電気の「標準使用量」が電力会社によってコロコロ変わる問題

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電気の標準使用量が電力会社によって異なる問題


 ニュースなどで見る電気の「標準使用量」が電力会社によって異なることをご存知ですか? マスコミ報道の中にはバラバラの条件で試算した電気料金を注釈無しに報道している例もあり、注意が必要です。「標準使用量」の闇を解説します。



大手電力10社の標準使用量の一覧


 まずは大手電力10社と役所が、それぞれバラバラに定めている「標準使用量」をご覧ください。


各機関が定める電気の標準使用量


 北海道電力の230kWhから、経産省の400kWhまで大きな開きがあることが分かります。大手電力10社の間でも230kWhから260kWhまで差があります。


 経済産業省は電気代補助金のリリースなどで標準使用量を400kWhとしており、大手電力10社の標準使用量と大きく乖離しています。これは総務省の「家計調査」を元に設定しているものと推測します。家計調査の2022〜24年の月平均電気使用量は400.2kWhです。ただし、これは「二人以上世帯」を対象とした統計なので、1人暮らし世帯を含めると「平均」は大きく引き下がるでしょう。


標準使用量に差がある理由


 「標準使用量」に差がある背景を解説します。


気候のちがい


 日本列島は北から南まで長く、雪が多く降る地域から温暖な地域まで様々です。例えば温暖な地域では冬場の暖房に必要な電力は少なく済み、逆に寒い地域では暖房に多くの電力を必要とします。


各機関が定める電気の標準使用量


熱源のちがい


 環境省の統計によると、寒冷なイメージがある北海道は近畿よりも家庭の電力使用量が少ないです。暖房に多くの電力を消費するイメージとは異なります。


 北海道でも近年エアコンの普及が急速に進んでいますが、暖房の主役は灯油やガスです。私は仕事で1ヶ月ほど札幌に滞在したことがありますが、その時に利用したウィークリーマンション(きれいな物件だった)にはエアコンが無く、都市ガスのガスファンヒーターが付いていました。このような背景から、北海道では冬場の電力消費量が首都圏や近畿圏ほど伸びづらいです。


住居面積・形態のちがい


 環境省の統計によると、戸建て住宅は集合住宅より電気の使用量が1.81倍も多いです。これは断熱性能の差や、戸建ての方が面積が広い傾向があることなどが要因です。


 首都圏や近畿圏では集合住宅の比率が高く、北陸や東北などでは戸建ての比率が高いです。また北陸は住宅の平均延べ床面積が広いことで知られており、富山・福井が全国で上位にランクインしています。家が広ければ冷暖房に使う電力だけでなく、照明に使う電力も必然的に多くなります。


何らかのバイアスを掛けたい意図も?


 下のグラフは大手電力10社がそれぞれ設定している「標準使用量」と、環境省が統計として公表している「令和4年度家庭部門のCO2排出実態統計調査」の地方別の世帯あたり年間電気使用量です。


各機関が定める電気の標準使用量


 環境省統計と電力会社の供給エリアは必ずしも一致しているものではない点には注意が必要ですが、統計と大手電力10社が設定している標準使用量には地域によって大きな乖離があることが分かります。


 例えば北海道と関東甲信(東京電力)は環境省統計では同水準の使用量となっていますが、東京電力の標準使用量より北海道電力の標準使用量の方が少なく設定されています。


 北海道電力は大手電力10社(標準メニュー)の中で最も電気代が高いことから、標準使用量を少なく設定することで電気代負担を小さく見せようという意図があるのではないか、という疑いを持っていますが「標準使用量」の算定方法の詳細が分からないため断定は避けます。環境省統計だけでなく、総務省の家計調査でも北海道(札幌)の電気使用量が関東の政令指定都市より使用量が少ないとする根拠は乏しいと言えます。


都市 月平均電気使用量
家計調査 2022〜24年
札幌市 354kWh
水戸市 408.5kWh
宇都宮市 393.2kWh
さいたま市 366.3kWh
前橋市 362.5kWh
相模原市 355.9kWh
川崎市 355.7kWh
甲府市 348.5kWh
東京都区部 332.9kWh
横浜市 329.5kWh
千葉市 329.0kWh

統一された「標準使用量」をつくるべき


 「標準使用量」に地域差が生じることは考慮すべき事情もある反面、例えば地域間の電気料金の水準を比較する際は同一の試算条件による試算が必要です。


 こちらは日本経済新聞に掲載された記事で、原発の稼働状況が電気料金に差を生み出しているとするものです。この記事では「標準的な使用量に基づく」電気料金の試算が紹介されていましたが、この標準的な使用量とは北海道・北陸の230kWhから他7地域の260kWhまで幅があります。


 記事は原発の稼働の有無による電気料金の地域差を指摘したものなので、使用量は揃えて試算しなければ正しい比較とは言えません。ちなみに、記事では原発が稼働している地域と稼働していない地域の料金差は25%としていますが、使用量を揃えて試算し直すと地域差は35%近くにのぼります。


 メディアの報道や役所の資料で「標準使用量」あるいは「平均的な家庭」を扱う際の統一的な基準を設けるべきではないでしょうか。




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