今後どうなる?オール電化の将来

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どうなる?オール電化の今後


 東日本大震災以降、ガラリと風向きが変わったオール電化住宅。今後どうなっていくのか、足元の動向から将来像を探ります。



なぜオール電化の電気代は「安かった」のか


 オール電化の導入メリットとして言われていた「光熱費の削減」を支える電気代の安さはなぜ実現できていたのか、その背景を説明します。


原子力発電のおかげ


 原子力発電は、稼働中は一定の出力を保って発電をし続ける運用をするのが一般的です。一方で電力の需要は人々が寝静まる深夜には大きく落ち込みます。


 天然ガスの発電所などでは需要に応じて発電量の調整が行われますが、それでも深夜には「電気が余りやすい」という背景が、原子力発電がさかんに稼働していた2011年以前の日本にはありました。その余っている電気を有効に活用するために積極的に推進されていたのがオール電化です。


福井県内の原発

福井県内の原発(筆者撮影)

 オール電化はエコキュートや電気温水器といった、深夜電力を使用して大量にお湯を沸かしてタンクに貯めるシステムが鍵となっています。深夜に大量の電力を使用してもらうことが出来るため、電力会社にとって都合の良いシステムでした。


 しかし東日本大震災による原発事故以来、日本では多くの原子力発電所が稼働を停止しています。現在の日本では、需要にあわせて発電量を自在に調整できる火力発電(特にLNG火力)が主力となっているため、かつてほど深夜に電気が余っていないと言えます。


値上がりを続けるオール電化の電気料金


 こうした電力事情の変化を反映して、オール電化の電気料金が上昇していると言える事実があります。


現在のプランは以前のものより大幅に割高


 大手電力の最新のオール電化プランは、かつて募集されていたオール電化プランと比較して、大幅に高い料金水準に設定されています。


 例えば東京電力のオール電化プランの場合、現在の料金プランである「スマートライフ」では午前1〜6時の深夜帯の料金単価は17.78円/kWhです。それに対し以前の料金プランである「電化上手」では、午後11時〜翌午前7時までが12.48円と、料金単価が大幅に安い上に深夜帯の長さも異なります。



 一方で昼間時間帯は現在の料金プランの方が安く設定されていますが、標準的な世帯では年間に2万円前後も割高となる料金設定です。


以前のプランも値上がりが始まっている


 以前のオール電化プランは新規の契約が出来なくなっていますが、以前から契約していた人は安い料金単価のまま継続して利用することが出来ています。


 しかし、以前の安いプランを利用していた人たちにも、値上げの足音が徐々に忍び寄っています。


IHクッキングヒーター

IHクッキングヒーター

 例えば九州電力は2019年11月に、現在募集を停止しているオール電化プランの夜間料金値上げを2020年4月に実施することを表明しました。昼間の料金単価を下げる一方、夜間の料金単価を値上げ、また設置している機器に対して適用していた割引を廃止します。


 今後、こうした動きは他の大手電力会社にも波及していく可能性があり、以前のオール電化プランを利用し続けている人にとっても電気代の値上がりは他人事ではありません。


新電力の参入はわずか


 一方、電力自由化により参入した新電力各社については、オール電化に消極的な姿勢が目立ちます。


 オール電化プランを謳ったプランを提供している新電力の中には、大手電力の現在のオール電化と比較しても明らかに割高な料金設定をしているところが目立ちます。安いオール電化プランを提供している新電力はごくわずかです。


 新電力は原子力発電を始めとするベースロード電源を保有していないところが大多数であるため、深夜に大幅に安い料金単価を設定することが出来ないことが要因として挙げられます。


 非オール電化向けでは激しい競争が起こっていますが、オール電化向けでは電力自由化による価格競争は現在のところ起きていませんし、今後も当面は起こらないでしょう。


再エネ賦課金という盲点


 電気を使うごとに再生可能エネルギー発電賦課金(再エネ賦課金)という費用を負担する必要があります。2019年5月〜の単価は1kWhあたり2.95円です。


 再エネ賦課金は年々値上がりを続けており、制度が始まった2012年度と比較して既に10倍以上に膨れ上がっています(2012年度は0.22円/kWh)


再エネ賦課金の負担は年々増している

再エネ賦課金の負担は年々増している

 オール電化住宅は電気を使う量が多いため、再エネ賦課金もより多く負担しなくてはなりません。一方でオール電化住宅では太陽光発電と併用している場合も多いので、再エネ賦課金の恩恵の方が大きい場合もあるでしょう(再エネ賦課金は太陽光発電などの買取に使われる)


 今後も再エネ賦課金は値上がりを続けるため、実質的な電気代の水準が上昇することは間違い無いと言えます。ガスには再エネ賦課金は掛からないので、オール電化の経済性が相対的に低下します。


オール電化の活路は


 オール電化はこのままどうなっていくのか。今後の展望を紹介します。


原発が再稼働すれば再びお得になる


 現在、多くの原子力発電所が稼働を停止していますが、再稼働する原発が増えていくことで、再び夜間に「電気が余る」ようになり、お得なオール電化プランが登場する可能性があります。


 ただし再稼働には大きなハードルがいくつもあるため、再稼働が一挙に進むことはありえません。値下がりするとしても、そのペースは非常にゆっくりとしたものとなるでしょう。


仮想発電所(VPP)での活用に期待


 オール電化のキーデバイスであるエコキュートや電気温水器は、「深夜の電気代が安い」ことを前提として、深夜に大量のお湯を沸かしていました。


 しかし昨今は太陽光発電の普及などにより、電気の市場価格はむしろ昼間に最低価格をつけることも珍しくなくなっており、かつてとは状況が一変しています。


電気の市場取引価格

電気の市場取引価格(縦軸の単位は円/kWh)

 そこで注目されているのが、エコキュートを仮想発電所(VPP)と連携して運転する試みです。VPPのシステムからエコキュートを遠隔制御することで、電気が余っている時間帯(深夜とは限らない)にお湯をまとめて沸かすことが可能となります。エコキュートの所有者は、協力に応じて電気代の割引などのメリットを得ることが出来ます。


 皮肉にもこうした取り組みや蓄電技術の普及が拡大していくことで、深夜・昼間の電気料金の価格差が縮小していく可能性もあります(需要の変動が小さくなるため) 


「昼間」の料金単価が下がる可能性


 2020年10月に登場したLooopでんきのオール電化プランは、春・秋の昼間の料金単価が大幅に安く設定されていました(※燃料価格高騰によりこのプランは消滅しました)


 一つ上の項目でも触れたように、昨今は太陽光発電の導入拡大により、昼間に電力が「余る」状況が生まれています。市場での電力の取引価格は季節によっても大きく変動しますが、春・秋については深夜よりも昼間の方が安いため、今後は昼間の料金単価が安いオール電化プランが増加していくでしょう。




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