【2020年春】電気代値上げニュースへの誤解

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電気代値上げのニュースへの誤解とは


 新型コロナウイルスが世界的に流行し、経済的にも疲弊する人が増えている中、大手電力10社が電気代の「値上げ」を行うというニュースが一部で批判を呼んでいます。しかし、そうした批判の中には「誤解」に基づくものが少なくありません。この記事で分かりやすく解説していきます。



「電気代値上げ」のニュース


 まずは実際の報道と、それに対する世間の反応を見てみましょう。


大手電力10社が「電気代」を値上げ


ことし5月の電気料金は、再生可能エネルギーで発電された電気を電力会社が買い取る制度で電気料金に上乗せされる負担額が上昇することを受けて、大手電力会社10社すべてが値上げすることになりました。

引用元:5月の電気料金 大手電力会社10社すべてで値上げ (NHK)

 2020年5月に大手電力10社が一斉に電気料金を「値上げ」する。平均的な使用量の世帯で月20円(東京電力)の負担増となる、とされています。


ネットの反応は


 このニュースに対しては、新型コロナウイルスにより経済的苦境に立たされている人が多い、また関西電力が不祥事を起こした最中であることから、Twitterでは批判的なコメントが相次いでいます。


 ですが、こうした批判的なコメントの中には「誤解」に基づくものが少なくないように見受けられます。以下、誤解されていると思われる点を分かりやすく解説します。


電気代「値上げへ」の誤解


 誤解されている点を分かりやすく解説します。


燃料費調整制度という仕組みについて


 冒頭で紹介されていたNHKニュースの記事では、電気代値上げの原因として


火力発電の燃料となる天然ガスなどの輸入価格は下がったものの、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電された電気を大手電力会社が買い取る制度に基づいて電気料金に上乗せされる負担額がことし5月から上昇するためです。

引用元:5月の電気料金 大手電力会社10社すべてで値上げ (NHK)

 との解説が付されていますが、この説明は不十分であり、また間違いと言えます。


 記事の中で、各電力会社ごとの値上げ幅が示されていますが、値上げ幅が大きい北海道電力(月30円)、東京電力(20円)、北陸・沖縄電力(15円)などはいずれも燃料価格高騰による要因が存在します。


 日本のほとんどの電力会社(新電力を含む)では、燃料費調整制度を導入し、燃料の輸入価格の変動を毎月異なる単価で調整しています。


 例えば北海道電力の場合、燃料費調整によって5月の電気代は4月と比較して1kWhあたり0.1円、標準的な使用量の家庭で約26円の値上がり要因となっています。NHKの記事では30円の値上げとされていましたが、その内の大部分は燃料の輸入価格の高騰が原因であることが分かります。


2020年6月からは値下げが見込まれる


 一方で、昨今はサウジアラビアの「大増産」や新型コロナウイルスによる世界的な原油の需要減などを要因として、原油価格が大暴落しているというニュースもあります。にも関わらず「燃料の輸入価格が高騰」した結果として電気代が値上がりするのはおかしい、と感じる人もいるでしょう。


 燃料費調整制度では、数ヶ月前の燃料の輸入価格(政府の「貿易統計」に基づく)を電気代に反映させます。メディアが報じた「値上がりする」2020年5月適用の料金単価は、2019年12月〜2020年2月の平均輸入価格を反映したものです。


燃料費調整制度

燃料の輸入価格によって毎月変動する

 原油の暴落は、2020年3月9日頃に報じられたサウジアラビア国営石油会社による大規模な増産のニュースがきっかけとなっており、3月中旬から現時点(3月末)において継続しているものです。


 したがって、2019年12月〜2020年2月の平均輸入価格で計算される2020年5月分の燃料費調整には、この暴落分は一切反映されていません。それどころか、2019年12月末から翌1月初めには一時高騰しました(米国とイランの関係悪化が原因)


 ですが2020年6月分の燃料費調整については、3月中旬に起きた原油の暴落が反映されるため、値下がりする可能性が大きいです。石油だけでなく石炭やLNG(液化天然ガス)についても世界的に需要が減少しているため、特に7月以降は燃料費調整により電気代が安くなる可能性があります(何らかの要因で石炭やLNGが高騰する可能性もあるので、絶対とは言い切れない)


再エネ賦課金とは


 NHKのニュースで電気代「値上がり」の主要因として指摘されているのが、再生可能エネルギー発電賦課金(再エネ賦課金)です。


 再生可能エネルギーの普及を目的とした制度で、電力会社から電気を購入するごとに1kWhあたりの一律の単価が掛かります。どの地域で、どの電力会社(新電力)を利用しても同額です。


再エネ賦課金の推移

再エネ賦課金の推移

 再エネ賦課金の単価は、再エネの普及に伴い毎年見直し(=値上げ)されています。2020年度の単価は2.98円/kWhと、前年度と比べて0.03円上昇しており、2020年5月分以降の電気代の支払額に反映されます。世帯あたり、月7.8円の負担増となり、純粋に家計にとって負担増となると言えます。


 再エネ賦課金は年々上昇を続けていますが、近年の値上がり幅は緩やかなものとなっています。


新型コロナで経済的に困窮している人への対策も


 経済産業省は電力会社やガス会社に対し、新型コロナウイルスで経済的に困窮している人に対し、電気代の支払いを延長するように「要請」しました。


 それに対し大手電力各社と、多くの新電力は電気代の支払い猶予措置を用意しています。お困りの方は以下の記事を参考にしてください。




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