電力会社の訪問販売が来たときに注意すべき3つのポイント

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電力会社の訪問販売が来たときの注意点


 電力自由化で参入した新電力会社の中には、訪問販売を積極的に行っているところがあります。しかし、トラブルが多発し、行政処分や逮捕に至ったケースも既に出ています。こうした訪問販売で被害に遭わないための注意点を電力自由化の専門家の立場から解説します。



電力会社の訪問販売とは?


 まずは電力会社による訪問販売の実態を簡単に説明します。


電力自由化で参入した会社の営業活動です


 2016年から一般家庭や個人商店などでも利用する電力会社を自分で自由に選べるようになりました。電力会社として新規参入した会社は既に600社を超えています(家庭に電気を供給していない会社も含む)


 そうした新規参入の会社の中には、訪問販売で電気の契約を獲得しているところもあります。何かの「名簿」など個人情報を頼りにピンポイントで尋ねたり、あるいは当てずっぽうに特定の地域の住宅や商店をしらみつぶしに回って営業を行っています。


 なお、電力会社として登録を受けた会社自身がそうした訪問販売を行っている例に加え、「代理店」として電力会社と契約した別会社が訪問販売を行っているケースも多いです。


訪問販売員は一軒一軒のインターホンを押してまわる


トラブルが多発し行政処分も行われた


 電気の訪問販売をめぐっては、トラブルが多発しています。関連する企業が行政処分を受けたり、あるいは関係者が逮捕される事件も発生しています。


 例えば2019年5月には、エレトス電気の代理店の関係者らが京都府警に逮捕されました。
 この事件では、エレトスの代理店が自社を関西電力だと誤解されるような営業トークで訪問販売を行い、契約を獲得したことが法律違反とみなされました。この代理店を通じて7千件の契約獲得があったそうです。


北陸電力の注意喚起

北陸電力による注意喚起

 また、2019年4月には消費者庁があくび電気に対し、業務停止命令を出しました。
 同社もエレトス社の代理店と同様に、自社が大手電力会社だと誤認させるような勧誘を行ったことや、「電気代が5%安くなる」と嘘の勧誘を行ったことなどが問題視されました。




訪問販売が来た時に絶対にやってはいけないこと


 実際に発生したトラブルをふまえて、訪問販売が来た時に「絶対にやってはいけないこと」を3つ紹介します。


電気の検針票などを見せてはいけない


電気の検針票は訪問販売員に見せてはいけない

電気の検針票

 京都府警に逮捕されたエレトス社の代理店は、訪問販売の際にお客さんから見せられた電気の「検針票」に記載された情報をもとに、勝手に電気の契約を切り替えていたことも明らかとなっています。契約する意思が無い人にも契約を結ばせていました。


 電力自由化のシステム上、電気の検針票に記載され供給地点特定番号やお客様番号などの情報が分かれば、契約手続きを進めることが可能です。


 これらの情報は検針票や請求書に記載されているので、訪問販売員には見せないようにしましょう。


料金シミュレーションを鵜呑みにしてはいけない


 訪問販売では電気料金の安さをアピールすることが多いです。ですがその試算の内容が必ずしも事実でない場合もあります。実際にあくび電気は「5%安くなる」と勧誘していましたが、手数料などを含めると大手電力会社よりも割高な料金プランでした。


 毎月発生する手数料を計算に含めていなかったり、あるいは試算方法がおかしい場合もあります。


 また、モデルケースとして提示した試算例が、一般家庭では滅多に無いような条件である場合もあります。例えばあくび電気では、月の使用量を3人家族で600kWhとした試算例を提示していましたが、私が政府統計から求めた3人世帯の平均使用量は月391kWhです。600kWhは多すぎます。


あくび電気の試算例

あくび電気の試算例 3人世帯なのに600kWhで試算

その場で契約しない


 契約を急かすような営業トークをする訪問販売業者もいます。
 ですが中には都合の悪い情報を隠している場合もあるので、その場では契約せずに契約書面などをよく確認した上で申し込むことをおすすめします。訪問販売員には一度帰ってもらった方がいいです。


 月々の電気料金だけでなく、毎月発生する手数料はあるのか、契約時に発生する手数料や解約時の手数料や違約金の発生条件などもよく確認してください。


困ったら消費生活センターに相談を


 訪問販売で困ったことがあったら、消費生活センターや国民生活センターに相談してください。電話で「188」にダイヤルすると、お近くのセンターに繋がります。公的機関で、相談料は掛かりません。私も別件で相談したことがありますが、適切なアドバイスをくれます。


クーリング・オフも可能


 訪問販売や電話勧誘で既に契約をしてしまった場合は、クーリング・オフが可能です。


 契約書面を受け取ってから8日以内に、書面などで電力会社に対しクーリング・オフを申し立てることで、申込みの撤回が可能です。クーリング・オフが可能である場合、違約金などの費用は発生せず、無条件で契約を解除できます


 なお、契約書面の交付から8日以上を過ぎている場合や、あるいは自らネットで申し込んだ場合などにはクーリング・オフは利用出来ません。


 クーリング・オフに関する詳しい解説は、東京都の解説サイトを参照してください。


関連サイト 基礎知識「クーリング・オフ」 (東京都)



訪問販売業者の要注意な営業トーク


 国民生活センターの開示資料や、SNSに寄せられた投稿から「要注意」なセールストークを紹介します。


電気代が半額になる


 中には「電気代が半額になる」といった営業トークを行っている訪問販売業者・電話勧誘業者もいるようですが、一般的な電気の使用条件において、大手電力会社の標準プラン(従量電灯)と比較して電気代が半額になることはありません。


