ホルムズ海峡封鎖危機で家庭の電気代はいくら上昇する?
深刻化するイラン情勢。日本の電気代にはどのような影響を及ぼすのか、最新のエネルギー価格を元に電気代への影響を計算した結果をまとめます。
目次
▼ 電気料金を比較する
深刻化するイラン情勢
イラン情勢が緊迫化しています。
エネルギー価格が上昇中
産油国であるイランが戦争状態に突入したことで、2026年3月からエネルギー価格が急上昇しています。戦火はイラン周辺の産油国にもひろがっており、カタールのLNG施設やサウジアラビアの製油所もイランからのものとみられる攻撃を受けています。
加えて、日本が輸入する原油の93%、LNG(液化天然ガス)の6%が通過するホルムズ海峡でも船舶を狙った攻撃が発生しており、一部の商船会社が航行を停止するなど「事実上、封鎖された」(2026年3月3日 時事通信)ことで、生産・輸送両面から懸念が高まり、エネルギー価格の急騰を招いています。
参考までに、「開戦前」の2026年2月末の終値と3月3日昼時点でのエネルギーの取引価格(先物価格)の上昇率をまとめます。
| 上昇率 | |
|---|---|
| 原油 Dubai Crude Oil Futures |
+5.57% |
| LNG LNG Japan/Korea Marker Futures |
+24.62% |
| 石炭 globalCOAL Newcastle Coal future |
+8.61% |
石炭はホルムズ海峡をほぼ通過しないものの、LNGなどからの代替需要としての期待から価格が上昇しています。
停電のリスクは低い
中東からエネルギーが届かなくなる、と聞くと停電の発生やガソリンが日本国内から消えてしまうリスクを思い浮かべがちです。
ですが日本国内には消費量の約250日分の石油備蓄があります。外交の専門家などの認識では、仮に中東からの原油の輸入が完全に停止したとしても、備蓄が尽きる前に問題の解決が実現するとされています(元駐イラン大使 齊藤貢氏 2026年3月2日 ReHacQ)
日本と同等以上の石油備蓄を持つ国は韓国やハンガリーなどがありますが「少数派」であり、日本が干上がる前に主要国から石油が枯渇し、経済活動が停止します。日本が深刻な事態に陥る前に、国際社会による速やかな解決が図られる可能性が高いと言えます。
また、石油火力発電は日本の電源構成の1割未満とわずかです。オイルショックを経て石油火力発電所の新設は1970年代から原則禁止されており、発電では脱石油が進んでいます。
発電の3分の1を占めるLNGについては国内の在庫(備蓄制度は無い)は消費量の約2〜3週間分しかありません。ですがホルムズ海峡を通過する割合はわずか6%と低く、調達先はオーストラリアやマレーシア、ロシアなどに分散しています。
仮にホルムズ海峡を通過するLNGの輸入が全て停止し代替調達もゼロとした場合、発電量の約2%に影響が生じることになります。夏・冬の電力需要ピーク期は2%より多く影響が生じるものの、国民一丸で節電に取り組むことや再エネの有効活用(出力制御を削減する等)などで乗り切れる水準と言えます。
したがって、停電やガソリンが無くなるリスクは「低い」と言えます。
▼ 関連記事
家庭の電気代への影響を計算した結果
イラン情勢の緊迫化による停電のリスクは低いものの、電気代の大幅な上昇は避けられません。電気代への影響を試算しました。
家庭の電気代の上昇幅は
エネルギー価格により、日本の家庭の電気代にも影響が避けられません。燃料価格の高騰は数カ月遅れて家庭の電気代に反映されます。5月頃から顕著に電気代の上昇が始まり、ちょうど冷房を多く使う時期に向けて電気代が上昇することになります。では、いくら高くなるのか。試算結果は以下のとおりです。
試算条件:30A契約 300kWh使用、電気代補助金含まない、再エネ賦課金3.98円/kWh含む、東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bを想定した試算 原油、LNG、石炭が一律に上昇する想定
| 条件 | 電気代 | 調整単価 | 電気代差 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月分 | 10028円 | -7.59円/kWh | - |
| 10%上昇 | 10274円 | -6.77円/kWh | +246円 |
| 20%上昇 | 10517円 | -5.96円/kWh | +489円 |
| 30%上昇 | 10763円 | -5.14円/kWh | +735円 |
| 50%上昇 | 11252円 | -3.51円/kWh | +1224円 |
燃料価格が50%上昇した場合、電気代は1割超上昇することになります。
東京電力以外の大手電力10社については、燃料価格50%上昇時の調整単価を以下にまとめます(上限考慮無し、各社従量電灯 端数処理や離島ユニバーサル調整の関係で電力会社発表値と差異が生じる場合がある)
| 燃料費調整単価 | 2026年3月 | 50%上昇時 |
