なぜ再エネ賦課金は2024年春に値上がりするのか
2024年春に値上がりする再エネ賦課金。なぜ値上がりするのか、その背景を解説します。なお、本記事の1〜3章は2023年夏時点での予想、4章は2024年3月の単価決定を受けた解説補足となります。
目次
2024年春に値上がりが確定的な再エネ賦課金
再エネ賦課金は2024年春に大幅に値上がりする可能性が濃厚です。
2023年は初めて値下がりしたが・・
2012年の制度開始以来、毎年の改定で単価が上昇を続けていた再エネ賦課金。ですが2023年度の再エネ賦課金の単価は制度開始以来初めて、値下がりしました。
ですが2024年度の改定では、再エネ賦課金は再び上昇に転じる可能性が高いです。
いくら値上がりするの?
記事執筆時点(2023年7月)で明確に2024年度の再エネ賦課金単価を示すことは難しい状況にありますが、過去の状況と照らして2024年度(2024年5月以降分)の再エネ賦課金単価は2円台/kWhになると予想できます。
7月までの状況を鑑みると2.5円/kWh前後になると考えられます。現時点では2円台前半になる可能性は低く、また2円/kWh以下になる可能性もかなり低いと言えます。
概ね、一般家庭では再エネ賦課金要因で電気代が毎月約300円上昇することになります。
2024年春に再エネ賦課金が値上がりする理由・背景
なぜ、2024年春(5月)に再エネ賦課金が値上がりすると言えるのか。その背景を解説します。
そもそも再エネ賦課金は何に使われているのか
そもそも再エネ賦課金とは何に、どのように使われているのかを簡単に解説します。
再エネ賦課金は正式名称を「再生可能エネルギー発電促進賦課金」といいます。その名のとおり、再生可能エネルギーによる発電を促進するために徴収されています。
日本では2012年に固定価格買取制度という再エネの導入を促進する制度が始まりました。固定価格買取制度では、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで作られた電気を、決まった期間・決まった価格で買い取ります。
この買い取る際の価格は、一般の電気の販売価格より割高です。再生可能エネルギーによる発電はまだまだコストが高いため、一般的な価格で買い取っても採算が取れません。それでは再エネの導入は拡大しません。割高な価格で買い取ることで再エネの導入を後押しするのが固定価格買取制度で、その固定価格買取制度で割高な価格で電気を買い取るための費用が再エネ賦課金です。
値上がりする理由1:電力取引価格
再エネ賦課金が2024年度に値上がりする理由として、電力取引価格の直近の推移が挙げられます。
固定価格買取制度で買い取られた再エネ電力は、「日本卸電力取引所」で取引されている電力の取引価格で売却されます。その売却価格は、再エネ電力を買取る際の価格よりも安いです。差額を再エネ賦課金で埋めています。
2022年度はロシアによるウクライナ侵攻などを受けて燃料価格が高騰、そして電力取引価格も高止まりしていました。そのため、固定価格買取制度で買い取った電力を高値で販売することができ、結果として再エネ賦課金による補填が小さく済んだという事情があり、翌年度にあたる2023年度の再エネ賦課金単価が大幅に値下がりしました。
ですが2023年2月頃から電力取引価格は直近までの異常な高騰期と比較して割安に推移しています。電力取引価格が低く推移すると再エネ賦課金による補填を大きくする必要があるため、再エネ賦課金の上昇要因となります。
なお、2022年からは電力取引価格の変動が再エネ賦課金に影響をほぼ与えない「FIP」と呼ばれる制度も開始しています。
値上がりする理由2:再エネ導入拡大
固定価格買取制度で買い取る電力の量が増えることで、買い取りに必要な費用も増えます。結果として再エネ賦課金が上昇します。
太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーによる発電は年々増加しており、その流れは留まるところを知らないという状況です。また、政策的にも東京都などの一部の自治体が住宅への太陽光発電設置を義務化する条例の改正案を可決するなど、再生可能エネルギー導入を更に加速させようとしています。
