太陽光発電=高い は過去の常識に
固定価格買取制度により普及が一気に進んだ太陽光発電。高いイメージがありますが、この数年で起きた価格破壊によりその発電コストは「電気を買う」より安くなっています。
目次
日本の家庭でもグリットパリティを達成
グリットパリティとは
「グリットパリティ」とは、再生可能エネルギーによる発電コストが既存の電気のコストと同等以下になった状態を表す言葉です。
欧米では太陽光発電や風力発電がグリットパリティを達成しているところもあり、再生可能エネルギーが競争力のある安価な電源として注目を高めています。
実は日本でも、一般家庭の太陽光発電はグリットパリティを達成していると言える状況が既に実現しています。
太陽光発電の収支は?
その根拠となる数字を紹介します。
価格 | |
---|---|
設置費用 (容量3.675kW) |
130万円程度 |
年間想定発電量 | 4093kWh |
日本の電気料金の水準は1kWhあたり26.74円程度です(東電 従量電灯B:30A 348kWhで計算)
26.74円/kWhという単価で計算すると、年間想定発電量で108447円に。つまり12年程度で元が取れる計算になり、既にグリットパリティは達成されています。
実際には発電した電気を全て自家消費出来るわけではなく、余剰電力は24円/kWhで売電されます(平成31年度の売電単価)
また、メンテナンス費用やパワーコンディショナーの交換が10〜15年ごとに必要になり数十万円の出費になる点にも注意が必要ですが、いずれにせよ東電から電気を買うよりも安いコストで発電が可能になっています。
ちなみに、設置費用130万円とランニングコストが40万円掛かった場合、20年間の平均発電コストは20.77円/kWhとなり、東電から購入するより22.3%安となります。
太陽光発電が安いシンプルな理由
では、なぜ太陽光発電は安い電源になったのか。その理由を紐解いてみましょう。
設置コストが大幅に下がった
太陽光発電が安くなった最大の理由、それはわざわざ説明するまでもないことですが設置コストの大幅な低下です。
世界中で太陽光発電の導入が進み、また中国企業を始め様々な企業が参入することで、この10年程度で太陽光発電の導入コストは大幅に低下しました。
今後も、政府は家庭用太陽光発電の導入単価を2019年に30万円/kW、「できるだけ早期に」20万円/kWまで引き下げる目標を掲げており、価格低下が進んでいく見通しです。
送電コストが掛からない(託送料金)
設置コストも大事な要素ですが、実はもう一つ見落としがちなコストの面で太陽光発電は有利です。
遠くの発電所から作った電気を届けるには、それなりのコストが必要です。電気を届けるために掛かる「送電コスト」は東京電力管内では7.31円/kWhになります(託送料金)
上でも紹介したように、電気の購入単価は26.74円/KWhですから、27%が送電コストとなります。
自宅で電気を作る太陽光発電は、送電コストが掛かりません。したがって7.31円/kWhの送電コストを負担する必要が無いため、その分価格面で有利になります。
今後の課題
既に電気は買うより作る方が安いものの、課題もあります。
蓄電池の値下げが必要
家庭で作った太陽光発電の電気を有効活用するには、蓄電池を設置する必要があります。太陽光発電は昼間に集中して発電を行うため、平均的に自宅で消費しきれるのは発電量の3割程度と言われています(残りは売電)
また、発電量が天候に左右されやすいという問題もあることから、蓄電池と組み合わせることが「理想」です。
しかし、蓄電池の導入コストは現在非常に高額です。太陽光発電と蓄電池を一緒に設置した場合は、グリットパリティは達成できず「割高」となります。
蓄電池の低価格化が実現して初めて、真の意味でグリットパリティが実現します。
海外はもっと安い
日本の大手総合商社の丸紅が中東で開発している大規模な太陽光発電所は、発電コストが3円/kWh以下を見込んでおり、火力や原子力発電など従来の電源と比べても圧倒的に低コストとなっています。
日本と気候や地形、地価などあらゆる要因が異なるため比較はできませんが、それを抜きにしても日本の太陽光発電設備の導入コストは海外と比べて高いと言われています。
経産省の資料によれば、住宅用のパネルの費用は欧州の3倍。また工事費用なども2.1倍と言われており、設置費用の更なる低価格化にも期待したいです。
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