生成AIの普及で電力需要が大幅増加する理由を分かりやすく解説

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生成AIの普及が電力不足の懸念を高める?


 ChatGPTに代表される生成AI。実は生成AIの普及が電力需要を大幅に押上げ、日本でも電力不足の懸念を高めているとの指摘があります。生成AIがなぜ電力不足に繋がるのか、解説します。



電気を大量に使うAI


 生成AIは電力使用量が大きいです。


検索の10倍の電気を使うChatGPT


 生成AIの代表格として日本でも知られているChatGPTは、既に多くの人が使用したことがあると思います。文章や音声で指示を与えると、それに対する回答を文章で生成して答えてくれる便利なAIです。私もこのサイトを作るために、簡単なプログラミングやデザインの修正案を出してもらったりしています。


 ChatGPTはGooogle検索の代わりに使用している人も多いと思いますが、Google検索と比較してChatGPTの1回あたりの電気使用量は約10倍と言われています(朝日新聞 2024年6月9日)


電気使用量
(検索・質問1回あたり
Google検索 0.3Wh
ChatGPT 2.9Wh

 生成AIは高度な情報処理を経て情報の生成を行うため、電気の使用量が大きくなる傾向があります。2.9Whと言われてもイメージしづらいと思いますが、だいたいChatGPTで毎日3333回質問をすると一般家庭の1日分の電気使用量と同じくらいになります。


コンテンツ生成がより身近に


 生成AIはChatGPTのような文章を主に生成するものだけではなく、様々なものが登場しています。例えば写真から動画を生成するものや、文章による指示から動画を生成するものなどがあります。


AIで生成した風力発電所


 上の画像は文章から画像を生成するAIで作られた、真冬の風力発電所をイメージした画像です。文章で指示を書き、生成ボタンを押すだけでこのような画像が5秒前後で作ることが出来ます。


 画像や映像、音声を生成するAIはChatGPTのように文章を生成するものよりも、更に電力使用量が多いとみられます。


 また、インテルの最新型CPU「Core Ultra」は生成AI対応を謳い、パソコン上で生成AIの処理を行う性能を向上させていることをアピールしています。ChatGPTのように外部のサーバー上でデータ処理を行うだけでなく、家庭やオフィスでの電力需要も押し上げる可能性があります。


日本でも電力需要の増加が見込まれる


 生成AIの普及は、日本のエネルギー政策にも大きな影響を与えます。


減っていくはずの電力需要が増加へ


 日本ではこれまで、電力の使用量が長期的に減少あるいは横ばいになる見通しが一般的でした。国のエネルギー政策も電気使用量が減少していくことを前提として策定されてきました。


 しかし、生成AIを含むデータセンターによる電力需要がこの想定を根本から覆しました。2024年春に電力広域的運営推進機関がとりまとめた長期推計では、これまで減少ないし横ばいとなる見通しだった日本の電力需要が、2033年度に現在より4%増える見通しとなりました。


 高齢化や省エネ化により減少傾向にあった、これからも減少が続いていくと見られていた電力需要が、生成AIを含むデータセンターや、半導体工場の建設により増加に転じるという「方向転換」が発生しました。


電力不足のリスクも高まる


 電力需要が減少していく見通しや脱炭素化の影響を受けて、日本では特に過去10年のあいだ発電所の新設・増設が活発とは言えない状況が続いていました。むしろ、老朽化した石油火力発電所や、CO2排出量が多い石炭火力発電所の廃止・休止が相次いで決定していました。


 電力の需給はというと、真夏や真冬の需要期に逼迫が度々みられるなど、余裕があるとは言えない状況です。この記事を執筆している2024年7月9日の東京電力管内の使用率は最大94%と、厳しい状況です。


 このような状況で需要が1、2%でも増加すれば、需給はたちまち深刻な状況になると言えます。




電力需要増加に対応するために出来ることは


 電力需要増加に対応するために、やるべきことはなにか。選択肢を紹介します。


原子力発電所の稼働


柏崎刈羽原子力発電所

柏崎刈羽原子力発電所

 2011年に起きた甚大な原子力発電所事故により、今も数万人を超える人々が故郷に戻ることが出来ていません。事故を受けて、一時は日本中の原子力発電所が稼働を停止しました。


 この甚大な事故を受けて、二度と同じ失敗を繰り返さないことを誓って作られた原子力発電所の新たな安全基準に適合した原子力発電所が、西日本では続々と「再稼働」しています。一方、2024年7月現在において東日本で稼働している原子力発電所は1基もありません(秋に女川原子力発電所が再稼働を予定)


 安全基準を緩めるべきではないと思いますが、一方でこの厳格な安全基準(電力業界の一部からは「厳しすぎる」との声もある)に適合しながらも、再稼働に至っていない原子力発電所も存在しています。審査に適合した原子力発電所を順次再稼働させていくことで、電力需給の緩和に大きく貢献します。


データセンターへの発電設備の導入


 データセンターへの発電設備の導入も一つのアイデアです。


 最も現実的なのは太陽光発電です。データセンターの広大な屋根の上に太陽光発電パネルを敷き詰めることで、自家発電を行い電力会社から購入する電気の量を減らすことが出来ます。データセンターは稼働が増え、気温も高くなる昼間に電気の使用量が増える傾向があります。太陽光発電は太陽が出ている間に発電するため、気温が高くなる時間帯に空調により電気使用量が増えるデータセンターと相性が良いでしょう。


電気自動車などの充電インフラの活用も


電気自動車


 電気自動車には大容量の蓄電池が搭載されています。この蓄電池を電力需給の調整に使う取り組みが進められています。


 電力需要が少なく、需給が緩い時間帯に電気自動車に充電をし、需給がタイトになる時間帯に送電網に放電することで需給の調整を行うものです。制御は自動で行うため、ユーザーはケーブルを電気自動車に挿しておくだけです。


 仮に今後約10年で電力需要が4%増加、発電能力は一定だったとしても、このような仕組みをフル活用することで需給逼迫を避けることが出来ます。需要が増えても深夜帯は余裕があるため、深夜に貯めた電力を必要な時に放電することで需給緩和に貢献します。しかし電気自動車の普及が緩やかであること、また放電にはV2Hという高価な設備を必要とするため、これだけで将来の電力不足を乗り切るのは難しいでしょう。




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