2020年の電気代は「高くなる」
2020年の日本の電気代は、前年と比べて確実に「高くなる」と言えます。その理由を分かりやすく解説します。
電気代を値上がりさせる5要因
電気代を値上がりさせる原因となる要素を紹介します。
中東情勢の悪化
2020年の年始早々、イランと米国の関係が急速に悪化しており、中東情勢の行方が懸念されています。
米軍によるイラン司令官殺害が発生した直後から、国際的な原油の取引指標であるWTIが急激に値上がりしています。現時点では大幅な高騰は起きていないものの、今後情勢が悪化したり、あるいは石油施設への攻撃やタンカーへの攻撃や拿捕が発生すると取引価格が高騰するリスクがあります。
日本では石油による発電の比率は少ないものの、今や主力電源となったLNG火力発電(液化天然ガス)の燃料であるLNGの取引価格は原油価格と連動しているものが多いため、原油が値上がりすることで小さくない影響が出ます。
多くの電力会社では資源輸入価格の変動を毎月顧客に転嫁する燃料費調整制度を導入しており、資源価格の高騰が直ちに電気代の値上がりを招く恐れがあります。
再エネ賦課金の上昇
日本では電気を1kWh使用するごとに、再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)を負担する必要があります。集められたお金は、固定価格買取制度を利用した再生可能エネルギーの買取などに当てられています。
再エネ賦課金の単価は毎年改定されており、毎年値上がりしています。直近は以前と比べて値上がり幅が縮小しているものの、2020年についても値上がりすることは間違いないと言えます。
なお、2019年度の再エネ賦課金は2.95円/kWhでした。標準的な世帯で月に885円の負担となっています。
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詳しく解説
原発の稼働停止
原子力規制委員会は原子力発電所に対し、数々の安全対策の実施を要求しています。ですがその安全対策のために必要な設備を電力会社側が期限までに設置することが出来ず、再稼働した原発を再び停止しなくてはならなくなりました。
具体的には九州電力の川内原発、関西電力の高浜原発が該当します。いずれも東日本大震災後の長い停止期間を経て再稼働した原発ですが、安全対策が間に合わず2020年に順次停止することが予定されています。
停止期間は1〜2年半を見込んでおり、例えば関電の社長は「値上げは現時点で見込んでいない」と2019年4月時点で語っているものの、電力市場が逼迫することで市場価格連動型の料金プランで契約している家庭などの負担が増える可能性があります。
また、大手電力は原発再稼働を機に大口顧客向けにかなり安い価格を提示して営業活動を積極的に行っていたとの話もあり、再停止によりアグレッシブな価格の提示が難しくなる可能性があります。
新電力の倒産・撤退
経営状況が良くない新電力は少なくなく、既に倒産あるいは撤退する新電力も相次いでいます。具体的な社名は控えますが、2020年には少なくとも2社以上の新電力が倒産あるいは撤退に追い込まれると私は予想しています。
上でも挙げた原発の停止により、電力の市場価格が高騰することで経営不振の新電力にとって追い打ちとなる可能性もあります。
新電力は基本的には大手電力よりも割安な料金設定となっているため、新電力の倒産で大手電力に戻らざるを得なくなる人にとっては、電気代の実質的な値上がりと言える状況が生まれるでしょう。
なお、契約していた新電力が倒産しても、契約者が直ちに停電することはなく、支障なく電気を使い続けられる仕組みがありその点で心配はいりませんが、倒産する新電力は誤請求などのトラブルを抱えていることが多く、契約者に少なくない負担が生まれます。
古いオール電化プランの見直し
現在は新規申し込みを停止している「古いオール電化プラン」の既存契約者の料金を、値上げする方向で「見直し」を進める動きがあります。
古いオール電化プランは現状の電力事情と照らして大幅に割安な料金単価が設定されており、現行のオール電化プランと比較して標準的な世帯で年間数万円程度の差になる場合もあります。
新規申し込みを打ち切ったプランについても、以前から契約していた人たちに対しては以前からの価格を維持してきましたが、九州電力は既存契約者に対しても2020年4月から値上げすることを決めています。
他の大手電力も追随する可能性が無いとは言えず、以前からオール電化プランを契約して割安な料金で利用していた人たちにとっては大幅な値上げとなる可能性があります。
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