2023年春の東北電力の値上げを解説
2023年6月に実施される東北電力の値上げを、電気料金プランの専門家としてメディア取材を受けてきた私が詳しく、分かりやすく解説します。東北電力契約者が取るべき対応も解説します。
目次
2023年6月に電気料金を値上げする東北電力
まずは値上げの詳細を解説します。
値上げする理由・背景
東北電力が値上げをする原因は燃料価格の高騰です。
世界的な資源価格の高騰と、円安が急速に進んだことで日本が海外からの輸入に頼っている燃料(天然ガス、石炭、石油)の輸入価格が急上昇しています。
東北電力が供給している電力の約7割は火力発電所でつくられているため、燃料価格が高騰していることで東北電力の収益が圧迫されています。東北電力の2023年3月期の連結最終損益は1800億円の赤字となる見通しです。
東北電力以外の大手電力会社についても、2022年10月末時点で中国電力、四国電力、北陸電力、東京電力が値上げの実施を表明しています。
燃料価格高騰に加え、電気を届けるための費用である「託送料金」の値上がりの影響も加わります。東北電力エリアでは託送料金が1.21円/kWh(低圧)値上げされることが見込まれています。託送料金は
値上げされる料金プランは?
料金プラン | 値上げ時期 |
---|---|
従量電灯 | 2023年6月 |
それ以外の 多くの料金プラン |
2022年12月分〜 |
2023年6月に値上げされるのは「従量電灯」と呼ばれる料金プランです。
従量電灯BやCは規制料金といって、経産省の審査を経て料金が設定されています。電気料金には燃料価格の変動を毎月の料金に反映する「燃料費調整制度」という仕組みがありますが、従量電灯では燃料費調整に上限が設けられています。
東北電力の場合、2022年6月分以降の燃料費調整単価がこの上限に達しています。従量電灯は上限があるため1kWhあたり3.47円で上昇が食い止められていますが、上限が無ければ2022年12月分で1kWhあたり12.57円と、月300kWhの電気を使う一般家庭では電気料金に2730円もの差が生まれています。
なお、従量電灯以外の新しい料金プランや工場などで使われる高圧電力は経産省の審査が必要無く電力会社側で自由に料金を決定出来るため、従量電灯に先んじて燃料費調整の上限を撤廃することで実質的に値上げされています(2022年12月分から上限が廃止)
具体的にいつから値上げされるの?
東北電力の発表によると、値上げの実施は2023年6月になります。
従量電灯の料金改定には経産省の認可が必要です。審査には数ヶ月以上(過去の例では5ヶ月前後)掛かるため、値上げの申請自体は11月24日に行われていますが実際に値上げされるのは2023年6月です。
値上げ幅は?
東北電力の発表によると、一般家庭では平均31.72%の値上げ幅となります(2022年12月分の燃料費調整単価、30A契約・月260kWhの場合)
従来料金で8565円のものが、値上げ後は11282円に。電気代が1ヶ月あたり2717円上昇することになります。
2023年1月からは政府が電気代の補助(月最大2000円)を実施するため、消費者が実際に支払う電気代は2022年12月分と2023年6月分とでは大きくは変わらない水準になるでしょう。ですが補助が終了する予定の2023年9月までに燃料価格が下落しなければ電気代は大幅に高くなります。
なお、標準世帯で月2717円という値上げ幅は燃料費調整の上限の有無による差2366円(9.10円/kWh)と託送料金の値上げ314.6円(1.21円/kWh)の合計と概ね合致する金額です(燃調上限分+託送料金で2680.6円)
今後、経産省の審査によっては値上げ幅が変更される場合もあります。
利用者が取るべき対処方法・対策
東北電力の従量電灯を利用している人が取るべき対処方法を解説します。
値上げまで従量電灯を使い続けよう
値上げが実施される2023年春までは東北電力の従量電灯を使い続けることを強くおすすめします。
東北電力の従量電灯以外の料金プランでは既に燃料費調整の上限が撤廃されることで大幅に値上がりし、従量電灯よりも電気代が大幅に高くなっています。
また、東北電力の新電力と呼ばれる電力会社も多くは燃料費調整に上限がありません。現在の燃料費調整の水準では、燃料費調整に上限が無い全ての料金プランが、大多数の一般家庭・商店・事務所などで「割高」になっており、現状で東北電力の従量電灯は東北エリアで最安水準の料金プランとなっています。
ENEOSでんきやソフトバンクでんき、auでんきなどの新電力に切り替えることで電気代は高くなってしまいます。東北電力の従量電灯を契約している方は、少なくとも2023年春まで東北電力の従量電灯を使い続けてください。逆に、燃料費調整に上限が無い料金プランを現在利用している方は東北電力の従量電灯に切り替えた方が電気代が安くなります。
値上げ後は各社の料金プランを比較
東北電力の値上げにあわせて、新電力各社も値上げを実施する可能性があります。東北電力の値上げ後の料金単価の発表から数週間程度で新電力各社の料金プランが概ね出揃うので、割安な料金プランを探して申し込んでください。
新電力への切り替えを検討する場合は、以下の点に注意してください。
- 最新の燃料費調整を含めた料金比較を行う
- 市場連動型プランは料金高騰リスクがあるので契約しない
電気料金比較サイトの中には、最新の燃料費調整を反映せずに試算を行い、実際には割高になる料金プランを「安い」と紹介しているところが少なくありません。必ず最新の燃料費調整をふまえて料金を比較してください。
また、一部の新電力では卸電力取引所での電力取引価格を電気代に転嫁する「市場連動型」と呼ばれる特殊な料金体系を採用しています。現在、電力の取引価格は暴騰を続けているため、このような料金プランは一般的な料金プランと比べて電気代が1.5〜2倍以上になる場合があります。現在の情勢下で契約するメリットは無いので注意してください。当サイトではこのようなリスクがある料金プランについて「料金高騰リスクあり」と表記しています。
当サイトでは各社の値上げ後の料金プランにいち早く対応していく予定なので、ブックマークに入れていただけるとうれしいです。
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