2022年2月現在、深刻な危機に瀕している電力自由化の現状

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2022年2月現在、電力自由化は危機に陥っている


 私は2014年からこのサイトを運営し、電力自由化の推移を見守ってきましたが2022年2月現在、電力自由化が「危機的な」状況に陥っていることを肌で感じています。表から見えないところで既に生じている異常事態をレポートします。


 関連記事:加速する新電力の撤退・縮小の動き(2022年3月27日-撤退した新電力の一覧など)



2022年2月に発生している異常事態


 2022年2月現在、表ざたにはなっていないものの既に裏で起きている異常事態を紹介します。


新規獲得を次々縮小している新電力各社


 2022年1月頃から、新電力各社が新規獲得を縮小する動きがかつてない勢いで出ています。


 当サイトから申し込みが出来た30数社の内、5社が様々な理由により広告プロモーションを中止しています。完全に「終了」となったところはまだ無く、4月以降に再開していただける方向で「一時中止」との連絡を頂いていますが、過去にこのようなことはありませんでした。


 2〜3月は1年で最も新電力の申し込みが伸びる需要期にあたります。1年で最も新規獲得が期待できるこの時期に、少なくない新電力が新規獲得を絞る、あるいは完全に止めてしまう(申し込みを打ち切っている会社もある)というのは「異常事態」と言うほかありません。


2021年1月の取引価格高騰よりも深刻


卸電力取引所の東京エリアプライス

2020年12月25日〜21年1月7日の取引価格(東京エリア)

 2020年末から21年1月下旬にかけて、電力取引価格高騰が発生しました。仕入れコストが格段に増えたことで、少なくない新電力の経営に深刻な打撃となりましたが、この時に当サイトでの新規獲得を中断したのは1社のみです。


 現在5社が停止している、というのは21年1月の取引価格高騰時よりもきわめて深刻な事態です。


深刻な事態が発生している原因は


 広告プロモーション中断の連絡を頂いた新電力のうち、数社は中断の理由として「電力取引価格の高騰」を理由として明確に挙げています。中には「システムメンテナンス」と説明してきた会社もありましたが、システムメンテナンスではなく取引価格高騰が原因だろうと推測しているところです。


 2021年11月以降、卸電力取引所における電力の取引価格が高い水準で推移しています。東京エリアプライスの月間平均額の推移を紹介します。


11月 12月 1月
19年度 9.03円 8.71円 8.17円
20年度 5.35円 14.35円 66.53円
21年度 17.59円 18.04円 23.95円

 新聞紙面を賑わせた21年1月の高騰時につけた66.53円/kWhと比較すればマイルドではありますが、価格が落ち着いていた19年度と比較して高止まりが続いていることがわかります。


 21年1月に発生した異常な高騰を機に新電力各社は取引価格高騰の影響を受けない「相対契約」(取引所を介さず、発電所を持つ企業から電力を仕入れる)を増やしています。


 例えば光通信グループは21年3月第三四半期の固定価格での仕入れ(主に相対契約)は全体の11%に留まりましたが、22年3月第三四半期は同比率を49%まで高めたことを決算説明資料の中で公表しています。


 ですが完全に相対契約でまかなえる新電力は少ない上、更に相対契約での調達も「奪い合い」となっているため思うように調達が進んでいないという話も漏れ伝わってきています。


夏までに起こりうる最悪シナリオ


 2022年夏までに想定できるシナリオを紹介します。


事業撤退・倒産・合併が相次ぐ


 21年1月の異常な高騰により、F-Powerやアンフィニなどが倒産(民事再生など)に追い込まれました。今般起きているマイルドな価格高騰、また相対電源の調達難により、同様に倒産に追い込まれる新電力は今後相次ぐでしょう。


 一方で相変わらず「体力のある」新電力があるのも事実です。直近でも、元気のある新電力による合併や吸収が相次いでいます。


時期 イベント
21年12月 グリーナでんきTGオクトパスエナジーに事業譲渡
22年2月 Japan電力が光通信グループの傘下へ?

 集約や撤退により、電力小売自由化のプレイヤーが減少していくことが予想されます。


 関連記事:加速する新電力の撤退・縮小の動き(2022年3月27日-撤退した新電力の一覧など)


集約される先は


 合併や吸収の受け皿となる会社は以下に分類されます。



 自社で十分な発電所を保有している新電力(主に大手ガス)は、取引価格高騰の影響を受けづらいです。また、発電所を保有するには莫大な資金が必要となるため、資金力がありますからその面でも体力があると言えます。


 大手電力による新電力の買収、出資も今後ますます増えると思います。


料金水準の切り上げも


 原価が高止まりしているため、売値を引き上げざるを得ない状況に追い込まれる新電力も今後増えるでしょう。アグレッシブな値付けをしていた新電力が、価格競争の先頭から脱落していく事態が予想され、結果として電気料金の水準が切り上がって行かざるを得なくなると予想しています。料金が安いことで知られていたサニックスでんきは21年12月から新規申込受付を停止しています。停止の理由として卸電力取引所の取引価格高騰を挙げています。


 割安な料金で契約したユーザーに対しては、今後も安価な料金プランの提供が継続されると期待したいですが、ある一定のラインを超えてしまうと既存契約者に対しても値上げを実施せざるを得ない新電力も出てくるはずです。


 法人用の高圧電力の分野では、競争入札で自治体向けの電力供給を落札した業者が、途中で供給を辞退する動きも出てきています。




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