市場連動型プランが再エネの導入を促進する可能性

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市場連動型プランの社会的なメリットを考える


 日本でも徐々にではあるが普及が進みつつある「市場連動型」の電力プランには、再エネの導入を促進するメリットがあると言えます。なぜそう言えるのか、理由を解説します。



そもそも市場連動型プランとは?


 まずは市場連動型の電力プランについて簡単に解説します。


30分ごとに料金単価が変動する仕組み


 これまでの一般的な料金プランは、予め決められた料金単価と、電気の使用量や契約容量に基づいて電気代が計算され、ユーザーが支払いを行います。


 一方、市場連動型の料金プランでは、30分ごとに刻一刻と変動を続ける卸電力取引所での電気の取引価格に連動して、電気料金の単価が変動する特徴があります。予め決められた料金単価は無く、時間帯によって細かく料金単価が異なります。


2018年2月9日の卸電力取引所のスポット価格

取引価格と連動して料金単価が変動する

 電力自由化を機に一般家庭にも普及する兆しが見られます。詳しくは以下の記事で解説しているのであわせてご覧ください。


市場連動型プランがなぜ再エネ導入を拡大させるのか


 では、30分ごとに料金単価が変わる市場連動型プランが、なぜ再エネの導入を促進すると言えるのか、その理由を解説します。


九州で常態化している「出力制御」という問題


 九州では太陽光発電の発電量が急増しており、エリア内の需要や他の地域への送電では吸収しきれない状態が発生しています。電力は需要と供給量を一致させる必要があり、そのバランスが崩れると大規模停電が発生する可能性があります。


 それを防ぐために実施されているのが「出力制御」という措置です。
 火力発電所を止めるなどしてもなお、電力が余ってしまうタイミングで、太陽光発電や風力発電などで作られた電力を送電線に流すのを止めてもらうというのが具体的な内容です。せっかく発電された電力を、事実上「捨ててしまう」ものです。


出力制御のイメージ(資源エネルギー庁サイトより)

出力制御のイメージ(資源エネルギー庁サイトより)

 出力制御は再生可能エネルギーの導入を増やすために必要な措置(出力制御が無ければ導入自体にブレーキを掛ける必要が出てくる)といえますが、出力制御が行われることでその間、発電所を設置した人が売電収入を得られなくなるというのもまた事実です。収益性が低下するため、再生可能エネルギーの新たな導入にブレーキが掛かる可能性があります。


市場連動型が出力制御を減らすのに貢献する


 卸電力取引所で取引される電力は、他の「市場(マーケット)」と同じように需要と供給のバランスによって価格が大きく変動します。


 過去には取引価格が1kWhあたり100円以上を付けたこともありますが、一方で出力制御が実施されるような電気が「余っている」状況下では、取引価格がわずか0.01円と、タダ同然の値が付きます。


2019年3月24日の九州地区の取引価格(環境市場より)

出力制御が実施された2019年3月24日の九州地区の取引価格(環境市場より引用)

 市場連動型の料金プランは、前日までに翌日分の料金単価が分かるようになっているため、利用者はその価格の推移を見て、電気の使い方を見直すことが可能です。例えば洗濯機を回すのを、取引価格が高騰する時間帯から「安い」時間帯に移すといったことが出来ます。


出力制御が減ることで再エネの導入が促進される


 出力制御が実施されるタイミングでは、取引価格が「タダ同然」となるため、利用者はそのタイミングで電力使用量を増やすような行動を取る可能性があります。その「行動変容」が、出力制御の減少に貢献する、というのが市場連動型プランが再エネの導入促進に貢献すると言える理由です。


洗濯機

洗濯を電気が「余っている」時間帯に移す人も

 出力制御が減少あるいは抑制されることで、太陽光発電所などを持つ事業者の収益性が高まります。今はまだ市場連動型プランを選ぶ消費者や企業が少ないですし、そもそも「電気が余っている」という問題自体が世間にあまり知られておらず、出力制御を減らそうという機運も高まっていませんが、こうした動きが大きくなることで出力制御の実施が縮小・これ以上大きく拡大しないことに期待したいです。


利用者にとってもメリットがある


 残念ながら、日本では環境問題への意識が高く、自分の生活を変えてまで「エコ」に貢献しようと考える消費者はマイノリティだと言えます。


 ですが市場連動型プランでは、電気が余って出力制御が実施されている時に電気を使うと、電気代を大幅に安く抑えることが出来るため、利用者にとって経済的なメリットが生まれます。


 通常の大手電力会社の従量電灯の場合、1kWhあたり27円程度という価格設定ですが、市場連動型プランで取引価格が0.01円を付けているタイミングでは12円程度(再エネ賦課金別途)と、半額以下で済みます。


 単に環境問題、再生可能エネルギーの導入拡大、CO2排出量抑制と言われても多くの人は関心を示しませんが、電気代が大幅に安くなると言われればより多くの人の理解と協力が得られるのではないでしょうか。


価格高騰リスクには注意が必要


 最後に、市場連動型プランのデメリットも紹介して終わります。


 市場連動型プランは、出力制御が実施されるような「電気が余っている」時には非常に安い価格で電気を使うことが出来ます。しかし、逆に電気が「不足している」タイミングで使うと、電気代が大幅に割高となるリスクがある点には注意が必要です。


 なお、事前の料金の推定が出来ないため当サイトの料金シミュレーションでは市場連動型プランは掲載していません。




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