コロナ禍で電力会社のキャッシュバック競争が激化している理由

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激化するキャッシュバック競争


 2020年夏、電力自由化に参入した新電力各社のキャッシュバック競争がかつてない活況を呈しています。なぜ今、キャッシュバックなのか。その背景にある事情を解説します。



激化するキャッシュバック競争


 まずはキャッシュバック競争が激しくなっていると言える現状を紹介します。


「過去最高額」も続々登場


 すべて網羅出来ているわけではありませんが、当サイトでは以下の記事で各社のキャッシュバックキャンペーンの情報を紹介しているので、以下の記事もあわせて御覧ください。


 私はこちらの記事を定期的に更新し続けていますが、キャッシュバック特典を提供している会社も増えていますし、金額もこれまでになく大きくなっていると感じます。


 例えば楽天でんきは通常2千円分のポイントを入会特典としてキャッシュバックしていますが、2020年夏(10月2日まで)は4千円分と、普段よりも大幅に増量しています。私が認識している限りでは、これまで最高だった3千円分を上回る過去最高額です(公式サイト経由、特別なエントリーを必要としない入会特典として)


楽天でんきのキャンペーン

楽天でんきのキャンペーン

 また、大手電力会社についても中部電力が電気ガスのセット契約者を対象としたキャッシュバックを提供していますが、公式サイトでも過去最高と謳われているとおり5千円分のポイントと大盤振る舞いとなっています。ちなみに、昨年同時期にもキャッシュバックを提供していましたが、3千円分のポイントでした。


キャッシュバック競争が激化している背景


 ではなぜ今、各社がキャッシュバックに力を入れているのか、その理由を解説します。


経費の低減により原資を確保しやすい


 世界中を混乱させている新型コロナウイルスですが、日本経済を大きく停滞させており、電力の需要が例年と比較して10%減(三菱総研しらべ)と大きく減少しています。


 需要が停滞したことで、電力の「価格」が大きく下落しています。2020年6月9日の電気新聞によれば、多くの新電力が電力を調達を頼っている卸電力取引所での取引価格は4〜5円台と、前年と比較して約3円安と大幅に安い状況が続いています。


2019年7月と2020年の東京エリアプライスの比較

東京電力エリアでの取引価格の比較

 これまで卸電力取引所の取引価格が高騰することが新電力にとって悩みのタネとなっていましたが、新型コロナ騒動により逆に主要な原価の一つが大きく低減している状況にあり、販売促進に力を入れやすくなっている側面があるようです。


電力自由化への関心が高まっている


 Stay Homeが新型コロナ対策の重要なキーワードとして定着していますが、外出を控え在宅時間が長くなることは、家庭の電力需要を増やすことにつながります。言い換えれば各世帯が支払う電気代が「高くなる」ということです。


 当サイトでも前年同期と比較してアクセス数が多い状況が続いていますが、自宅で電気を使う機会が増えていることで、電力自由化や電力会社の乗り換えに関心を持つ消費者が増えていると言えるでしょう。


 そうした関心を持つ消費者を取り込む一つの手段として、新電力各社がキャッシュバックに力を注いでいる側面があると考えられます。


東京アラートが発令されたレインボーブリッジ

東京アラートが発令されたレインボーブリッジ

 また、コロナ以前からそうでしたがエアコンなどで電力の使用が増える時期ほど、電力の切り替えへの関心が高まる傾向があります。新電力各社はこれまでもそうした時期にキャッシュバックを含む販促キャンペーンを強化していました。


 現在のキャッシュバック競争は秋には一旦落ち着くかもしれませんが、また再び2020年12月頃から、2021年3月末にかけても盛り上がると思います。特にこの時期は以前から最も需要が高まる時期なので、各社力を入れてくるでしょう。


提供しないと客を他社に取られてしまう


 他社がキャッシュバックを提供、拡充している中でキャッシュバックを提供しない新電力は申込者を減らしている側面があります。


 例えばキャッシュバックを提供していないが多くの地域で競争力のある(つまり安い)料金プランを提供しているある大手新電力の当サイトでの申込数を見てみると、6月から7月にかけて60%近く減少しています。同様にキャッシュバックを提供していない別の新電力についても、20%近い減少となっています。


新電力 6→7月の減少幅
A社 約60%減
B社 約20%減

 キャッシュバックを提供している新電力の申込数が伸びたため、当サイト全体での申込数は5%程度増加していますが、その中でもキャッシュバックを提供していない会社が申込数を大きく減らしている状況にあります。


 当サイトでは試算値にキャッシュバック額などを含めていませんが、それでもユーザーはキャッシュバック特典によって大きく「動く」傾向が強まっていると感じます。他社に顧客を奪われないためにキャッシュバックを「やらざるを得ない」状況に追い込まれている新電力が増えているのではないでしょうか。


消費者にとっては得する「チャンス」といえる


 電力会社を乗り換えるだけで数千円を超えるキャッシュバック(Amazonギフト券やポイントを含む)がもらえるというのは、それを使いこなせるユーザーにとっては非常においしい状況と言えるでしょう。


 ただし、以前携帯電話の契約でも問題になり規制される事態となりましたが、MNPで頻繁に契約を切り替えるユーザーへの割引の原資を、長期にわたって契約を継続しているユーザーが実質的に負担しているような状況にまで競争が進んでしまうと、それは健全とは言えないでしょう。




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