2021年に起きている「電力不足」の原因と影響

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コロナ禍の2021年に起きている電力不足


 2022年春現在起きている現下の電力不足については2022年1・2月に懸念される電力不足の危機で解説しています


 新型コロナウイルスが猛威を振るう2021年1月の日本では、全国的に電力不足と言うべき状況が発生しています。なぜ電力不足が不足しているのか、その原因や影響を分かりやすく解説します。



2021年の年明けから顕在化した電力不足


 まずはコロナ禍の日本で起きている「電力不足」を詳しく解説します。


逼迫する電力需給の現状


 実は昨年末から既に兆候がみられましたが、特に2021年の仕事初め、1月4日以降に電力の需給が全国的に逼迫しています(沖縄を除く)


 電力各社の「でんき予報」によれば、例えば1月8日の使用率ピーク時の使用率を95%以上と公表しているのが北海道、東北、中部、北陸、関西、中国、四国、九州の8エリアとなっています。


四国電力の「でんき予報」

四国電力の「でんき予報」 2021年1月8日

 電力は一定時間内に需要が大きく変動するため、少なくとも余裕(予備率)を3%以上持つ必要があります。つまり使用率が97%を超えることは危険であるとされていますが、ピーク時の使用率が97%を超えるエリアが4つあり、非常に深刻です。


 年明け以降、連日にわたりこのような状況が続いており、電力各社は相互に電力を融通しあったり、製鉄会社や石油会社など大規模な自家発電設備を持つ企業の協力も得ながら対応しています。企業の自家発電を含む全国の発電設備を「最大出力」で運転し余剰電力を市場に供給するよう、調整機関から異例とも言える指示が1月6日に出されていることからもその深刻さが窺えます。


電力不足の原因は「燃料不足」と「寒波」


 この電力不足の原因の一つは年末から続く寒波です。


 今シーズンは寒さが厳しい冬です。2020年12月に関越道で大雪による大規模な立ち往生が発生したのは記憶に新しいですが、1月7日に気象庁が発表した1ヶ月予報でも例年より気温が低いとされています。


 冬に気温が低下すると、暖房による電力消費が増えます。例えば中部電力管内では気温が1度低下すると電力需要が35万kW増加、供給予備率は1〜2%低下すると言われています。それに加え今シーズンは、換気が積極的に行われているため例年より暖房による電力消費が増大している可能性があります。厳冬だった17年度と比べても需要が1.1%多いとの報道もあります。


LNGタンカー

LNGタンカー

 気温に加え深刻なのが、火力発電所の燃料不足です。


 2020年の春先から新型コロナの影響で経済活動が大幅に停滞していたため、電力需要が例年より大幅に減少していました。経産省がコロナによる電力需要の減少を以下のように試算しています。


家庭用 業務用 産業用 合計
4月 +6.9% -9.1% -3.2% -0.8%
5月 +3.4% -14.7% -10.4% -6.7%
6月 +1.0% -9.8% -6.5% -5.1%
7月 +2.2% -3.5% -6.6% -3.1%

 電力需要が少なかったため、電力各社が燃料の仕入れを減らしてしまった可能性が指摘されています。それに加え、コロナの影響などで燃料の輸送や製造にも一部で影響が生じている点も問題として指摘されています。


 2021年1月現在、北海道から九州までの少なくない火力発電所が燃料不足を理由に出力を抑えて運転している状況が続いており、需要面の要因(先に上げた気温低下)とあわせて電力の需給を逼迫を生み出しています。


春先まで続く恐れも


 こうした電力需給の逼迫は、春先まで続く可能性も指摘されています。


 日本の電力需要の4割を支えるLNG(液化天然ガス)のスポット市場は、通常「2ヶ月先」に受け渡す商品を売買しています。したがって、今の時点で追加で購入してもすぐに燃料が手に入るわけではありません。


 春に近づくにつれて気温も上昇していくため、春先にはひとまず状況が改善に向かっていくのは間違いありませんが、影響が数週間あるいは数ヶ月にわたり継続する恐れもあります。


