FIT電気を「再エネ」と呼んではいけないシンプルな理由

FIT電気は「再エネではない」という事実


 一部の新電力があたかも「再エネ」であるかのように電源構成の中で宣伝しているFIT電気は、実は再エネではありません。制度の仕組みを、出来る限り分かりやすく解説します。



そもそも「FIT電気」とは何か


 そもそもFIT電気とは何なのか、概要を紹介します。


固定価格買取制度で買い取られた電力


 「FIT電気」は固定価格買取制度によって買い取りが行われた電力です。


 固定価格買取制度は太陽光、風力、バイオマス、中小水力、地熱発電から生み出された余剰電力を、一定期間固定の価格で買い取る制度です。再生可能エネルギーの導入促進を目的として導入されました。


 買い取り費用は国民全体で「再エネ賦課金」として負担しています。電気を使うと、使用量に応じて約3円/kWhが課金される税金のようなものです。月300kWhの電力を使用する一般家庭では、年間に約1万円を負担しています。


「再エネ」と扱わないルールになっている


 このFIT電気はもともとは再生可能エネルギーとして発電された電力ではありますが、「再エネとして扱わない」ことになっています。


 新電力が電源構成を公表する際のルール(経済産業省「電力の小売営業に関する指針」)の中でも、再エネと区別して表記することが求められていますし、またCO2排出量もゼロとは扱わないことがルールとなっています。FIT電気は「火力発電による電気なども含めた全国平均の電気のCO2排出量」で計算されます。


なぜFIT電気は「再エネ」ではないのか


 再エネで発電された電力なのに、なぜFIT電気は再エネとして扱ってはいけないのか。そのカラクリを解説します。


再エネとしての価値が付随していない


 日本では、再生可能エネルギーによって生み出された電力は「2つの価値」を持っていると整理されています。


再エネと環境価値


 一つは家庭や事務所などで「電気」として使用できる価値です。消費者がお金を払って電力会社から購入する商品の部分です。


 もう一つの価値が「環境価値」と呼ばれるものです。環境価値を言い換えると「再エネである」「CO2排出量ゼロ」という付加価値的な部分です。


 本物の再エネ電力は、電力としての価値に加えて環境価値も持っています。一方、FIT電気は環境価値を持っていません(後から購入することは可能) 再エネ賦課金による国民の負担を少しでも減らす目的で、固定価格買取制度で買い取られた再エネ電力はこの「2つの価値」が切り離された状態で売却され、取引が行われています。したがって、単なるFIT電気は火力発電などの電力と同じ(環境価値を持たない)です。


負担すべき費用を負担していない


 FIT電気を電力会社(新電力を含む)が購入する場合、その価格は「卸電力取引所」の取引価格に連動します。卸電力取引所では火力発電や原子力発電の電力も区別無く取引が行われており、その点からも「ただの電気」としてFIT電気が扱われていることが分かります。


 卸電力取引所の取引価格の平均は以下のようになっています(東電エリア)


年度 平均単価
2020年度 12.02円/kWh
2019年度 9.12円/kWh
2018年度 10.68円/kWh
2017年度 10.15円/kWh
2016年度 9.32円/kWh

 それに対し、固定価格買取制度による買取額の平均は34.59円/kWhです(制度開始〜2020年9月の累積値) 34.59円で買い取ったものを、10円で売却して発生する差額を埋めているのが、再エネ賦課金であり国民全体で負担している費用です。


固定価格買取制度の買取額のイメージ


 FIT電気を再エネのように宣伝している電力会社は、いわば国民の税金で購入したものに対して、お金を払わずに「横取り」しているようなものです。再エネとしての価値を手に入れるための費用は国民が負担しており、その権利は国民に帰属します。


 FIT電気でも火力発電で生み出された電力でも、「環境価値」を購入することで実質的に再エネとして扱うことが出来ます。ですが環境価値を購入していないFIT電気は、火力発電などで生み出された電力と何ら変わらないと言えます。


FIT電気を再エネと認めた先にあるもの


 一部の新電力が、FIT電気をあたかも再エネであるかのように宣伝して顧客を集めています。そのような事態が広まることで起こる「未来」を紹介して終わります。


再エネの導入が妨げられる


風力発電所


 FIT電気が「再エネ」として認められてしまうと、適切な費用を負担する人がいなくなる恐れがあります。


 FIT電気は火力発電などで生み出された電力と変わらない金額で購入することが出来るものです。その電力を「再エネ」として認識してもらえるのなら、わざわざお金を払って環境価値を購入する人がいなくなってしまいます。また、リスクを取って固定価格買取制度を利用しない再エネ発電所(正真正銘の「再エネ電力」を生み出す発電所)を建設する事業者も減ってしまうでしょう。


 FIT電気が再エネとして認識されてしまうと、再エネの導入が妨げられる事態につながります。


「エコに見える」FIT電気は偽ブランド品のようなもの


 FIT電気は単に電力として使用する分には悪い物でも何でもありません。ただの電気に過ぎません。


 ですがFIT電気を「再エネ」として扱うことは、例えて言うなら偽ブランド品を販売・購入することと同じです。高い金額を支払わずとも、ブランド品に「見える」ものが安価な値段で購入出来る偽ブランド品は、「再エネのように見える」FIT電気と似ています。




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