 地域や使用条件によって異なりますが、一般家庭ではせいぜい10〜20%の削減が限界です。詳しくは当サイトの料金シミュレーションを参照してください。


 亜種として「基本料金が半額になる」というセールストークもあるようです。電気代は基本料金だけでなく電力量料金(使用量に応じて発生する料金)と合わせて見るべきで、基本料金が半額になるという営業トークは無意味です。


大手電力会社から委託された


大手電力会社の委託先を騙った詐欺


 記事前半でも紹介したように、行政処分や逮捕者が出ている手口です。


 「大手電力会社から委託された」とか、大手電力会社の関連会社であることを匂わせて、実際には無関係の会社が訪問販売を行っている事例が存在します。


 訪問販売や電話勧誘と会話をする際には、必ず相手の社名などを確認してください。不審な点がある場合は、社名を確認した上で大手電力会社に問い合わせて確認してください。


 社名を明かさない勧誘行為は特定商取引法違反の疑いがあります。


スマートメーターへの交換が必要


 2024年までに全世帯が次世代電力計「スマートメーター」に切り替わる予定です。


スマートメーター

次世代型電力計「スマートメーター」

 電力メーターの交換は、稀なケースを除いて費用が発生することは無く、電力会社(送配電を管理している会社)の負担で行われます。基本的には、利用者側で費用は発生しません。


 また、メーター交換にあわせてプランの変更が必要になった、という営業トークもありますが、これは完全に嘘です。メーターを交換しても、従来のプランを使い続けることが出来ます


 スマートメーターへの交換でコストが削減でき、電気代を安く出来るという営業トークを行っているところもありますが、これも完全に嘘です。


 メーターの検針に掛かるコストは、「託送料金」に含まれます。託送料金は全ての電力会社(新電力・大手電力会社)が同じコストを負担しており、スマートメーターの設置の有無によって変わるものではありません。スマートメーターの設置が増えることで、全ての電力会社の電気料金が下がる可能性はありますが、特定の会社だけ下がることはありません。


試算をするから検針票を見せてほしい


電気の検針票は訪問販売員に見せてはいけない

電気の検針票

 記事前半の「注意すべき点」でも紹介したように、検針票に記載された情報をもとに、勝手に契約を切り替えることが出来てしまいます。契約する意思がある場合は別として、検針票は絶対に見せてはいけません。


 料金シミュレーションをしてもらう場合は、以下の5つの情報を口頭で伝えたらOKです。



 これらの情報を伝えても、契約を勝手に切り替えることは出来ないので特に問題はありません※家族構成などを類推することは可能なので防犯上のリスクはあります。


 絶対に伝えてはいけないのは「供給地点特定番号」と「お客様番号」です。料金シミュレーションに全く必要の無い情報です。


 また、出された数字を鵜呑みにしないことも大切です。毎月発生する「手数料」を電気料金に含めず、実際には高くなるのに安くなると見せかけた試算を提示していた訪問販売業者もあります。


訪問販売は高コスト。だから電気代は安くない


 電気に限らず、訪問販売は数十件まわって取れる契約は1件とか、そんな世界です。人件費を1時間2000円としても、1件の契約を取るためにいくらのコストが掛かるのでしょうか。ちなみに、逮捕されたエレトス社の代理店は1件の契約を獲得するごとに7千円の報酬を得ていたそうです。


 訪問販売を行っている電力会社の料金プランは、他の新電力会社と比較してそれほど安くないところばかりです。それどころか、契約事務手数料などを加味すると大手電力会社よりも割高になる業者もあります。電気料金が安い会社はコスト面から訪問販売をすることが出来ません。


 当サイトの電気料金比較シミュレーションでは、訪問販売を行っている業者も含めて450社の料金プランを掲載しているので、こちらも参考にしてください。


電気代が高額になる恐れ。市場連動型プランに注意!


 訪問販売を行っている新電力会社では、市場連動型プランと呼ばれる特殊な料金体系を採用しているところが多いです。


 市場連動型プランは、電力の取引価格に応じて電気料金が変動する料金体系で、2018年頃から採用する新電力会社が増えてきています。


 電力の取引価格によっては電気代が大手電力標準プランの1.5倍あるいは2倍以上になることも珍しくないため、リスクが大きいと言えます。以下は、市場連動型の料金を計算する際に用いられる電力取引価格の月間平均の推移です。


東京エリアプライス
(円/kWh 税抜き)
1月 2月 3月 4月 5月 6月
2020年 8.17円 7.59円 7.48円 6.85円 5.75円 5.57円
2021年 66.53円 8.29円 6.70円 7.05円 6.98円 7.02円
2022年 23.95円 23.36円 30.76円 21.65円 19.50円 25.27円

 2020年の価格推移であれば市場連動型の料金プランは場合によっては「お得」といえますが、2021年1月や、あるいは2022年以降の取引価格では電気代が高くなってしまいます。


 料金プランによって異なりますが、市場連動型の料金プランの料金シミュレーションには変動部分を含めないのが一般的です(事前に予測が出来ないため) なので「電気代が安くなる」と言われて契約したプランが、実は市場連動型で電気代が高額になるというケースが多発しています。


 「電源調達調整費」などの料金項目がある料金プランには最大限警戒してください。末端の販売員では市場連動型プランを正しく理解していないケースもあることが想定出来るので、訪問販売で電力会社を契約する場合は必ずネットなどでその料金プランについて詳しく調べることをおすすめします。




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