|---|---|---|
| 北海道電力 | -7.25円/kWh | -3.88円/kWh |
| 東北電力 | -8.63円/kWh | -4.71円/kWh |
| 東京電力EP | -7.59円/kWh | -3.51円/kWh |
| 中部電力MZ | 0.96円/kWh | 6.78円/kWh |
| 北陸電力 | -7.87円/kWh | -5.21円/kWh |
| 関西電力 | 2.71円/kWh | 6.30円/kWh |
| 中国電力 | -9.96円/kWh | -6.47円/kWh |
| 四国電力 | -7.05円/kWh | -4.42円/kWh |
| 九州電力 | 1.14円/kWh | 3.58円/kWh |
| 沖縄電力 | -12.78円/kWh | -8.05円/kWh |
なお、燃料価格が「2倍」になると東電の燃料費調整単価は0.57円となり、電気代は2026年3月から2448円上昇することになります。東電の場合、電気代の上昇率は燃料価格の上昇率の半分程度です。燃料価格が2倍になったとしても、電気代は2倍にはならず24%の上昇です。
なお、燃料費調整は3ヶ月平均の燃料価格を元に計算します。仮に1ヶ月だけ2倍になり、前後の月が1.2倍(いずれも直近の期間との比較で)とした場合、3ヶ月平均の燃料価格は1.47倍です。そのイメージで燃料価格上昇幅を1.5倍と置きました。
市場連動型プランは急騰に注意
これまで、一般的な燃料費調整型の料金メニューについて解説してきましたが、昨今増えている市場連動型プランはリスクがより大きいです。
2020年末から翌21年1月下旬にかけて1ヶ月にわたり、日本全体でLNGが不足しました。新型コロナの影響でLNGの出荷が停滞したことが要因です。その影響で緩やかな電力不足が1ヶ月続き、結果として電力取引価格は21年1月の月間平均で66.53円/kWhと通常の6倍以上の水準に高騰しました。
一般的な30分変動型の市場連動型プランを例に、一般的な燃料費調整型の料金メニューの代表として東京電力エナジーパートナーの料金と比較します(30A契約・300kWh 2026年3月分料金 電気代補助金含まない)
| 電気料金 | |
|---|---|
| 東京電力EP 従量電灯B |
10028円 |
| 30分変動市場連動 取引価格66.53円 |
29485円 |
| 30分変動市場連動 取引価格11.17円(26年2月平均) |
9863円 |
2021年1月と同様の事態が起きた場合、市場連動型プランの電気代は一般的な料金プランの約3倍に高騰することになります。
イラン情勢が深刻化することで燃料価格が上昇し、通常の燃料費調整型の料金プランも電気代が上昇します。しかし市場連動型プランは燃料価格の水準に加え、燃料不足による電力需給の逼迫を受けた電力取引価格上昇要因の影響も受けるリスクがあり、このような有事の際は極めてリスクが大きいです。
30分変動ではなく、例えば月間平均の電力取引価格を電気代に反映する市場連動型プランでも、「3倍」ではないにせよ2倍以上に高騰します。
市場連動型プランを利用している方には速やかに市場連動型プランでない他社の料金プランへの切り替えを推奨します。
一般家庭で取るべき対処方法は?
イラン情勢の不安定化を受け、日本の一般家庭では何をすべきか解説します。
電気代が安い電力会社に乗り換え
電気代が安い電力会社に切替えることで、電気代を抑えることができます。削減幅は地域や使用量により異なりますが、20%程度の燃料価格高騰であれば電力会社切り替えで吸収できるケースが多いです。
当サイトでは地域ごとに、電気代が安い電力会社を紹介しているので参考に選んでください(メディア掲載多数)
▼ 電気料金を比較する
九州・関西は新電力の料金プランに注意
関西・九州電力エリアでは市場連動型プランに限らず、注意が必要です。
関西電力・九州電力の標準メニューである従量電灯の燃料費調整には「上限」があります。一方、多くの新電力の料金メニューと、関西電力・九州電力の新しい料金メニューには上限がありません。
関西電力では2022年から上限を上回る推移が続いていますが、九州電力でも今後の燃料価格の上昇により再び上限に到達する可能性が高いです。上限に到達すると燃料費調整の差で「上限無し」プランの電気代が高くなります。関西電力・九州電力エリアにお住まいの方は注意してください。
ほかの地域については上限がかなり高いため、現在のところ問題はありません。最新情報はTwitterで注意喚起するのでフォローして確認してください。
市場連動型プランの解約
繰り返しになりますが、市場連動型プランは二重のリスクを負っているため、このような有事の際は極めて危険です。電気代が3倍あるいはそれ以上に高騰するリスクがあります。燃料価格高騰だけでなく、燃料不足が発生すれば電気代は3倍どころではない水準まで高騰します。
一般的な燃料費調整型の料金プランでは、2026年3月の水準から電気代が3倍になるリスクはゼロに近いです。

