電気自動車が「エコ」と言われている理由
次世代エコカーとして注目を高めつつある電気自動車。その利点として「エコ」が語られることがしばしばありますが、なぜ「エコ」と言われているのか。その理由と背景を解説します。
目次
充電に使用する電力によってCO2排出量が変わる
電気自動車が「エコ」だと言われている背景を紐解いていきます。
走行時のCO2排出量はゼロ、「発電時」が鍵
もはや説明不要ですが、電気自動車は走行時にCO2を排出しません。「ゼロエミッション」と言われています。ですが、充電に使用する電力は発電される際にCO2を排出して作られています。
ガソリン車やディーゼル車の場合、計算上は燃料(ガソリン・軽油)の単位あたりのCO2排出量はどこで給油しても同じであるため、CO2排出量を減らすには「燃費」を改善する必要があります。
電気自動車についても「電費」(1kWhで何Km走れるのか)を改善することがCO2排出量削減に貢献することは言うまでもないことですが、それに加えて充電に使用する電力のCO2排出量(排出係数)が電気自動車の「CO2排出量」を大きく左右します。
発電時のCO2発生をゼロとすることは不可能ではないため、その点で電気自動車はCO2排出量削減への貢献が期待されています。
現状で電気自動車はエコなのか?
では、現状で電気自動車は「エコ」なのか。詳しい計算は以下の記事で紹介していますが、日本国内においてはプリウスなどのハイブリッド車よりも排出量が少なくなる地域もあれば、電気自動車の方が排出量が多くなってしまう地域もあるというのが実情です。
電力会社によってCO2排出量は大きく異なります。大手電力10社を比較しても最少の関西電力が1kWhあたり418gを排出しているのに対し、最大の沖縄電力は769g、北海道電力は656gなど大きな差があります(いずれも2018年度実績)
現時点において、ハイブリッド車と比較して必ずしもCO2排出量を削減出来るわけではないが、削減出来る場合もある、というのが電気自動車です。
量産電気自動車が登場した頃と現在の違い
世界初の量産電気自動車とされる三菱のアイミーブが日本国内で発売されたのが2009年、続いて日産リーフが発売されたのが2010年です。実はこの2009年と、2020年とでは日本の電力事情が大きく異なります。
福島第一原発事故により発生した甚大な原子力災害を契機に、2011年以降の日本では原発が相次いで稼働を停止しています。原発は発電時にCO2を排出しないとされているため、原発停止により日本の電力のCO2排出量が増加しています。
社名 | 2009年度 | 2018年度 |
---|---|---|
北海道電力 | 423g | 656g |
東北電力 | 322g | 523g |
東京電力 | 324g | 462g |
中部電力 | 417g | 472g |
北陸電力 | 309g | 574g |
関西電力 | 265g | 418g |
中国電力 | 496g | 636g |
四国電力 | 356g | 535g |
九州電力 | 348g | 463g |
沖縄電力 | 931g | 769g |
10社平均 | 419.1g | 550.8g |
2018年度実績は記事執筆時点の最新値
沖縄電力を除く9社が、CO2排出量を大幅に増やしています。この変化により、電気自動車のCO2排出量はこのように変化しています(電費を5kWh/kmとして計算)
ガソリン車の 燃費に換算 | |
---|---|
2018年度 | 21.07Km/L |
2009年度 | 27.70Km/L |
2018年の電力で充電した電気自動車は、ガソリン車換算で21.07Km/LのCO2を排出します。プリウスの最新モデル(ZVW51)の平均実燃費は24.99Km/L(e燃費より)なので、全国平均で見るとプリウスの方がエコと言えるでしょう。
電気自動車が「究極の」エコカーになるためには
電気自動車が究極のエコカーとなるために何をすべきか、やるべきことがあります。
発電時のCO2排出量を日本全体でゼロにする
これまで説明を繰り返したように、電気自動車のCO2排出量は充電に使用する電力がもつCO2排出量に大きく左右されます。CO2排出量ゼロの電力で充電した電気自動車は、完全なるゼロエミッション(排出量ゼロ)と言えます。
既に大手電力・新電力からCO2排出量をゼロとした料金メニューが多数登場していますし、あるいは日本全体でも発電時のCO2を削減するため旧型の石炭火力発電所の急廃止や、再生可能エネルギーの導入拡大が進められています。
そう遠くない将来、全てのエンジン車・ハイブリッド車よりも電気自動車の方が「低排出」を実現する可能性は小さくないと言えます。
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