原子力発電の電気を使いたくない貴方に
電力自由化によって、これまで事実上選ぶことが出来なかった「電力会社」を、消費者一人一人が自分の意思で選ぶことが出来るようになりました。では、原子力発電の電気を使いたくないという選択は可能なのか、注意点も交えながら解説します。
目次
「原発完全ゼロ」が難しい理由
実は電力自由化された現在においても、「原発フリー」の電力を選ぶことは難しいと言わざるを得ない現状があります。わかりやすく解説します。
発電所を持たない新電力が多い
電力自由化により数百を超す数の「新電力」が電力の販売に参入しています。ですがその多くは自社の発電所を全く保有していないか、あるいは充分な量の発電所を持っていません。
充分な発電量を得られる大規模な発電所を建設するには、数十億あるいは数百億円という巨額の投資が必要となるため、新規参入の電力会社では投資が難しく、結果として卸電力取引所や、あるいは発電所を持つ企業と契約するなどして電力を調達しています。
ですが日本では多くの発電所を関電などの大手電力会社が保有しています。そのため、例えば多くの新電力が調達を頼っている卸電力取引所で取引されている電力も、87%が大手電力会社が売りに出したものであった、というデータもあります。
原発を持つ大手電力会社から新電力に乗り換えるだけで「脱原発」と勘違いしている人もいるようですが、それは違います。
「完全ゼロ」は不可能に近い
「原発フリー」を完全に達成した電力を販売するのは、不可能に近いと言えます。
例えば風力発電所やバイオマス発電所などと提携して、再生可能エネルギー100%の電力を売る新電力があるとします。その新電力は再生可能エネルギー100%の電力を、大手電力会社が保有する電線(送配電網)に流してお客さんに電力を届けます。
電力は需要と供給の量を一致させる必要があるため、新電力にもお客さんが使うのと同じ量を送電線に供給し続ける責任があります。もし不足してしまった場合は、送配電網を管理する会社が代わって「補充」をします。それを「インバランス」と呼びます。
このインバランスの電力には、原発を含め様々な方法でつくられた電力が含まれます。ですがインバランスが発生してしまうことは珍しいことではないため、結果として原発の電力が含まれる事態が発生します。
原発フリーを謳う新電力もあったが、現実は・・
テラエナジーという新電力が公式サイトで「原発フリー」を謳っていました。ですが詳細を同社社長に尋ねてみると、やはりインバランスにより原発で作られた電力が含まれる恐れがあるということが分かりました。
私はこれまでに400社以上の新電力の公式サイトを確認してきましたが、テラエナジー社以外に「原発フリー」を謳っている新電力は記憶に無く、また原発フリーを謳うテラエナジー社においても完全な形での原発フリーは達成出来ていないと判断出来ることから、現状で我が国で「原発フリー」の電力を購入出来る新電力は無いと言えます。
沖縄・離島は「原発フリー」
沖縄や、本州と送電線が接続していない離島などでは、大手電力会社も含めどの電力会社と契約しても、原発でつくられた電力が紛れ込む余地がありません。
沖縄や離島はそのエリアだけで閉ざされた電力供給体制となっているため、本州でいくら原発が稼働しようが関係ありません。また、沖縄電力は大手電力10社の中でも唯一、原子力発電所を持っていないません。
離島に参入する電力会社は皆無と言えますが、引き続き大手電力会社の電力を購入し続けても原発ゼロの電力です。また、沖縄に参入する新電力は相次いでいますが、沖縄電力を含めどの電力会社を選んでも原発フリーです(沖縄電力は大手電力10社の中で唯一、原発を1基も持たない)
オフグリッドという選択肢も
自宅を送電線から切り離す、「オフグリッド」という取り組みがあります。分かりやすく言うと、どの電力会社からも電気を買わないという取り組みです。
昨今は太陽光発電システムと蓄電池が大幅に値下がりしているため、以前と比べると実現しやすくなっています。郊外の一軒家では「不可能ではない」と言えますが、晴天の少ない梅雨シーズンなどは太陽の動向に気を揉むことになるでしょう。また、最低でも数百万円以上の設備投資が必要となります。
原発フリーに一歩近づく電力会社選び
現実的では完全な形での「原発フリー」は一部地域を除いて難しいと言えますが、原発フリーに一歩近づくための電力会社選びを提案します。
再エネ100%プランを選ぶ
原発の電力が入り込む余地が「全く無い」わけではありませんが、再生可能エネルギー100%を謳ったプランは、原発の電力が入り込む余地がほぼ無いと言えます。以下で再エネ100%のプランを紹介しているので、参照してください。