電力自由化後に撤退・倒産した新電力の一覧

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撤退・倒産した新電力もある


 電力自由化から2年、参入したものの撤退や倒産した新電力も出てきています。そうした事態に陥った新電力を一覧で紹介した上で、教訓や問題点を解説します。


 最新情報:【2022年6月】新規契約受付を停止している新電力の一覧



倒産・撤退した新電力の一覧


 これまでに倒産・撤退した新電力と、そうした事態に陥った理由と一緒に紹介していきます。


日本ロジテック


 電力小売自由化が始まった直後の2016年4月に倒産しました。企業や自治体に向けて電力を販売し、売上高555億円、電気の販売量は新電力の中で当時は5位というシェアを誇っていました。


 自治体などに低価格で電気を販売する反面、電気の調達コストの上昇により資金繰りが悪化、倒産に至りました。


大東エナジー(大東建託系)


 大東建託が管理する賃貸住宅に「いい部屋でんき」のブランド名で電気を販売していた会社です。26万件の顧客を抱え、新電力としては5位のシェアがありました。


 2017年11月頃から「電気の供給をやめる」旨を顧客にアナウンスし、それからわずか1ヶ月足らずの間に他社に切り替えるよう顧客に「依頼」したため大混乱に陥りました。
 ちなみに、その期限から3ヶ月経った2018年3月時点でも、約1割の顧客がまだ大東エナジーを利用しているようです。


 撤退の理由は「事務処理への対応の問題」と「電気の調達コスト」の2点。
 煩雑に発生する事務処理にしっかりと対応できる体制を整えられなかったことや、処理コストで採算性が低下したことが撤退の理由になったようです。


福島電力


 シェアは30位、全国に8万件の顧客を抱えていた新電力です。全国の不動産会社と提携し、入居者に電気を契約させることで急拡大したものの、2018年4月に撤退を表明しました。


 提携する会社を増やし、契約数を急拡大していく中で電気料金の請求の遅れや誤請求、コールセンターに電話が繋がらないなどの数々の問題を起こした挙げ句に撤退しました。その後2018年夏に破産しました。


 大東エナジーと同様に、1ヶ月少々という短い期間の内に他社に切り替えるよう通知したため、大混乱を招きました。


エレトス電気


 同社の営業代理店が関西電力の名を騙った悪質な営業活動をした結果2019年5月に逮捕され、その直後にエレトス本体が「サービス終了」をアナウンスしました。


 終了のアナウンスからわずか約2週間後を契約変更手続きの期限として設定(5月末通知→6月14日期限)しており、不誠実な対応といえます。


あくび電気


 あくび電気を運営する「あくびコミュニケーションズ」は、2020年2月末に東京地裁から破産手続開始決定を受けました。


 同社は総務省や消費者庁などから度重なる行政処分を受けるなど、コンプライアンスを遵守しない姿勢が目立つ会社でした。2019年12月は契約者に対し料金の前払いを要求するなど、経営悪化が疑われる行動も見せていました。「グリーンエナジー」を運営していた関連会社の株式会社カステラと共に倒産する運びとなりました。


AGエナジー


 2020年3月に再エネ賦課金の「未納」を経産省から公表され、当月中に新電力事業からの撤退を表明、続いて東京地裁より破産手続開始の決定を受け倒産に至りました。


 再エネ賦課金の未納などの問題はありましたが、これまでに倒産した新電力の中では、「きれいな終わり方」をしたように思います。


F-Power


 2021年3月に会社更生法の適用を申請し、倒産しました。倒産したものの、事業を継続しながらスポンサー企業の下、経営再建を目指しており契約者への電力の供給も継続しています。


 「新電力大手」ということもあり、注目を集めました。安売りが経営不振を招いたと言われており、会社更生法申請する数年前から巨額の赤字を計上し、倒産の噂が囁かれていました。中国政府系の日本GLPをスポンサーとして再建を目指しています。


アンフィニ(ジャパン電力)


 2021年9月に民事再生法の適用を申請し、倒産しました。


 本業である太陽光発電システムの製造事業で価格の下落に見舞われ、続いて2020年末から約1ヶ月にわたり発生した卸電力取引所の取引価格高騰の影響も受けて倒産にいたりました。


 その後も電力の供給を含め事業は継続しており、スポンサー企業を選定した上で再建を目指しています。


ホープエナジー


 自治体向け情報サービスなどを手掛けているホープ子会社の新電力会社。元々はホープの電力事業だったが2021年1月に発生した電力取引価格高騰を受け業績が悪化、分社化しその後2022年3月に破産に至りました。主に法人向けに電力を供給。