上でも少し触れた2022年から開始したFIP制度では電力取引価格が下落しても再エネ賦課金への負担が大きくならない仕組みです。FIPでは電力取引価格に、一定のプレミアムを上乗せした金額が売電収入として発電所を所有する企業などに支払われます。ですが発電量が増えることで再エネ賦課金の負担が増えることには変わりありません。
再エネ賦課金値上がりへの対策
値上がりする再エネ賦課金への対策をまとめます。
電力会社を安いところに切り替える
電気の契約を見直し、割安な電力会社と契約することで電気代を下げることが出来ます。地域や使用条件によっても異なりますが、例えば東京電力管内で平均的な一般家庭(月300kWh/30A契約)の場合、年間で6000円程度、東京電力より割安な電力会社が存在します。
切り替えにあたっては費用は発生しません(契約事務手数料を取る会社も少数存在)し、申込みはネットで5分もあれば完了。工事も基本的に必要無く、解約違約金なども掛からない会社が多いです。
割安な電力会社は以下の電気料金一括シミュレーションで簡単に探すことが出来ます(日経トレンディ、産経新聞などメディア掲載多数)
太陽光発電を導入する
再エネ賦課金は電力会社から電気を購入する際、1kWh単位で発生します(どの電力会社と契約しても金額は同じ) 一方、自宅で発電した電力には再エネ賦課金は発生しません。
なので再エネ賦課金が高止まりを続く環境では、自宅で発電をする経済的優位性が高まります。一般家庭での最も手軽な発電方法は太陽光発電です。使用環境によって変わりますが、太陽光発電を導入することで電力会社から購入する電気の量を3〜5割程度削減できるケースが多いとされています。その分、再エネ賦課金の負担は小さくなります。
太陽光発電の導入には100万円以上の費用が掛かるのが一般的ですが、条件が悪くなければ「元は取れる」とされています(蓄電池は元が取れないので要注意) 最近は初期費用無しで導入できるサービスもあるので、戸建てにお住まいの方は導入を検討してください。
省エネを徹底する
再エネ賦課金は電力会社から電気を1kWh購入するごとに課金されます。節電を心がけ、電力会社から購入する電気の量を減らすことで再エネ賦課金の負担も軽減できます。
家庭で簡単に出来る節電対策は以下の記事で詳しく、具体的に解説しているのでぜひ参考にしてください。
2024年度の再エネ賦課金が3.49円に決定
この記事は2023年8月から公開し、記事前半部分はその当時の情報となります。以下、2024年3月19日の2024年度再エネ賦課金単価決定を受けて解説します。
前年度から2.5倍に上昇
2024年度再エネ賦課金単価を3.49円/kWhに決定したことを経済産業省が2024年3月19日に発表しました。
前年度の単価は1.40円だったので、実に約2.5倍の値上がりとなります。23年夏時点では「2.5円/kWh」と予想していましたが、電力取引価格が安定して推移したことで予想を遥かに超えた水準に決定されました。
再エネ賦課金の支払いの調整を行う電力広域的運営推進機関が資金不足となり1200億円の借り入れを行うなど2023年度は電力を取り巻く環境が大きく変化した一年でした。
電気代への影響は
月300kWhを使う一般家庭では、再エネ賦課金の値上がりにより5月以降の電気代が月627円上昇することになります。
それに加え、2024年5月以降は政府の電気代補助金が縮小・終了する見通しとなっています。電気代補助金は24年4月分までが3.5円/kWh、5月分が1.8円、6月以降は0円となります。再エネ賦課金の上昇とあわせた上昇幅は5.59円/kWhとなり、一般家庭の電気代を1677円上昇させることになります。
時期 | できごと | 電気代への影響 |
---|---|---|
2024年5月 | 再エネ賦課金値上がり 電気代補助金縮小 |
1.40→3.49円/kWh -3.50→-1.80円/kWh |
2024年6月 | 電気代補助金終了 | -1.80→0.00円/kWh |
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