電力不足に付随して起きている価格高騰も深刻


 電力需給の逼迫にあわせて、厄介な問題も発生しています。


暴騰する卸電力取引所の取引価格


 電力を取引する卸電力取引所の取引価格が、全国(沖縄を除く)で歴史的な暴騰を見せています。東京エリアの年末年始の取引価格を紹介します。


年度 平均価格
2020年度 38.85円/kWh
2019年度 7.36円/kWh
2018年度 9.95円/kWh
2017年度 9.78円/kWh
2016年度 8.49円/kWh

 各年度の年末年始、12月26日〜1月6日期間の取引価格の平均値です。2020年度が突出して高いことが分かります。


 家庭向けの電気の販売価格(小売価格)は約26円程度(産業用は更に安い)なので、この期間に卸電力取引所から調達した電力を販売しても電力会社(主に新電力)は大幅な赤字となります。


 なお、1月4〜9日で平均を取ると79.6円となり更に事態は深刻です。


2016〜20年度の卸電力取引所の取引価格推移

年度ごとの年末年始時期の価格推移

倒産・撤退する新電力が続出する可能性も


 自社で発電所を多く抱える大手電力各社や、あるいは東京ガスのように自社で十分な発電所を保有するごく一部の新電力は、卸電力取引所の取引価格高騰の影響を受けにくいです。例えば東京ガスは卸電力取引所からの調達がわずか3%です(2018年度実績)


 新電力によっては卸電力取引所からの調達が半分超を超えるところも珍しくありません。その場合、現在の非常に高額な取引価格で調達するか、調達できなかった場合は更に高額な費用を負担する必要があり、この数ヶ月の間に経営が深刻な状況に陥ることは免れません。


 分かりやすくいえば、50円で仕入れたものを25円で売るような状況が年末から続いているという状況です。


卸電力取引所の取引価格高騰

売れば売るほど赤字

 なお、契約している新電力が万が一倒産しても、一定の期間内に他社に切り替える手続きをすれば、停電することなく電気を使い続けることが可能です。これまでにもいくつか倒産した新電力がありますが、契約者を保護する仕組みが取られているため不安になる必要はありません。


市場連動型プランは電気代が「数倍」になる恐れが


 深刻なのが「市場連動型プラン」と呼ばれる電気料金プランを契約している消費者や企業です。


 市場連動型プランは、電気料金に決まった定価が無く、卸電力取引所の取引価格に連動して料金単価が変動するプランです。電気料金比較サイトで「安い」と表示されることが多く、それを見て契約した人もいると思います(なお、当サイトではリスクを考慮し、市場連動プランは料金シミュレーションに掲載していません)


東電/従量電灯B 6800円
市場連動型 15000円前後

 年末年始の取引価格の水準で簡単に試算すると、東電で6800円で済む電気代が市場連動型プランでは15000円前後となってしまいます(40A契約、月300kWh) 1月以降の取引価格では、2万円を超える可能性もあり深刻です。


 市場連動型プランを契約している人は、直ちに他社への切り替えをおすすめします。市場連動型プランでないプランは、今のところ価格高騰リスクはありません(だからこそ、厳しい状況に追い込まれる新電力が多数ある)


私たちに出来ること、対策は


 私たちが今やるべきことをまとめます。


節電への協力を。


 記事執筆時点では政府からの「節電要請」は出ていません。また、梶山経済産業大臣は1月8日の会見で「現時点では節電要請は想定していない」と説明しています。したがって、東日本大震災直後や2018年の北海道のような徹底した節電を行う必要は、現時点では無いと言えます。


 とはいえ需給が逼迫しているのは事実です。コロナ対策を最優先に、出来る範囲での節電に意識を向けてください。例えば電気ポットではなくガスコンロでお湯を沸かすとか、トースターではなくガスの魚焼きグリルでトーストしてみる(火加減が難しいですが、おいしく焼けます)といった方法で「電気を使う量」を減らすよう心がけてください。


停電への備えも


カセットガスストーブ

電気を使わないカセットガスストーブ

 現時点で差し迫った危険があるわけではありませんが、電力不足だけでなく大雪など様々な理由で停電が発生します。例えば電源が必要無い暖房器具を用意しておくなど、日頃から停電への備えをしておくことは必要なことです。




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