東京電力が2023年6月に値上げ

東京電力が2023年6月に従量電灯を値上げへ


 2023年6月に「従量電灯」を値上げする東京電力。値上げに至った背景と、契約者が取るべき対応を電力自由化の専門家としてこれまで多数のメディア取材を受けてきた私が解説します。



2023年6月に従量電灯を値上げする東京電力


 2023年に実施される東電の値上げを解説します。


値上げする理由


燃料


 東京電力が値上げを実施する最大の原因はエネルギー価格の高騰です。


 ロシアによるウクライナ侵攻や円安、新型コロナ禍からの急激な経済活動再開、金融緩和など様々な理由によって日本が輸入しているエネルギーの価格が高騰しています。


 新型コロナの影響でエネルギー価格が安かった2020年春と2022年春を比較すると、原油は4.4倍、石炭は3.5倍、LNGは2.8倍と大幅に高騰しています(日本のドルベースでの輸入価格) それに加え円安も急速に進行したことでエネルギー価格が高騰しています。


 電気料金には燃料価格の変動を転嫁する燃料費調整額という項目があります。ですが東京電力の従量電灯の場合、燃料費調整に上限が設けられており、2022年9月以降は燃料価格の上昇が続いているにもかかわらず燃料費調整の上昇が食い止められています。


東京電力の燃料費調整単価

東京電力の燃料費調整単価

 2023年2月分の燃料費調整単価で一般家庭の平均的な使用量(月300kWh)の場合、この上限の有無によって電気料金に2373円の差が生まれます。この2373円は東電にとっていわば「持ち出し」となっています。


 東京電力グループでで電気の販売を手掛ける東京電力エナジーパートナーは2022年度に過去最大となる約5000億円の経常赤字を出し、一時債務超過に陥るなど厳しい経営環境におかれています。


2023年6月に値上げされる料金プランの対象は?


 東京電力の発表によると、低圧の料金プランすべてが値上げの対象となり、今後料金改定が行われます。


 経産省の認可が必要な「従量電灯」に加え、スタンダードやプレミアムといった料金プランも見直しの対象となります。


 なお、スタンダードやプレミアムなどいわゆる「自由化向けプラン」と呼ばれる新しい料金プランについても、あわせて値上げが実施される可能性が想定されます。これらのプランでは燃料費調整に上限が無く、既に電気料金が高騰しているため値上げされた場合の値上げ幅は従量電灯と比べて小さなものとなるはずです。


 法人向けの高圧電力についても値上げが発表されています。


 直近のニュースでは規制料金(いわゆる従量電灯プラン)の値上げばかり報道されていますが、全ての料金プランが値上げ対象です。2022年10月に値上げされた電化上手も再び値上げされます。


いくら値上げされるの?


東京電力従量電灯の値上げ幅は


 東電の発表によれば、値上げ幅は従量電灯で約28.6%とされています。既に電気代が高騰しているところから、更に3割の値上げとなれば、電気代はかつてない程に高騰することになります。


 なお、「スタンダード」や「プレミアム」といった自由化向けプランと呼ばれる料金プランは燃料費調整に上限が無いことが原因で、既に従量電灯以上に電気代が高騰しています。例えばスタンダードSの場合、従量電灯と比べて25%近く高騰(30A月300kWh、2023年2月分燃料費調整単価)しています。これらの自由料金については現行から5.28%の値上げとなります。


いつから値上げされるの?


東京電力従量電灯は2023年春に値上げ


 東電は2023年6月1日からの値上げ実施を目指していますが、従量電灯の値上げには経産大臣の認可が必要です。申請から認可が降りるまでに5ヶ月程度の時間が掛かるため、2023年7月にずれ込む可能性もあります。


 東北電力、中国電力、北陸電力、四国電力、沖縄電力は既に経産省に値上げを申請済みで春から値上げ予定、北海道電力も今後値上げを申請する見通しです。逆に現時点で値上げの方針を示していないのは関西電力、九州電力、中部電力の3社のみという状況です。


契約者の対処方法


 東電従量電灯の値上げに向けて契約者が取るべき対応をまとめます。


値上げされるまで東電従量電灯を利用継続


 値上げが実施されるまでの間は東電の従量電灯を使い続けることを推奨します。


 現状、東電の従量電灯以外の料金プランには燃料費調整に上限が無いため、電気代が高騰しています。ENEOSでんきソフトバンクでんきauでんき東京ガスなどの多くの新電力も燃料費調整に上限がありません。


 2023年1・2月分の燃料費調整単価で試算すると、燃料費調整に上限が無い全ての料金プランが大多数の一般家庭で東電従量電灯よりも割高になっている状況です。したがって今から燃料費調整に上限が無い新電力の料金プランに切り替えるのは「損」でしかありませんし、もし今契約している料金プランが燃料費調整上限無しのプランなのであれば東電従量電灯への切り替えを推奨します。


新料金発表後に料金比較を


 東電の従量電灯の値上げにあわせて、新電力各社も料金単価を変更(値上げ)する可能性があります。東電の新料金発表から数週間程度で新電力各社の料金プランも出揃うので、そのタイミングで割安な電力会社を探してください。


 当サイトでは各社の料金改定にいち早く対応する予定です。


新電力の追随値上げにも要警戒


 新電力各社は東電の値上げに追随する形で値上げを行います。


 既に値上げを発表した新電力の中には、東電の値上げ後の料金と比べても更に10%〜33%高くなる値上げを発表したところもあります。新電力を契約している人も、注意が必要です。


値上げを発表した新電力 値上げ後の料金
(東電値上げ後比)
東急でんき 高い
PinTでんき 高い
あかりの森でんき 高い
auでんき 安い
Pontaでんき 安い



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