【2022年版】電気自動車のCO2排出量を計算してみた
最新のデータに基づき、電気自動車のCO2排出量をハイブリッド車やガソリン車と比較します。
目次
前提条件
比較する上で前提条件を整理します。各メーカーが発表した電費・燃費のデータを引用します。
車種名 | 電費・燃費 |
---|---|
電気自動車 トヨタ小型SUV |
125Wh/Km |
ハイブリッド車 トヨタヤリスクロス HYBRID X 2WD |
30.8Km/L(WLTC) |
ガソリン車 トヨタヤリスクロス X 2WD |
20.2Km/L(WLTC) |
ディーゼル車 マツダCX-3 XD 2WD |
23.2Km/L(WLTC) |
2021年12月に行われたトヨタのバッテリーEV戦略発表会において、今後発売を予定している小型SUVがEVとしては最高峰の電費性能「125Wh/Km」と発表されたので、それを基準に比較します。
なお、その電費性能最高峰の小型SUVの詳細なスペックはまだ公表されていないため、比較対象を同じく「小型SUV」であるC-HRにするかは悩みどころですが、今回はヤリスクロスを選びました。いずれも各車種から燃費性能が最も高いグレードをチョイスしています。
燃料種別のCO2排出量は以下のとおりです(環境省資料より)
燃料種 | CO2排出量 |
---|---|
ガソリン | 2.322Kg-co2/L |
軽油 | 2.619Kg-co2/L |
動力別のCO2排出量比較
比較した結果を発表します。
標準的な条件での比較
電気自動車の充電に使用する電力のCO2排出係数を0.463Kg-co2/kWh(2018年度、国内実績:出典 電気事業連合会)とした場合の計算結果です。
走行時のCO2排出量を比較すると、電気自動車はガソリン車の約半分、またハイブリッド車と比較してもCO2排出量が少ないと言えます。
電力のCO2排出係数を変えてみると・・
電気自動車は充電に使用する電力のCO2排出係数によって、1Km走行あたりのCO2排出量が大きく変動します。電力のCO2排出係数は電力会社、あるいは国によって大きく異なります。
排出係数 (g-co2/kWh) | |
---|---|
電気事業連合会 2018年度 |
463g |
北海道電力 | 601g |
東北電力 | 521g |
東京電力 エナジーパートナー |
441g |
中部電力 ミライズ |
424g |
北陸電力 | 497g |
関西電力 | 318g |
中国電力 | 585g |
四国電力 | 408g |
九州電力 | 370g |
沖縄電力 | 787g |
フランス 2017年 |
60g |
カナダ 2017年 |
140g |
イギリス 2017年 |
220g |
イタリア 2017年 |
340g |
ドイツ 2017年 |
400g |
アメリカ 2017年 |
420g |
中国 2017年 |
640g |
インド 2017年 |
720g |
各国の値は電気事業連合会資料から、大手電力10社の値は環境省資料から2019年度実績を引用しています。上記の値と見比べながら、以下のグラフをご覧ください。
欧州主要各国の平均値では、ハイブリッド車やガソリン車よりも電気自動車の方が圧倒的に有利であることが分かります。また、電力の低炭素化が進んでいない国においてもガソリン車より電気自動車の方が排出量が少ないと言えます。
一方、中国やインドでは電気自動車よりもハイブリッド車の方がCO2排出量が少ないと言える状況です。日本国内でも、北海道電力と沖縄電力の値では電気自動車よりHV車の方が低排出です。
電気自動車のCO2排出量に関する課題
電気自動車のCO2排出量に関しての課題を整理します。
製造・廃棄時のCO2排出量が大きい
電気自動車は製造・廃棄時に発生するCO2排出量が、ガソリン車やハイブリッド車と比べて大幅に大きいとされています。特にバッテリーの製造時のCO2排出が課題となっています。製造・廃棄時のCO2排出量まで含めた「ライフサイクル」全体では電気自動車よりハイブリッド車の方がCO2排出量が少ないとする意見が日本の自動車業界では主流です。
この点に関しては工場のカーボンニュートラル化を進めていくことが鍵となります。トヨタ自動車では2035年までにすべての工場でカーボンニュートラル化達成を目標としており、実現すれば電気自動車がライフサイクル全体で見ても有利となるでしょう。
一層の排出量削減には電力の低炭素化が必須
電気自動車のCO2排出量が「多い」か「少ない」かは、充電に使用する電力のCO2排出量に依存するところが大きいです。
原子力発電や再生可能エネルギーの導入が進む欧州主要各国においては、自動車の脱炭素化を進めていく上でEV化が現時点で明白に「正解」といえますが、その他の国においては現時点でハイブリッド車の方がCO2排出量が少なく済む国も数多く存在します。日本国内においても、北海道電力や沖縄電力のエリアではハイブリッド車の方が排出量が少ないと言えます。
電力インフラというものは数ヶ月数年単位で大きな方向転換が出来るものではありません。「脱炭素」を真剣に考えるのであれば、その時点において各地域の特性に最も適した解決策を取りつつ、電力供給の脱炭素化を進めていくことが求められます。残念ながら、日本は先進国の中でかなり出遅れてしまっているのが実情です。
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