顕在化しつつある太陽光発電の問題点
東日本大震災以降、急速に導入が進んだ太陽光発電。しかしその拡大が進むにつれて様々な「弊害」も浮き彫りになりつつあります。そんな太陽光発電が抱える問題点を整理したいと思います。
目次
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設置によってもたらされる問題点
まずは太陽光発電が設置されることによって引き起こされる問題点を整理します。
景観を損ねる
以前から指摘する声が多いのは、メガソーラー発電所の建設により景観が損なわれる問題です。
おびただしい数の、しかも無機質な印象を受けるパネルが並ぶ光景を「美しくない」と感じる人は少なくありません。
地すべり・土砂崩れ
森林を切り開いて、山の斜面に太陽光発電所を建設する例が相次いでいます。傾斜地はこれまで利用用途が限られていましたが、太陽光発電は傾斜地にも設置できるということで全国で広がりを見せています。
しかし、これまで木々が根を張っていた森林を切り開いて太陽光発電所を設置した場合、大雨などに起因して地滑りや土砂崩れを起こす例も既に発生しています。
下流に住宅などが存在している場合、人的被害にも繋がる恐れがあります。現在は小規模なものはほぼルールが無い状況なので、早急に規制を作るべきだと思います。
反射光
住宅などの近くに太陽光発電所が設置された際に、パネルによる反射光が近隣に害を与える場合があります。
平成24年の横浜地裁では、住宅の太陽光パネルの撤去と損害賠償の支払いを命じる判決も出ています(2審で棄却、しかし設置者が自主的にパネルを撤去)
眩しさを与えたり、室温を上昇させるといった被害が発生します。
耕作地(農地)の減少
農地だった場所を太陽光発電所に転換する例は、地方ではもはや身近にある光景といえるでしょう。
耕作放棄地は全国に467万ha(2018年 農水省)と、京都府や和歌山県の面積とほぼ同じ規模にまで拡大しています。その中の一部が太陽光発電所に「化けて」います。
食糧危機が発生した際に、すぐさま耕作放棄地で耕作を再開できるわけではありません。しかし、一度太陽光発電所に転換されてしまった「農地」で再び農業をすることは不可能です。
現在も農地転用には各地域の農業委員会による審査が必要で、自由に転用できるわけではありません。しかし、食糧安全保障や農業振興の観点から、国全体として包括的な一定のルールを作る必要があるのではないでしょうか。闇雲に規制するのではなく、例えば耕作に適しているとは言えない土地の転用を容易にするのも一手です。
廃棄パネルの処理問題
2017年に総務省が取りまとめた調査によると、2015年の太陽光発電パネルの排気量は2400トン。しかし2040年には80万トンへと急拡大する見通しです。耐用年数を迎えるパネルが増えることが主な要因です。
太陽光パネルには鉛やセレンなどの有害物質が使われていることもあり、適切な処理が必要な「産業廃棄物」です。しかし太陽光パネルの処理については今の所、厳格なルールがあるとは言えません。
リサイクル・リユースも含めて、2018年中にガイドラインの策定を目指しているそうですが、早急なルール作りが求められます。
今後は使われなくなった太陽光発電所が「放置」される例も出てくるはずです。そうした問題への対処も検討する必要があります。火災の原因となる可能性もあります。
強風で飛ばされる危険性
施工が不良な太陽光パネルは、台風などの強風で飛ばされる場合があります。周囲に危険をもたらします。
適切に施工されていれば被害が発生する危険性は低いですが、大規模でない太陽光発電所は建築基準法の規制対象外であるため、一部に杜撰な設置をしている業者もあると言われています。
一定のルール作りが必要ではないでしょうか。
発電に関する問題点
既に指摘しつくされた問題点ですが、太陽光発電の「電気」にも欠点があります。
発電量が天候に左右されやすい
太陽光発電は晴れた日中に発電します。夜間や太陽が出ていない天候では発電量が大幅に低下します。電気の「需要」の増減に対応するには、火力発電など他の発電方法と組み合わせて使う必要があります。
太陽光発電の導入量が多い九州電力管内では、太陽光発電が需要の73%(17年 4月30日13時台)を占めることもあるなど、「発電し過ぎ」という問題も一部では発生しており、電力会社の悩みの種となっています。
発電コストが高い
燃料代が掛からないものの、導入費用が高額であることや夜間や悪天候時に発電しないといった特徴があるため、太陽光発電は発電コストが割高です。
特に日本では導入費用が「欧州の2倍」と高額であるため、それが発電コストを押し上げています。
サウジアラビアでは1kWhあたり2.1円と、他のどの発電方法よりも「圧倒的な」低コストを実現したプロジェクトも登場していますが、地形や気候が異なる日本でそこまでのコスト低減は難しいです。
とはいえ日本でも2020円に14円/kWh(16年は28.9円)、2030年には7円と低減していく国家目標を立てており、実現すれば将来的には「安い電源」となる可能性もあります。
また、固定価格買取制度での買取が終了した「卒FIT」の太陽光発電の電力は10円/kWh前後で取引される見通しで、これは発電コストが安いとされる原子力発電や石炭火力発電と同等です。一部新電力会社がここに目をつけて、買取に力を入れています。日本でも少しずつではありますが「安い電源」となりつつあると言えます。
その他の問題点
建物の耐震性への影響
日本では住宅などの建物の屋根に発電パネルを設置する例が多いです。住宅用のパネルの重さは100Kg以上と、決して軽くはありません。にもかかわらず強度計算をせずに設置する例も少なくなく、特に古い建物では耐震性に悪影響をもたらす可能性があります。
火災時の対応が確立されていない
太陽光発電の設備は、太陽光が当たると発電します。火事が起こっても、発電をやめてくれません。
消防による放水により感電するリスクも指摘されており、消火活動の妨げとなる場合もあります。ドイツでは消防士が死亡した事例もあるそうです。
実際に、2017年に埼玉県で発生したアスクルの倉庫火災では屋上の太陽光発電が消火活動の支障になったと指摘されています。
また、太陽光発電の設備自体が発火する事例もあります。
消費者安全調査委員会の調査によれば、2008年から16年までに住宅用太陽光発電による火災は102件。人的被害は無いものの、民家が半焼する事例もありました。
施工不良が原因となる場合が多いようですが、ケーブルを動物がかじったことで火災となるケースもあり注意が必要です。
雨漏りの原因になることも
こちらも施工不良による問題ですが、住宅など建物の屋根に太陽光パネルを設置した際に、雨漏りを引き起こすことがあります。
規制しながら上手な活用を期待
太陽光発電そのものを規制するのではなく、ルールが無く今後問題となりそうな部分をしっかり穴埋めしながら、上手な形での活用に期待したいです。
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