2022年1・2月に懸念される電力不足の危機

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懸念される2022年1〜2月の電力不足


 2021年5月に、経産省から電力不足の見通しが示されました。状況の解説と、今からやるべき対策をまとめます。



2021年5月に示された「見通し」


 経産省が示した見通しを紹介します。


経産省が需給逼迫の見通しを公表した


 経済産業省が2021年5月に、2021年夏と冬の時期に電力需給が逼迫する見通しを公表しました。


経済産業省は14日、2021年7〜8月と22年1〜2月は電力需給が逼迫するとの見通しを明らかにした。夏はここ数年で最も厳しく、冬は東京電力管内で電力不足が生じる恐れがある。電力会社に供給力を確保させるとともに、産業界に省エネを求める方向で月内に対策をまとめる。

引用元:電力需給逼迫の見通し、夏と冬 経産省が対策へ(日本経済新聞)

 電力供給の余裕度を示す「予備率」は、発電所や送電網の突発的なトラブル発生にそなえて、最低3%必要であるとされています。


 ですが北海道・沖縄を除く地域では、予備率が7月に3.7%、8月に3.8%を見込んでおり、近年では最も厳しい水準になることが分かりました。


 近年では太陽光発電の急激な増加や、省エネ化により夏の時期の電力供給に余裕がある状況が続いていましたが、2021年夏については厳しい状況となる見通しとなっています。


特に深刻な22年1〜2月


 更に深刻なのが、2022年1〜2月です(2021年冬シーズン)


 暖房需要が伸びるこの時期は、夏の時期以上に電力需給の逼迫が起こりやすいシーズンですが、2021年冬シーズンについては東京電力管内の予備率が「マイナス」という深刻な見通しが示されています。


 予備率がマイナスというのは、すなわち「電力が足りない」ことを意味します。もっとも、他の地域からの融通によりカバーできる場合もありますが、いかんせん東電管内は他の地域と比べても圧倒的に規模が大きいため、その点でも不安が大きいと言えます。


今後、日本でも常態化する恐れがある電力不足


 「電力不足」の懸念は、実は日本で常態化しつつあるといえる状況があります。


2021年1月にも需給の逼迫が生じた


 記憶に新しいところでは、2021年1月にも電力不足が発生しました。


 連日にわたり、電力各社の「でんき予報」の値が98%を超える状況が1ヶ月近く続き、電力の取引価格も異常な高騰をみせ、少なくない新電力が経営に深刻な打撃を受けました。


 前述の通り、冬の時期は暖房需要により電力の需要が伸びることに加え、2021年1月についてはLNG(液化天然ガス)の輸入が新型コロナウイルスの感染拡大の影響により滞ったことで、火力発電をフル稼働させることが出来ないという供給面の制約も発生し、事態が深刻化・長期化しました。


 詳細については以下の記事で解説しています。


電力不足に備えて今からやるべきこと


 来る電力不足にそなえて、今からやるべきこと・出来ることを対策として紹介します。


電気を使う時間帯を「シフト」する


 「電力不足」が発生している状況下でも、時間帯によっては供給に余裕がある時間帯があるケースも少なくありません。


 人々が活動していない「深夜」であったり、夏の時期であれば、太陽光発電による底上げが期待できる晴天時の昼間(7〜16時)は比較的需給に余裕がある場合が珍しくありません。


北海道電力の需要量グラフ(2017年9月10〜16日の平均)

北海道電力エリアの需要量の時間帯別推移(2017年9月10〜16日の平均)

 一方、時期を問わず人々が帰宅し、エアコンをつけたり家事を始める「夕方」の時間帯は、特に夏・冬は需給が逼迫しやすいです。


 需給が逼迫しやすい時間帯を避け、余裕のある時間帯に使用を「シフト」させることでも、電力需給を改善することが可能です。タイマー設定できる家電製品では、タイマーを活用すると節電に協力しやすいと思います。


電力以外の熱源を確保する


 特に冬場の電力不足に対しては、ガスや石油といった電力以外の熱源を使用した暖房器具を活用することで、節電に貢献することが可能です。


 我が家では東日本大震災発生後の電力不足の際に、エアコン暖房を全て消してガス床暖房をフル稼働することで節電対応を行いましたが、非常時にはガスや灯油を活用することも検討してください。


