「爆安」な電力会社が出てこない理由

「大して安くならない」という批判


 電力自由化をめぐっては、「大して安くならないから乗り換えない」といった批判も多く聞かれます。それは事実なのか、またなぜそのような状況になっているのかを解説します。



乗り換えによる節約の現状


 まずは電力自由化で電力会社を乗り換えた人たちの「節約」の実情を紹介していきます。


平均「4%安」という事実


 資源エネルギー庁が2017年7月に発表した資料によると、大手電力会社と比べて新電力の電気の販売単価は約4%安くなっています電力小売全面自由化の進捗状況 PDF P.7)


 この数値は「低圧電灯」の集計値であるため家庭向けプランのみの成績ではありませんが、新電力へ切り替えた人は電気代が4%安くなっていることが分かります。


 電気料金は年間1世帯あたり約10万円程度と言われていますから、年間の節約額は4千円ほど。月額換算で340円と、確かに「大して安くならない」という批判は的外れとは言えない現状があると言えます。


特別安い会社が無い理由〜コスト構造


 10%、20%と電気代が安くなることを期待していた人も少なくないと思いますが、なぜ「たった」4%しか安くならないのか。そこには電力ビジネスの特有の理由があります。


電気を届けるコストは一定


 2016年の電力小売自由化をもって、電気の販売が完全に自由化されました。しかし、電気を届ける「送配電網」については自由化されておらず、各地域に1社の送配電会社(現在は大手電力会社の送配電部門)が実質的に独占している状態です。


送配電網の利用には一定の料金が掛かる(託送料金)


 よく新電力は送配電網に「タダ乗り」していると勘違いしている人がいますが、実は新電力が送配電網を利用するにあたって託送料金とよばれる電線の使用料金が発生します。


 託送料金は経産省が地域ごとに認可した「一律の」料金単価が適用され、利用する電力会社による差はありません(大手電力の小売部門も新電力と実質同額を負担)


 託送料金は消費者が電力会社に支払う電気料金の内、約3〜4割と大きなウェイトを占めています。


電気をつくるコストも差を出しづらい


 顧客に届ける電気の調達コストについても、電力会社間で差を出しづらい部分です。


 現在、多くの電力会社は卸電力取引所という市場から電気を調達し、消費者に供給しています。市場価格ですから、特定の参加者が有利な価格で調達できるということはありません。


 また、一部には自社で発電所を持っている新電力もありますが、発電所の建設費用や運営コストも大きな差を出すのが難しい分野です。
 例えば新電力がこぞって保有するLNG火力発電所は、ガスタービンなど高度な技術を要するため「誰にでも作れる」ものではありません。三菱重工(三菱日立パワーシステムズ)やシーメンス 、GEなどがマーケットを独占しています。設備を同じところから仕入れれば、当然コストも似通ったものとなります。


火力発電所


 また、燃料についても国際的な市況商品ですから「相場」というものがあり、そこから大きく逸脱した価格で仕入れられるものではありません。


その他のコストはどうか


 契約・解約時の事務手続きや顧客対応、あるいは顧客獲得に掛かるコストは会社ごとにコストの差が付きやすい分野ではあります。


 例えば新電力が新規の契約を受け付ける際、事務手続きで30分程度の作業時間が必要になると言われています。そうした手続きを上手く処理できない会社は処理速度が上がらず顧客満足度が低下したり、コスト増で収益性が悪化します。


 差別化できるポイントではありますが、中小の新電力を中心に「外注」している例も多く、コストの差が出づらいという事実もあります。


新電力の顧客対応にはコストが掛かる




中には誤った批判もある


 「大して安くならない」という批判の中には、誤った認識に基づくものも少なくありません。よく誤解されている点をまとめます。


年々上がる再エネ賦課金


 契約している電力会社に関係なく、電気の使用量に応じて一定の金額が発生する「再生可能エネルギー発電促進賦課金」というものがあります。


 太陽光発電や風力発電など再エネの普及を目的としてつくられた国の制度によって徴収されている料金で、電気を1kWh使うごとに2.9円発生します(2018年度)


太陽光発電などの普及促進のための再エネ賦課金


 再エネ賦課金は年々上昇を続けており、例えば5年前の2013年度にはわずか0.35円/kWhでした。月300kWhの電気を使う世帯では、この5年で毎月765円の負担増となっています。


 毎月の電気代の請求額には再エネ賦課金が含まれているため、再エネ賦課金の上昇により「乗り換えても大して安くなっていない」と感じてしまうケースが少なからずあるように思います。


燃料費調整額という落とし穴も


 基本料金や電力量料金(従量料金)に加え、毎月変動する「燃料費調整額」というものがあります。ほとんどの電力会社が導入しており、新電力の場合は大手電力会社と同額を徴収している例が圧倒的に多いです。


 燃料費調整額とは、その名のとおり燃料費の増減を調整するために設けられているもので、石油・石炭・天然ガスの輸入価格に応じて毎月変動しています。


燃料価格の影響もある


 電力完全自由化がスタートした2016年4月時点では、WTI原油価格は1バレル40.96ドルだったものが、2018年9月には70.21ドルまで上昇しています。当然、燃料費調整額もそれに応じて負担が大きくなっています(東電:16年4月 -2.78 → 18年11月 -1.14円/kWh)


 燃料費調整額の上昇も、乗り換えによる節約効果を実感しにくくしている要因の一つではないでしょうか。


ちゃんと比較していない?


 資源エネルギー庁が公表している新電力の人気ランキング(販売電力量)を見ると、私の目から見て「大して安くならない」新電力が上位に名を連ねています。


 冒頭でも紹介したように、乗り換えた人が平均4%程度しか安くなっていないというのも、このランキングを見て納得できる内容です。


 当サイトのような比較サイトを活用することで、4%どころではない節約も難しいことではありません。しっかりと比較することが重要です。


新電力が割高になるケースも


 新電力に切り替えることで、かえって料金が割高になるケースもあります。


 特に電気の使用量が少ない世帯(一人暮らしなど)や、原発が動いていた頃の格安の「オール電化用プラン」を契約している世帯です。


 これらの条件では、新電力が大幅に割高になったり、あるいは料金が2、3%しか安くならないというケースも珍しくありません。また、使用量が少ない場合はもともとの請求額も小さいため、節約効果がより小さく見えます。




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