新電力会社の農事用電力プランの現状

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新電力に農事用電力プランはあるのか?


 電力自由化で参入した新電力会社は農事用電力プランを提供しているのか。全国の300社以上の電気料金プランをチェックしている私が、詳しく解説します。



そもそも農事用電力とは?


 農事用電力について簡単に説明します。既にご存知の方は読み飛ばしてください。


 農事用電力とは、その名のとおり農業に利用するための専用の料金プランです。排水ポンプや脱穀機、育苗などに使用する電力です。元となる料金プランは戦前から存在していました。


 昔の日本は水力発電が主力で、灌漑用電力の需要期に発電量が伸びるという特性があったことや、農業への影響を考えて安価な料金に設定されています。


農事用電力


農事用電力に参入している新電力は無い


 新電力の農事用電力の現状を解説します。


新電力に農事用電力プランは無い


 電力自由化では多数の新電力が参入しており、当サイトでも記事執筆時点で300社以上の料金プランを掲載しています。ですがその中で「農事用電力プラン」相当の料金プランを提供しているところは一社もありません。


 私は新電力の料金プランをすべて一人でチェックしていますが、農事用電力相当を謳ったプランはこれまでに見たことがありません。農水省の調べでは、農事用電力を供給約款などに記載している新電力が3社あるものの、いずれも実際には料金プランの設定が無いとされており、新電力に農事用電力は無いと言い切ってもよい状況にあります。


JAでんきに期待


 2019年9月から、JA全農系の新電力が組合員などに向けて電気の販売を開始しました。農事用電力プランの取り扱いは現時点では不明ですが、営農施設への販売も検討しているとのことです。


 ただし、理由は以下で詳しく説明しますが、大手電力の農事用電力プランよりも安価なプランが登場する可能性はきわめて低いです。


なぜ参入する新電力が無いのか


 なぜ農事用電力に参入する新電力会社が無いのか、その理由を解説します。


安すぎて太刀打ちできない


 大手電力会社の農事用電力は、非常に安い料金に設定されています。


農事用電力
かんがい排水用
低圧電力
基本料金 440円/kW 1122円/kW
料金単価(夏) 13.12円/kWh 17.37円/kWh
料金単価(他) 11.94円/kWh 15.80円/kWh

 東京電力エナジーパートナーの料金表です。農事用電力の料金単価と、非農業用のポンプなどで使用する「低圧電力」プランを比較しています。農事用電力は低圧電力と比べても明らかに低価格であることが分かります。


 なお、電気の調達コストは平均で9円/kWh前後です(市場での取引価格) また、電気を送電するための「託送料金」もやはり9円/kWh程度なので、最低限必要な原価だけでも18円以上掛かる計算です。農事用電力は原価割れの水準と言えます。


 新電力の低圧電力(動力プラン)は以下の記事で確認できます。


今後はどうなる?農事用電力


 電力自由化で農事用電力はどうなっていくのか。今後の動向を紹介します。


一部大手電力は当面の存続を表明


 日本では2016年に電力の小売が完全自由化されましたが、いきなり全てを「自由」にしてしまうと、規模が大きな大手電力会社が世の中に不利益をもたらす可能性があります。そこで大手電力会社にいくつかのハンデが与えられました。


 その一つが「経過措置料金メニュー」で、これまでの料金プランを少なくとも2020年3月まで存続させることが義務付けられています。農事用電力も経過措置料金メニューに該当します。


 現在のところ、農事用電力を提供している大手電力会社は「当面の間」農事用電力を存続することを表明しており、しばらくは現在の安い電気料金を継続して利用できる見込みです。ただし、将来的にはどうなるかは不透明と言えます。




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