原発処理水問題の「その後」 | ALPS処理水の現在の状況

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放出開始から1年半が経過した原発処理水の「今」


 2023年8月に放出が始まった原発処理水。放出開始にあたって近隣国や国内の一部から反対の声が挙がっていましたが、現在どのような状況なのか「その後」をニュース記事をもとに「その後」を解説します。



そもそも処理水とは何だったのか


 詳しくは原発事故処理水の海洋放出は安全なの?にて解説しているので、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。以下、概略を紹介します。


 2011年3月に発生した福島第一原発事故の現場周辺では、雨水や地下水の流入などにより高濃度の放射性物質を含む「汚染水」が今も発生し続けています。


 この「汚染水」をALPS(アルプス)と呼ばれる浄化システムに通すことで、危険性の高い放射性物質を取り除いた後の水が「処理水」です。


 処理水には取り除くのが難しいトリチウムという放射性物質が含まれます。放射性物質が含まれると聞くとそれ自体が危険だと多くの人が感じると思いますが、トリチウムを含む水は世界中で正常に運転している原子力発電所からも大量に排出されていることからも分かるとおり、一定の基準を満たせば危険なものではありません。福島第一原発の処理水として排出されるトリチウムは、フランスやイギリスなどの原発関連施設が排出するトリチウムより桁違いに小さなものです。


所在国 施設名 放出量
フランス ラ・アーグ再処理施設 約1京3700兆ベクレル
イギリス セラフィールド再処理施設 約1540兆ベクレル
カナダ ブルースA,B原発 約892兆ベクレル
中国 大亜湾原発 42兆ベクレル
台湾 馬鞍山原発 約40兆ベクレル
韓国 古里原発 約36兆ベクレル
日本 福島第一原子力発電所
(事故前2010年)
約2.2兆ベクレル
日本 福島第一原子力発電所
(放出計画)
22兆ベクレル(上限)

 ですが放射性物質が含まれる水を海に放出することで、風評被害を生むとの懸念から処理水は原発周辺に設置されたタンクに貯蔵されていました。日に日に増え続けるタンクは廃炉作業の妨げとなっていたため、国際機関の監視の元、海洋放出が開始したという経緯です。




処理水問題の現在


 では、処理水問題は放出開始から1年半が経過した今、どのような状況か。ニュース記事をもとに解説します。


IAEAの常時監視下で放出継続中


 2023年8月にALPS処理水の放出が開始した後、放出は24時間365日行われているわけではなく2023年度は4回、24年度は7回の放出が実施されています(1回数週間程度) 放出された処理水の累計は86,144m3に達します。200Lの湯船43万杯分、中型の原油タンカー1隻分に相当します。


 処理水の放出にあたっては、放出完了までIAEA(国際原子力機関)が原発構内に留まり、常時監視しています。また文科省所管の国立の研究機関である日本原子力研究開発機構もタンクの水を採取し、トリチウムが基準値以下であることやトリチウム以外の放射性物質が含まれないことを検査しています→検査結果:ALPS処理水の第三者分析 | 日本原子力研究開発機構


 2025年度も7回にわたり合計54.6万m3の放出が計画されています。


中国政府も2度の調査で異常無しと結論


 中国政府はALPS処理水の海洋放出を問題視し、日本産の水産物の全面禁輸措置を取りました。海洋放出を「無責任な行為」と批判し、大使を呼び出して申し入れを行う、国連の会合でも日本を批判するなど厳しい態度を取っていました。


 しかし、足元ではIAEAの枠組みを利用して専門家を派遣し、調査を行った上で「異常はなかった」と公表、また日本産の水産物の輸入再開に向けた動きも見せています。


中国政府は7日、IAEA=国際原子力機関の枠組みのもとでことし2月に中国の専門家も参加して行われた、福島第一原発の処理水の2回目の追加調査について、異常はなかったと発表しました。

引用元: 中国 福島第一原発処理水の2回目の追加調査 異常なしと発表 (NHK)

 ただし、中国外務省は2025年4月に「個別の結果で異常がないことが、今後も問題ないということにはならない」と述べており、これまで問題は確認されていないことを認めつつも、依然として厳しい態度を維持しています。


韓国政府も異常無しを確認


 韓国国内では尹錫悦大統領(当時)が「国際的な安全基準に合致する」と処理水の放出に同意していた一方、野党「共に民主党」が処理水の放出に厳しい態度を取っていました。処理水の放出をめぐって、北朝鮮が韓国国内で展開するスパイ組織が反対を扇動していたとの報道もあります。


北朝鮮が韓国内で運営する自国のスパイ組織に対し、東京電力福島第一原子力発電所の処理水放出に関して反日行為を扇動するよう指示する指令文を送っていたことが判明した。

引用元:北朝鮮、処理水巡り韓国で反日扇動…スパイ組織に指令「日韓対立を取り返しつかない状況に追い込め」(読売新聞)

 韓国政府は韓国国内でも水産物や船舶のバラスト水などの検査を行っており、以下のように公表しています。


「(日本が)昨年8月24日に初めて海洋放出を開始して以来、韓国政府は今年8月19日までに計4万9633件の放射能検査を完了した」「韓国の海域と水産物、船舶のバラスト水などに対する検査結果で放射能安全基準を超える事例は1件もなかった」と明らかにした。

引用元:韓国政府「5万回の検査で安全基準上回ったこと一度もない」 汚染処理水放出から1年(朝鮮日報)

ロシア国立機関も懸念無しと報告


 ロシアも中国に同調する形で処理水の放出が開始した後の2023年10月から日本産の水産物の輸入制限を実施しています。


 日本産の水産物は引き続き安全であるとの発言を政府高官が行ったほか、国立機関も日本周辺の海水を調査した結果「懸念なし」と報告しています。


ロシアの衛生当局のダンクベルト長官が「魚の追跡調査を行っているが、いまのところ異常は何も見つかっていない。魚は安全だが、日本からは輸入しない。われわれは、予防措置を講じるという意味で行動している」と述べて、原発の周辺の海で取れた魚は安全だとする一方で、予防措置として輸入規制は続けるという見解を示したと伝えました。

引用元: ロシア当局“原発周辺の魚は安全 規制は継続” 複数メディア (NHK)

ロシアの国立研究機関は、東京電力福島第一原発にたまる処理水の海への放出を受けて日本周辺の海水を調査した結果、海水に含まれる放射性物質の量は基準値を大幅に下回っていたとする報告書を公表しました。
(中略)
日本周辺の海の魚介類についても「何の疑いもなく食べられる。心配する根拠は、いまのところない」と指摘しています。

引用元: ロシアの国立研究機関が独自調査で処理水「懸念なし」報告書 (NHK)



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