中央電力の値上げの問題点 | 燃料費調整相当額の上限撤廃

マンション一括受電が契約途中で値上げに


 マンション一括受電大手の中央電力が2022年6月に規約を改定、実質値上げを実施することを発表しました。値上げに至った背景と、値上げを実施することによって生じる問題点を、実際に中央電力の一括受電サービス導入マンションに部屋を所有している私が分かりやすく解説します。



一括受電サービスの規約を変更する中央電力


 まずは値上げの内容を簡単に解説します。


規約変更により実質値上げに


 中央電力は2022年7月1日から一括受電サービスの利用規約を変更することを6月に発表しました。


 利用者にとって最も重要な点は燃料費調整相当額の上限撤廃です。


 電気料金には予め決められた単価によって計算される基本料金と電力量料金に加え、燃料の輸入価格を反映して増減する燃料費調整額という部分があります。東京電力や関西電力など大手電力が採用しているほか、電力自由化で参入した新電力会社(ENEOSでんき、大阪ガスなど)に加え、中央電力でも同様の仕組を採用しています。


燃料費調整単価
2023年1月分
電気代の差
月300kWh
上限あり 上限無し
北海道電力エリア 3.66円/kWh 9.91円/kWh 6.25円/kWh 1875円
東北電力エリア 3.47円/kWh 13.41円/kWh 9.94円/kWh 2982円
東京電力エリア 5.13円/kWh 12.99円/kWh 7.86円/kWh 2358円
中部電力エリア 5.36円/kWh 12.30円/kWh 6.94円/kWh 2082円
北陸電力エリア 1.77円/kWh 9.90円/kWh 8.13円/kWh 2439円
関西電力エリア 2.24円/kWh 10.91円/kWh 8.67円/kWh 2601円
中国電力エリア 3.19円/kWh 15.02円/kWh 11.83円/kWh 3549円
四国電力エリア 2.55円/kWh 11.60円/kWh 9.05円/kWh 2715円
九州電力エリア 1.94円/kWh 8.17円/kWh 6.23円/kWh 1869円
沖縄電力エリア 3.98円/kWh 18.49円/kWh 14.51円/kWh 4353円

 燃料費調整額の計算方法は独自の計算式を採用している電力会社も一部存在しますが、基本的には各地域の大手電力の計算方法に準じたものが大半で、中央電力も同様に大手電力の計算方法に倣った計算式を採用しています。


 この燃料費調整額について、大手電力の従量電灯プランと呼ばれる最もベーシックな料金メニューでは、燃料価格高騰が発生した際に予め決められた「上限額」以上に値上がりしないように設定されています。中央電力についても、大手電力の従量電灯と同様にこれまでは上限額を設けていました。


 しかし今回の利用規約変更により、上限額が撤廃されます。


実質値上げに踏み切った背景


 燃料の輸入価格は2021年下半期から上昇を続けています。2022年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻により一段と値上がりしています。


 財務省貿易統計速報によると、2022年4月の日本平均LNG輸入価格は15.70米ドルでした。2021年同月は7.72米ドルだったので実に2倍以上に値上がりしています。それに加え、為替レートも2021年4月の109.13円/米ドルから22年4月には126.22円/米ドルと急速な円安が進行しており、日本が輸入するエネルギーの価格はわずか1年で2倍以上に値上がりしています。


関西電力の燃料費調整額上限ありと無しの価格比較

関西電力の燃料費調整額上限ありと無しの価格比較

 エネルギー価格高騰を受け、関西や北陸では大手電力が定めた燃料費調整額の上限額に既に到達しています。2022年6月時点で上限に達していない東京電力エリアについても、9月には上限に達すると予想されている状況です。


 電力会社にとって、燃料費調整額に上限額があることで収益の減少に繋がります。中央電力だけでなく、大手電力でも例えば九州電力が燃料費調整額を一部プランで撤廃、新電力各社も上限額の撤廃を次々と発表している状況です。




中央電力の値上げの問題点


 私は新電力各社が燃料費調整額の上限額を撤廃することは「仕方ない」と考えていますが、マンション一括受電業者である中央電力による上限額の撤廃には以下で指摘する問題点があると考えています。


10年以上の長期契約が前提のサービスである


 マンション一括受電は通常、10年以上の長期契約が前提です。「お客様都合」による解約の場合、1000円×残存月数×戸数の違約金が発生すると中央電力の提案資料に記載されています。


 10年という長い期間に及ぶ契約であるにもかかわらず、契約後に後から契約内容が変更されてしまう、というのは問題があるのではないでしょうか。


提案時の内容との間で齟齬が生じる可能性


 私は中央電力の一括受電サービスを導入しているマンションに部屋を所有しています。一括受電を導入する際に中央電力から入居者・区分所有者に配布された資料には以下のように記載されています。


当時配布された資料

当時配布された資料

 専有分の個別電気料金は東京電力と同一の単価、算出方法にて請求処理(料金の変更無し)


 東京電力で最も標準的な従量電灯プランには燃料費調整額の上限額がある一方、電力小売自由化後の新しいプランの中には上限額の設定が無いものがあります。ですが当マンションで一括受電が導入された2010年代前半にはまだ電力小売完全自由化は行われておらず、この資料にある「東京電力と同一の単価、算出方法」とは現在の東京電力エナジーパートナーが提供している「従量電灯B/C」を指していると考えるのが妥当ではないでしょうか。


 「東京電力と同じ」と言われて一括受電の導入に同意したにもかかわらず、契約期間途中でその前提を変更されてしまう点で問題があると思います。


利用者は他社への切り替えが原則出来ない


 一括受電導入マンションでは原則として東京電力など大手電力を含め他の電力会社への契約変更が出来ません。他社に切り替えるにはまずマンションの管理組合などで中央電力の一括受電サービスを解約することを決議し、一括受電サービスの契約を解除する必要があります。


 導入するにも一苦労ある一括受電サービスですが、解約する際の合意形成にも導入時と同様に少なくない労力を必要とします。ちなみに、当マンションでは我が家が所有している部屋の入居者(とある銀行の借り上げ社宅)が一括受電の導入に反対したことで導入が一時ストップしたという経緯があります。


 実質的に他社への切り替えが制限されている中で、利用者にとって不利益となりうる形で利用規約を途中で変更することには問題があると考えます。




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