発電所併設のデータセンターのメリット・デメリット | 再エネ賦課金を押し上げる?

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世界で増加する発電所併設データセンターのメリット・デメリット


 世界的に盛り上がりを見せる発電所併設のデータセンター。日本国内でも計画が進んでいますが、そのメリット・デメリットを解説します。



データセンター併設発電所が世界の潮流に


データセンターのイメージ


 生成AIの爆発的な普及に伴い、世界的に増設が加速するデータセンター。そのデータセンターを発電所に併設する動きも併せて活発化しています。


 米国の大手IT企業では再生可能エネルギーに加え、発電時にCO2を排出しない原子力発電を活用する動きも活発化しており、既存の原子力発電所から電力を調達する契約を結ぶだけでなくデータセンターと小型の原子力発電所をセットで開発する計画も進行しています。


 日本でもデータセンター大手のさくらインターネット(当サイトも同社のサーバーを利用しています)が国内発電最大手のJERAと提携し、東京湾岸の火力発電所内にデータセンターを設置する計画を明らかにしています。また政府はデータセンターの首都圏・京阪神への偏在を解消するため、地方の発電所周辺にデータセンターの集積を促す計画案を公表しています。


 膨大な電力を消費するデータセンターと、電力をつくる発電所をセットで新設する方向性は日本を含め、世界の潮流と言えます。そのメリット・デメリットを解説します。


データセンターに発電所を併設するメリット


 データセンターと発電所を「併設」するメリットを解説します。


電気代を大幅に削減できる


 発電所にデータセンターを併設することで、電気代を大幅に削減することが出来ます。データセンターの運営コストの内、50%前後が電気代とされており電気代の削減はデータセンターの運営コスト削減に直結します。


 データセンターと発電所を一箇所に設置しても電気代削減に繋がるイメージは無いと思いますが、国内では以下の2つの要因により電気代を削減することができます。



 一般家庭も含め、電気を電力会社から供給を受けるには通常、電力会社(送配電会社)が持つ送配電網を経由する必要があります。送配電網を利用するには「託送料金」という費用を負担する必要があります。いわば電気の「送料」です。


 発電所構内にデータセンターを設置した場合、電力会社がもつ送配電網を利用しません。そのため託送料金が発生しない場合があります。データセンターで利用される特別高圧契約では約1円/kWhの削減になります。


 加えて、日本で電力会社から購入した電気を使用すると1kWhあたり約4円(2025年度)の再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)をユーザーが負担する必要があります。再生可能エネルギーの導入を促進するために徴収されている費用です。


 再エネ賦課金は送配電網を通じて、電力会社から電気を購入した際に発生します。ですが自家発電などではこの再エネ賦課金が発生しません。


 特別高圧の電気代は通常、1kWhあたり25円程度(再エネ賦課金・燃料費調整単価込)ですが、上記2つの要因により約5円/kWhも圧縮できる可能性があります。データセンターの運営コストを大幅に圧縮できるというわけです。


送電ロスが最小限


送電線


 データセンターを発電所に併設する場合、発電機からデータセンターまでの距離はせいぜい数百メートルです。長い距離を送電する必要がありません。


 発電所から実際に電気を使用するユーザーまで直線距離で数百キロを超える距離を送電することも珍しくありません。長距離を送電することで、ロスが拡大する傾向があります。このような「送電ロス」は特別高圧の場合1%以上にのぼります。


 発電所にデータセンターを併設することで、このような送電ロスを削減しCO2排出量の削減に貢献できる可能性があります。


発電所の廃熱を利用できる可能性


 火力発電所や原子力発電所では膨大な熱が発生します。火力・原子力発電所では熱で蒸気をつくり、その力で発電機を回し電気を生み出しています。ですが火力発電所では燃やした燃料が持つエネルギーの約半分程度しか電気エネルギーに変換することが出来ません。残りは廃熱として空気中や海に捨てられています。


 一部ではこの廃熱を近隣にある工場で利用したり、発電所内に設置したイチゴのハウス栽培向けに供給(東京ストロベリーパーク)するなどして利用されています。


 データセンターではサーバーの冷却のため、エアコンを始めとした冷却設備が使われています。データセンターで使用される電力の4割以上がエアコンを含めた設備冷却用に消費されているとの試算もあります。高温の廃熱は吸収式冷凍機を利用することで冷房に活用することが出来るので、発電所に近接してデータセンターを設置することで廃熱を利用した冷房を導入しやすくなり、消費電力を抑制できる可能性があります。




データセンターに発電所を併設するデメリット


 主に社会的な側面から見たデメリットや問題点を指摘します。


電源が占有される恐れ


 データセンターが発電所に併設されることで、発電された電力が長期にわたりデータセンターに占有されます。データセンターの新設に併せて発電所も新設されるケースであればそれほど大きな問題にはなりませんが、既存の発電所が新たにデータセンターを併設されるケースが増えることで他のユーザーがアクセスできる電力が減少する可能性があります。


 発電所に併設されたデータセンターがその発電所の電力を占有することで、他のユーザーに電気が行き渡らなくなる恐れがあります。具体的には卸電力市場への供給が減少し、取引量が減少することで電力取引価格の価格安定性が損なわれる事態も想定できます。


託送料金を押し上げるリスク


 太陽光発電の低圧分割のように自身で負担すべきコストを社会に転嫁するわけではないため非難は控えるべきですが、データセンターが発電所に併設されることで託送料金を押し上げ、他のユーザーの電気料金をわずかに引き上げる効果が生じる可能性があります。


 膨大な電力を消費するデータセンターが送配電網を利用することで、送配電網の利用率が引き上がります。データセンターを送配電網の中で上手く配置することで、送配電網の利用効率が向上する効果が期待できます。発電所に併設した場合はその効果が期待できません。


 一方、データセンターのために多額の託送料金が投じられ、送配電網が強化されている側面もあります。例えば千葉県印西市ではデータセンターの増設が相次ぎ、印西市だけで山梨県の2倍の電力需要が生まれています。この電力需要を支えるため、超高圧変電所の新設や送電線の強化などに巨額の費用が投じられています。発電所併設型はこのような出費を抑制できる面もあり、今後定量的な分析が行われることを期待したいです。


再エネ賦課金を押し上げるリスク


 再生可能エネルギーの導入促進のために家庭から大企業まで一律の単価で負担している再生可能エネルギー発電促進賦課金を押し上げることが懸念されます。


 再エネ賦課金は固定価格買取制度を利用して売電される電力を買取るための費用に当てられています。電力会社から送電網を利用して電気を購入すると、家庭もデータセンターも同一の単価を負担します。


 データセンターが発電所に併設された場合、固定価格買取制度により買い取られる再エネ電力の量にほぼ影響はありません。しかし再エネ賦課金の支払い負担が発生する電力使用量が減少します。再エネ賦課金を負担するユーザーが減少することを意味するため、残ったユーザーの負担が大きくなることは避けられません。


 このような背景をふまえると、データセンターを発電所に併設する場合は省エネ要件を厳しく設定するなど制度上の制約を厳しくすることが妥当ではないでしょうか。事業者の採算性を大きく損なわない範囲で、例えば発電所の廃熱を利用した冷房設備の導入を義務付けるなどの制約を設けるべきです。




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