ウエスト電力


 ウエストホールディングス子会社。電力取引価格高騰の影響を受け2022年4月末で電力小売事業からの撤退を発表。主に法人向けの電力小売事業を展開。


エルピオでんき


 2022年4月をもって事業を停止することを発表しました。2021年秋から続く電力取引価格高騰の影響を理由として挙げています。会社自体は存続しておりプロパンガス、都市ガスなどの事業は継続しています。電気の契約数は推定12万件。


Natureスマート電気


 スマートリモコンなどを手掛けるNatureの家庭向け新電力サービス。電力取引価格高騰の影響を受け2022年6月をもって小売電気事業の終了を発表。推定契約数は600件。


アンビットエナジージャパン


 米国系のアンビットエナジーの日本法人。ネットワークビジネスによる事業拡大が功を奏し、推定59000件の契約を獲得。電力取引価格高騰の影響を受け2022年5月をもって日本国内での事業から撤退します。


あしたでんき


 東電系、出光興産や伊藤忠商事、ドバイ水・電力公社などが出資するTRENDEが提供してた家庭向け新電力サービス。2018年サービス開始と後発ながらも推定契約数36000件と健闘していたものの、電力取引価格高騰の影響を受けて2022年6月をもってサービス終了に。


その他





倒産・撤退した新電力の共通点


 撤退や倒産した新電力の共通点を見てみましょう。


自社発電所を持たない


自社発電所が無い新電力が多い


 日本ロジテック、大東エナジー、福島電力はいずれも自社で発電所を持たない会社でした。供給する電力は市場などからの調達に頼っています。


 取引量が増加したため、最近は電気の調達価格が以前よりも安定しているものの、季節やタイミングによっては調達コストが高騰することがあります。


 発電所を持たない新電力は、そうした電気の市場価格に採算を大きく左右されるため、経営が不安定になりやすいです。


顧客対応の体制が不十分だった


 大東エナジー、福島電力は撤退の理由として、顧客対応への問題を挙げています。いずれも顧客からのリクエストに十分応えられる体制を整えることが出来なかったり、効率的に事務処理を行う体制が不十分だったと言えます。


 また、新電力が新規の契約を処理するのに、1件あたり30分程度の作業時間が掛かるとされています。時給1600円の派遣社員を雇った場合、1件処理するのに800円の人件費が掛かる計算です。
 薄利多売の電力小売事業にとっては決して小さくないコストです。


新電力にとって顧客対応は重要


今後も撤退・倒産は続くのか?


 散発的に発生している新電力の倒産・撤退。今後もこのような事態は続くのでしょうか。現状を見てみましょう。


6割の新電力が黒字


 日本経済新聞が2018年5月に報じたところによれば、全国の新電力上位100社の内、2017年度に営業黒字を出したのは6割だったそうです。


日本経済新聞社が大手100社を調査したところ、2017年度に営業損益で黒字を確保した企業の割合は6割となった。

引用元:新電力、営業黒字6割 昨年度本社調査(日本経済新聞)

 逆を言えば、4割の新電力は赤字。


 普段多くの新電力の料金プランやサービス内容を見ていますが、「誰がこんなの契約するんだ?」と言いたくなるような新電力も多いです。小さな会社はもちろん、大手資本の会社でも思うように契約を伸ばせていないところは少なくないです。


 契約が伸び悩んでいる新電力を中心に、今後も撤退や倒産は続くでしょう。




契約している会社が倒産・撤退したら?


 では、自分が契約している新電力が撤退・倒産したら何が起こるのか。先例をもとに解説します。
 詳しくは以下の記事でも解説。


すぐに電気が止まることはない


 まず、新電力が倒産・撤退してもすぐに電気が止まることはありません。


 仮に新電力からの送電が止まってしまった場合、一定期間は送配電網を管理している会社(各地域の大手電力会社)が電気を代わって供給するため、停電しません。停電する前に事前に通知があります。


新電力が倒産・撤退してもすぐには停電しない


他社への切り替えが必要


 とはいえ、最終的には撤退する新電力からの送電も、最終保障供給約款による送電もいつかは止まります(止まる前に通知があることになっている)


 送電が停止する前に、大手電力会社なり新電力なりと契約し直す必要があります。


 手続きは簡単で、新しく契約する電力会社に住所や氏名などの個人情報に加え「供給地点特定番号」という22桁の番号を伝えるだけでOKです。


 これまで契約していた会社に対しては、新しく契約する会社から解約手続きが行くので、自分で何かする必要は無いです。




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