電気自動車が普及するメリットを考えてみる

電気自動車が普及する「メリット」は?


 今後急速な普及が見込まれる電気自動車。購入検討者に対してではなく、社会にとってどのようなメリットがあるのかを整理してみたいと思います。



電力面でのメリット


 まずは電力供給の面で考えられるメリットを整理します。


電気代が安くなる?


 意外かもしれませんが、電気自動車が普及することで、電気料金が安くなる可能性があります。


 電気の「需要」は一日の中でも大きく変動します。例えば人々が寝静まっている深夜は需要が少ないです。


需要に伴って大きく動く電気の取引価格

需要に伴って大きく動く電気の取引価格

 電気自動車が普及することで、こうした需給の変動を小さくする効果が期待できます。搭載している大容量の蓄電池を利用することで、深夜の需要を増やしたり、あるいは「VPP」や「V2H」という仕組みを利用することで供給が不足している時間帯に電気自動車から電気を供給することが可能です。
 需給の変動が緩やかになることで、設備の利用効率が高まり、電気料金の引き下げ効果が期待できると考えます。


 資源エネルギー庁の資料によれば、2013年の東京電力管内の電力需要のピーク1%(年間で88時間)を削減できた場合、384万kW分の発電設備が不要になると試算されています。ピーク時にそなえて温存されている老朽化した石油火力発電所(発電コストがとても高い)などを削減できる可能性があります。


資源エネルギー庁ホームページより

資源エネルギー庁ホームページより

再生可能エネルギーの有効活用に貢献


 日本では2011年以降、急激に太陽光発電所が増えたことにより、一部地域では「発電し過ぎ」が問題となっています。


 特に深刻なのが九州電力エリアで、需要が少なくなりがちな春や秋の休日は太陽光発電の電気を送電線に流すのをやめてもらう「出力制御」を毎週のようにおこなっています。せっかく作られたクリーンな電気を有効活用出来ていません。


 電気自動車の蓄電池を活用することで、再生可能エネルギーによる発電が「増えすぎた」時の対策とすることが可能です。例えば出力制御を実施せざるを得ないタイミングで「VPP」のシステムを通じて電気自動車の充電を遠隔操作で指示するなどの方法が検討されています。


 また、茨城県などでは送電線の空き容量の問題から、メガソーラー発電所の新規建設が難しくなっています。再エネの発電所は人口が少ない地域(=電力需要が少ない)に多く存在するため、需要が大きい大都市まで送電線で運ぶ必要がありますが、その送電線に空きが無い状況があります。
 発電量が多い時間帯に地域の電気自動車に電気を貯めることで、再エネの新規導入を増やす余地をわずかながら拡大する効果も期待出来るでしょう。抜本的な解決には送電線の増設が不可欠ですが。


送電線の空き容量が不足している


非常用電源としての活用


 電気自動車が搭載している蓄電池は、家庭用の据え置きの蓄電池よりも大容量です。非常時に電源として活用することも可能です。


 車両に装備したコンセントから電源を取ることが出来るほか、専用の設備が必要となりますが「V2H(Vehicle to Home)」という設備を導入すれば、電気自動車の電池を家全体の電力供給源として使うことも出来ます。


電気自動車で再エネの有効活用




環境・エコ


 「エコ」なイメージが定着している電気自動車ですが、具体的にどのような点がエコなのか解説します。


CO2排出量の抑制


 電気自動車はCO2排出量が少ないという「イメージ」がありますが、2019年現在の日本の電力事情においては、電気自動車のCO2排出量はプリウスなどのハイブリッド車と同等であるため、現状では排出量を大きく削減する効果は無いと言えます。


 とはいえ、充電に利用する電気を発電する際に使用するCO2排出量が減少すれば、電気自動車のCO2排出量も比例して減少します。仮に再生可能エネルギー100%の電気で充電すれば、排出量はゼロとなります。


 2018年に日本でつくられた電気の約8割は火力発電ですが、再生可能エネルギーの割合は年々高まっており、2017年の16.4%から2019年には17.4%に増加しています(環境エネルギー政策研究所調べ) 再エネの導入増加や原発の再稼働、あるいは火力発電所の高効率化により電気自動車のCO2排出量を削減できる余地は大きいです。


日産リーフの給電口


公害の減少


 まちなかを縦横無尽に走り回ることが出来る自動車。ですが人が暮らす場所で有害物質を含む排気ガスを出してしまうことで、公害が発生します。


 電気自動車は「走行時に」CO2や有害物質を排出しません。発電所では排出するわけですが、発電所は人家から離れた工業地域に立地しているため、その点では公害が減少する効果が期待できます。


 実際、自然環境保護を目的としてマイカーの乗り入れを規制している場所で、電気自動車や燃料電池車の乗り入れを例外的に許可している例もあります(富士スバルラインなど)




社会的なメリット


 見落としがちな社会的なメリットを考えてみました。


幹線道路沿いの地価の上昇


 自動車の走行によってもたらされる排気ガスや騒音、振動といった問題により、幹線道路沿いの地価に悪影響がある場合があります。


 電気自動車はエンジン音は全くしませんし、排気ガスも排出しません。電気自動車が増えることで、幹線道路沿いの住環境が改善し、地価の上昇などの経済効果が発生する可能性が考えられます。


電気自動車は公害対策になる


給油難民の解消


 地方に行くと、最寄りの給油所まで片道30分以上掛かる例もあります。給油自体は数分で完了しますが、給油のための余計な所要時間が掛かる場合もあります。電気自動車は自宅のコンセントからも充電が可能であるため、日常的にガソリンスタンドに立ち寄る必要がありません。


 1994年には全国に6万店あったガソリンスタンドですが、2016年には半減しており急速に減少しています。経産省ではスタンドの数が3箇所以下の自治体を「給油所過疎地」と定義していますが、その数は全国に302市町村(2016年度末)にものぼります。


ガソリンスタンド


 ガソリンスタンドは自動車整備の身近な拠点でもあるため、電気自動車にとっても必要な施設です(タイヤ交換などはガソリンスタンドでも出来る) また、ガソリン車が完全に無くなるのは遠い将来の話です。ガソリンスタンドは今後も社会にとって必要なインフラの一つであると言えますが、既にそれが無くなって困っている人にとっては、電気自動車が解決手段の一つとなるでしょう。




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