合わせている場合でも、組み合わせによっては変動が少ない場合もあるでしょう。
また、過去に経産省が試算したところでは、昼(8〜22時)の排出量が1kWhあたり462gだったのに対し、夜は435gとわずかな差しか見られませんでした(平成19年度実績をもとにした試算)
原発の停止や太陽光発電の大幅な増加などにより現在とは状況が大きく異なりますが、変動が必ずあるわけではない点には注意が必要です。
CO2排出量を減らすためにやるべきことは?
CO2排出量を減らすためには、電気の使用量そのものを減らすだけでなく、使うタイミングにも注意することが効果的です。家庭でも出来る対策を紹介します。
排出量のピークシフトを考えよう
節電も大切ですが、電気を使う「時間帯」を変えることも考えてみましょう。
例えばわが家ではドラム式洗濯機や食器洗い乾燥機を使っていますが、これらの機器の使用を低排出量の時間帯にずらす、あるいは充電できる機器の充電時間を移動するといった方法がおすすめです。
九州電力エリア(2018年11月)の場合、排出量が多い時間帯は1kWhあたり450g以上のCO2を排出しますが、少ない時間帯はわずか150gほどと3分の1に減ります。電気の使用を「振り替える」だけでもCO2排出量の削減が可能です。
特に太陽光発電の「出力制御」が行われている、あるいは今後行われる九州、四国、中国、沖縄にお住まいの方は効果が大きいので、検討してみてください。
将来的には経済的メリットも受けられる?
日本でも、過去にはこうした季節や時間帯別のCO2排出量の差に注目し、ピークシフトを促す料金プランの導入を検討していたことがありました(平成21年頃)
その際、そもそも昼夜のCO2排出量の差が大きくなかったことや、排出量を正確に把握するための設備の導入に費用が掛かること、また電気を使う側(企業)へのアンケートでも導入に消極的であったことなどを理由として、「当面導入することは困難」と結論付けられています。
ですが昨今の世界的な流れとして、炭素税の導入の検討によりCO2排出量の削減に対して経済的メリットを与える「原資」を生み出しやすくなっている点や、東日本大震災以降の太陽光発電の大量導入によって時間帯ごとのCO2排出量の差が一部地域で大きくなっている点をふまえると、将来こうした料金プランの導入をもう一度検討すべき時が来るのではないでしょうか。