電力自由化から見るキャッシュレス消費者還元事業の問題点

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これでいいのかキャッシュレス消費者還元事業


 政府が消費税増税にあわせて多額の税金を投入して実施している「キャッシュレス消費者還元事業」に対しては様々な批判の声が上がっています。電力自由化の視点からも問題点が見えてきたので、この記事で詳しく指摘したいと思います。



キャッシュレス消費者還元事業とは


 まずはこの制度がどんなものか、簡単に解説します。


事業の目的


 消費税増税にあわせて、2019年10月から2020年6月までの期間限定で実施されている国の制度です。


 クレジットカードやスマホ決済など、対象店舗で「キャッシュレス」決済をして買い物をすると、国の負担で2%もしくは5%のポイント還元が行われるという制度です。


 経産省は事業の目的を以下のように説明しています。


・消費税率引き上げに伴い、需要平準化対策として、キャッシュレス対応による生産性向上や消費者の利便性向上の観点も含め、消費税率引き上げ後の一定期間に限り、中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使ったポイント還元・割引を支援します。
・本支援を実施することで中小・小規模事業者における消費喚起を後押しするとともに、事業者・消費者双方におけるキャッシュレス化を推進します。

引用元:キャッシュレス・消費者還元事業(経済産業省)

 長いので要約すると、



 こういった目的で行われている制度です。


制度の問題点


 続いて、この事業の問題点を電力自由化・新電力会社の視点から指摘していきます。


電気代の支払いはもともとキャッシュレス


 制度の目的としてキャッシュレス化の推進が挙げられていますが、新電力会社の電気料金については既に多くがキャッシュレス化されていると言っても過言ではない状況にあります。


 多くの新電力会社では、電気代の支払い方法をクレジットカード払いのみ、あるいは口座振替も可能としており、いずれもキャッシュレスによる支払い方法です。一部「コンビニ払い」にも対応している新電力もありますが、いずれも1回あたり200円程度の手数料を徴収しているため、選ぶ消費者は限られているでしょう。


 今回キャッシュレス消費者還元の対象となっている新電力3社について見ても、従前から支払い方法をクレジットカードや口座振替としており、キャッシュレス化推進の目的のため税金を投入する意義が見えません。


中小向けのはずが大企業も対象となっている


 本制度の目的として中小企業や小規模事業者の支援やキャッシュレス化の推進が挙げられています。ですが本制度の対象となっている新電力の中には、中小事業者とは言い難い規模の企業が含まれています。


 本制度の対象となっているある企業の情報を調べてみると、売上高はグループ全体で2926億円(2018年度、公式HPより)、また社員数はグループ全体で1643人(2019年3月時点、公式サイトより)となっています。2011年に資本金の額を5億円から1億円に減らしたことで法的には中小企業として分類されているようですが、実質的には大企業と言わざるを得ない規模の会社です。


 また、同じく本制度の対象となっている生協について調べてみると、グループ全体で従業員数953人(マイナビ2020掲載)、また売上も年間数百億円以上と、中小事業者とは言い難い規模です。


 我が国では中小企業に対し様々なメリットが与えられており、時としてそうした恩恵を受けるために資本金の額を大幅に圧縮するなどして「中小企業化」する大企業が現れています。例えば2015年にはシャープが資本金を1200億円から1億円に減らすことを検討しましたが、批判が高まったことで撤回に追い込まれています。


 こうした国の制度は税金によって賄われているものです。恩恵を受けるべきでない大規模事業者が恩恵を受けている現状を看過することは出来ません。キャッシュレス消費者還元事業の予算には上限が設けられており、上限に達すると「早期終了」の可能性もあるとされています。本来恩恵を受けるべき中小事業者が充分な恩恵を受けることが出来なくなる恐れもあります。


世間の関心が低い


 消費税増税前後はテレビや新聞でも取り上げられていたキャッシュレス消費者還元事業ですが、増税からしばらく経つとマスメディアで取り上げられる機会も減っていると言わざるを得ません。


 また、私の周囲の人の声を聞いても「よく分からない」といった声が多く、認知度は高いものの特に中高年の間では関心が低いと感じます。


 また、電力自由化に限ってみると、例えば当サイトのキャッシュレスポイント還元対象の新電力会社の一覧という記事は検索エンジンで上位に表示されていますが、10月12〜18日の1日あたりの平均PV数は12と、アクセス数が少ない状況が続いています。


対象となる新電力会社が少なすぎる


 当サイトでは300社以上の新電力会社の料金プランを掲載しており、消費税増税にあわせて掲載している全ての電力会社の料金プランを再点検するため、各社の公式サイトを一つ一つチェックしました(2019年9月中旬〜10月14日まで実施) その中でキャッシュレス消費者還元の対象となっている新電力会社は、わずか3社しか見つかりませんでした。


 規模が大きな大手電力会社は軒並み制度の対象外としても、社員数名・資本金数千万円という小規模な新電力会社も多数存在している中で参加企業がわずか3社、また制度の恩恵を受けるべきでない規模の企業が対象となっていることをふまえると、何のための制度なのだろうかと疑問を持たざるを得ません。




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