災害発生時に新電力は何もしない、という批判への反論

新電力は何もしないのか、という批判への反論


 地震や台風など、大災害により大規模停電が発生するたびに一部で聞かれるのが「新電力は何もしないのか」「ずるいじゃないか」という批判です。しかし、そうした批判の裏には電力自由化という制度が正しく理解されていない現状があるため、この記事で正確な情報を紹介します。



「何もしない」という批判の数々


 まずは実際にSNS上で聞かれる新電力への批判を紹介します。


関西の台風21号の底泥復旧、北海道、災害時に総力あげるのは電力9社。再エネ、新電力業者は何も追わない。電力自由化は制限かける時期

引用元:Twitter @kira77_island(2018年9月5日20時9分)

関電より安いよとか普段広告している新電力会社はいったい何かしてるんやろか?と思うのは俺だけ?災害の時になーんもできない電力会社は意味ないやんけ。関電の経営基盤を護るのが、結局は俺たちの生活を護ることに繋がるのではなかろうか。

引用元:Twitter @hiroto12346(2018年9月5日17時56分)

北電頑張れ。電力自由化でちょびっと安い程度で新規参入会社に切り替えた人は電力インフラを高コストで維持しなきゃならない大手の経営を圧迫してると自覚すべき。いざというとき新電力なんて何も対応できないよね。元々専門家じゃないんだし。

引用元:Twitter @yw_football_jp(2018年9月5日16時04分)

 大手電力会社による不眠不休の復旧活動は称賛されるべきことですし、その一方で新電力が「何もしていない」ということで批判したくなる気持ちも分かります。


 しかし、電力自由化の制度を正しく理解すると、新電力を批判することが必ずしも正しいことではないということが納得出来るはずです。以下で詳しく解説していきます。


電力自由化を正しく理解しよう


送配電は自由化されていない


 まず世間であまり知られていないのは、電気を各家庭にまで届ける「送配電部門」の扱いです。


 電力の小売(販売)や電気つくる発電は自由化されていますが、電気を届ける送配電については自由化されておらず、各地域に1社の独占企業がその責任を担っています。


送電網は今後も一社独占


 制度上、新電力が各家庭に電気を届けるには送配電会社の電線を借り、「託送料金」とよばれる使用料金を支払う必要があります。


 新電力は送配電に「手出しできない」のは制度上きまっていることです。


災害発生時に必要なのは送電の復旧


 地震や台風などによる大規模停電は、主に送配電の支障によって発生します。電線が切れることで電気を届けるルートが寸断されて停電が起こります(北海道胆振東部地震では供給する電力が不足したことも停電の要因)


 法律によって送配電事業を営むことの出来ない新電力(小売会社)は、当然復旧に必要な設備や人員、ノウハウを一切持っていません。新電力も復旧に協力せよ、と言うのは家の水道が壊れた時にガス屋さんを呼べと言うようなものです。


復旧支援は主に送配電部門の役割


 大規模停電が発生すると、全国の大手電力会社が停電発生地域に人員や「電源車」を送り込みます。そうした全国的な支援に感動を覚える人は少なくないでしょう。


電源車は送配電部門のもの

北陸電力の電源車(Wikipedia Hirorinmasaより引用)

 こうした復旧支援に派遣されるのは、大手電力会社の中でも主に送配電部門に属する人たちです。例えば北海道胆振東部地震では「東京電力」から社員44人と電源車10台が派遣されていますが、この方々が所属しておられるのは東京電力パワーグリッド株式会社という「送配電を管理する会社」です。電気を売っている東京電力エナジーパートナーとは別会社です。


 こうした活動を支えているのは、東電エリアに住む全ての人が等しく負担している「託送料金」です。送配電に掛かる人件費などの経費はすべて託送料金の計算に組み込まれており、内容を精査した上で経産省が認可しています。


 託送料金は東電であろうが新電力であろうが、全く同額の料金を送配電会社に支払っています。東電の電気(東京電力エナジーパートナー)を使っているからといって、より負担が大きいということはありません。


今後も全国的な支援を維持するために


 災害時の全国的な連携を今後も維持していくためにすべきことはコレです。


託送料金の審査で優遇する


 電源車などの非常用の設備は、利用機会が多いものではありません。そうした平時には「無駄」な設備についても、託送料金の算定時に必要経費として十分に認めた上で認可を与える必要があります。間違っても「無駄だ」と言って必要以上に削らせるようなことをしてはいけません。


 人員についても、平時にある程度余裕が無いと非常時の対応が難しくなります。託送料金の引き下げはそのままダイレクトに電気料金の値下げに繋がりますが、国民全体で等しく負担するコストとしてある程度余裕を持たせて算定することが必要でしょう。


 まとめると、託送料金の認可をする経産省が必要以上に送配電の「原価」を削減させないようにすることが、今後の災害発生時の復旧には大事なことです。


新電力の災害復旧支援の実績


 最後に、「何もしていない」と批判される新電力が過去に行った災害時の対応を紹介して終わります。


会社名 災害 支援内容
北海道ガス 北海道胆振
東部地震
新設の火力発電所を
1ヶ月前倒しで稼働
道内に電力を供給
熊本電力 熊本地震 社会福祉法人や病院、役場に
大量の支援物資を提供
Looop 東日本大震災 被災地で太陽光パネル設置の
ボランティア活動

 「電力会社」の支援とは全く異なる性質ではありますが、被災された方のために活動している新電力があることをぜひ知ってほしいです。




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