カセットガスストーブ

カセットガスストーブ

 リスクとしてはそれほど大きくはありませんが、大規模停電や輪番停電(計画停電)にそなえて、電気を使用しない暖房器具をそなえておくことも「もしも」のときの備えとしては有効です。我が家では停電にそなえてカセットボンベで動くストーブを備蓄しています。


市場連動型プランの解約


 一部の企業、一般家庭では電気料金単価が卸電力取引所の取引価格に連動して変動する「市場連動型プラン」を契約している例があります。


 電力需給が逼迫するタイミングでは、電力の取引価格が急騰します。市場連動型プランを契約している場合は、電気料金が高額化する恐れがあるため、高騰が予想されているタイミングでは予め解約することを強く推奨します。


需給ひっ迫時の電力取引価格

需給逼迫により高騰した2020年12月25日〜21年1月7日の取引価格(東京エリア)

 2021年1月の電力不足の際には、大手電力会社の標準メニューで7000円程度の請求で済んだはずの一般家庭で、市場連動型プランでは15000円以上になる例も数多くあり、大きな混乱が発生しました。


 なお、市場連動型プランでない多くの新電力・大手電力会社の料金プランは、取引価格高騰の影響を受けないため、電力不足によって電気代が上がる懸念はありません(電力会社の経営には影響がある)
 現在契約している電力会社のプランや契約内容を再点検してください。


節電機器の導入


 電気を使う量を減らすアプローチです。巷で様々な方法が紹介されているので、ここでは詳しくは紹介しませんが、「電力不足」を機に再度、節電を検討してみてください。


オイルヒーター

オイルヒーターよりエアコンの方がエコ

 なお、冬の時期はオイルヒーターやセラミックファンヒーターの使用を控え、エアコンの設定温度を上げるだけでも節電になります。エアコンはそれらの暖房器具と比べて4倍程度、効率が良い「エコな」暖房器具です。電力不足時にはオイルヒーターや電気ストーブの使用は出来るだけ控えてください。


太陽光発電など創エネ設備の導入


太陽光発電


 足りない分を補うというアプローチです。家庭では太陽光発電、家庭用燃料電池エネファームなどの機器が普及しており、戸建て住宅では容易に導入できます。


 太陽光発電であれば、設置費用分の「元を取る」ことが可能であるケースが多いです。CO2排出量の削減にも貢献できるので、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。電力不足が懸念されているからといって、無理に導入する必要はありませんが。


 近年では初期費用0円で太陽光発電を導入できる無料設置というサービスも大手電力各社の子会社などがこぞって参入しており、費用負担無しに導入することも可能です。


家庭用蓄電池


 蓄電池も停電対策としては有効ですが、現状「元が取れる」には程遠い水準の価格であるため、積極的には推奨しません。小容量のタイプでも、数時間程度の停電時に電力供給を賄うことが出来ますが、その安心のために毎月1万円以上を10年払い続けることが出来るか、考えてみてください。ヒーターが必要な熱帯魚や爬虫類を買っていて、停電で死なせたくないなどの事情があれば導入する価値は大いにあると思います。


2022年3月に起きていること(加筆)


 記事前半の内容は2021年5月時点の情勢をふまえて記述したものです。以下、2022年3月21日現在の情報を加筆します。


「電力不足」が起きている原因は


 2022年3月、東京電力パワーグリッドが節電を呼びかけています。政府が初の「電力需給ひっ迫警報」を出しており、深刻な事態となっています。


 電力不足が起きている原因としては、記事前半に記した21年5月時点で懸念されていたように、以前から需給がひっ迫している状況にありましたが、加えて以下の事象が発生したため3月のこの時期に深刻な電力不足が発生してしまいました。



 まず、3/16に発生した最大震度6強の地震により、福島県新地町にある新地発電所などが稼働できなくなりました。その影響で発電できる量が低下しています。


 それに加え、この時期としては珍しく雪・みぞれが予想される低温という悪条件が重なりました。東京電力管内では3月に気温が1度下がると電力需要が100万kW増加するとされています。100万kWは大規模な原子力発電所や火力発電所1基分に相当します。




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