月極駐車場に電気自動車の充電設備の導入が進まない理由

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月極駐車場に充電器を設置するのが難しい理由


 電気自動車の普及にあたって「壁」となるのが月極駐車場への充電器の導入です。しかしこれには様々な課題があります。不動産賃貸業を営み月極駐車場を経営する立場から解説します。



月極駐車場に充電器が導入されない原因


 導入が進んでいない、今後も進みにくいと言える理由を紹介します。


充電器の設置費用が掛かる


電気自動車の充電器


 月極駐車場の賃料は月に数万円前後というのが一般的です。それに対し電気自動車の充電設備の導入には1台あたり約10万円程度と言われています。


 10万円程度というのは一般家庭に普通充電器を設置する場合の「相場」なので、例えば電力線が一切通っていない月極駐車場に設置する場合には、引込柱を立てるなど諸々の電気工事などで更に費用が掛かるでしょう。


 月極駐車場は初期投資と管理の手間が少ない点が賃貸住宅経営などと比べてメリットですが、充電設備を導入することで初期投資が増えますし、そもそも導入を検討するなど手間を掛けるのを嫌がるオーナーが少なくないでしょう。


 また、契約者自らの負担で充電設備を設置する場合も、契約終了時の残置物(充電設備)の撤去など諸々の問題を考えると、オーナー側としては応じにくいです。


電気代の徴収方法が確立していない


 オーナーが充電設備用の電力を契約して電気代を支払った場合、契約者から電気代を徴収する必要があります。毎月請求書を作成・送付し、支払いを確認(未払いの場合は督促も)する作業はオーナーにとって大きな手間となります。月数万円の賃料に対して「割りに合わない」と感じます。


日産リーフ


 また、賃料に電気代を上乗せするとしても、車の利用頻度は利用者によって様々なので、算定が非常に難しいという問題もあります。


 契約者自ら電気を契約し、各自で電気代を支払ってもらうのが解決策と言えるでしょうか。


現段階では電動車が普及していない


 2020年時点の日本において、充電器を必要とする電気自動車やプラグインハイブリッド車の普及率は非常に低いです。費用と手間をかけて充電設備を導入しても、その付加価値を求めてくれる消費者が非常に少ない段階なので自ら進んで充電器を設置する動機が働きません。


普及が進む際の課題も


 今後電気自動車の普及が進むにあたって「課題」となりそうな点を指摘します。


高圧電力という壁


 一般家庭などで利用する「低圧電力」に対し、一定規模以上の店舗や工場などで利用する「高圧電力」というものがあります。


 一定規模以上の区画がある月極駐車場において、一定台数以上の充電器を設置した場合、「高圧電力」を契約する必要があります。普通充電器の場合、100Vで30A程度の電流を必要とするため、概算で17台以上の充電器を並べると「高圧電力」の契約が必要となる可能性があります。


 高圧電力を利用するには電気主任技術者の選定や、キュービクル(変圧器)の設置が必要となり、コストと手間が掛かります。例えばキュービクルだけでもコンパクトカーが新車で買えるほどの費用が掛かります。


キュービクル

キュービクル

 更に、キュービクルを設置するための面積も取られてしまいますから、場合によっては駐車スペースの減少→減収要因となる可能性もあります。


 ビルや店舗などに併設された駐車場では既に高圧電力を利用しやすいですが、何も無いところに一から高圧電力を引くのはきわめてハードルが高いです。




カーシェアでは全て解決することは出来ない


 電気自動車の普及とあわせて、普及に注目が集まっているのがカーシェアです。私自身も学生時代から5年以上にわたり利用を続け、その利便性はよく理解していますし日本でも普及がますます進んでいくことを確信しています(わが家もパーク24に土地を貸しており、その土地にカーシェアのステーションが設けられています)


カーシェア


 電気自動車とカーシェアの普及で、そもそも月極駐車場やマイカーの所有ニーズ自体が無くなるのではないかとの指摘も一部にあるようですが、それは非常に難しいと考えています。


 私自身、子供が産まれたのを機に、5年利用したカーシェアを解約しました。車を借りて返す度にチャイルドシートの脱着をする必要があり、面倒に感じたからです(タイムズカープラスの車両にはジュニアシートが1台につき1つ備えられている)


 また、我が家の月極駐車場を借りている皆さんの車の使い方を拝見していると、カーシェアでは代替することが難しい方は少なくありません(特に商売をされている方) そもそも毎日車を利用する場合は、カーシェアの方が高くつく場合も少なくありません。


 今後、電気自動車が普及してエンジン車の販売が縮小していく中で、月極駐車場の契約者が「乗れる車が無い」状況になることが無いよう、月極駐車場への充電器の導入を促進するような策を考える必要があると思います。


新たなビジネスチャンスも


 太陽光発電では「無料設置モデル」といって、ユーザーが余剰電力の売電収入を得られない代わりに、太陽光発電システムを無料で自宅や事業所に導入できるサービスが拡がりつつあります(設置業者は売電収入によって収益を得る)


 例えば電気自動車の充電スタンドを、月極駐車場に「無料」で設置・管理するサービスが登場すれば、一定の需要があるのではないでしょうか。設置費用は利用者が支払う充電料金から回収するビジネスモデルです。


 記事前半でも紹介したように、月極駐車場経営は「メンテナンスフリー」がメリットの一つです。管理やサービス提供の責任まで負ってくれる設置業者が現れれば、導入してもよいと考える月極駐車場オーナーは少なくないでしょう。




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