停電対策としても注目される電気自動車だが・・
停電対策にもなるというセールストークと共に語られることが多い電気自動車。ですが、実際には停電対策にはならない場合も少なくない、むしろその方が多いと言える現実があります。
目次
停電対策としても注目される電気自動車
電気自動車が停電対策になると言われている所以を紹介します。
一般家庭の数日分以上の電力を蓄電できる
- 日産リーフ 40〜62kWh
- ホンダ e 35.5kWh
- プリウスPHV 8.8kWh
一般家庭の平均的な電気使用量は1日あたり10kWh程度と言われています(戸建ての場合、13kWh程度と見た方がよい) 電気自動車が搭載している大容量のバッテリーは、一般家庭で使用する電力の数日分に相当する容量です。例えばフル充電のhonda eがあれば、3日分の電力をまかなうことが出来る計算です。
PHV(プラグインハイブリッド車)も大容量のバッテリーを搭載していますが、電気自動車と比較すると容量は格段に小さいです。
必ずしも停電対策になるとは言えない
よく聞かれる「停電対策」としての電気自動車ですが、必ずしも停電対策になるとは言えない事実があります。
溜めた電気を取り出すには制約がある
一般家庭の数日分の電力を貯めることが出来る電気自動車ですが、電気を取り出す方法には制約があります。
多くの電気自動車の車内には、100V電源を取ることが出来るコンセントがあります。最大1500W程度の電源を取ることが出来るため、ほとんどの家電製品を使うことが可能です。小型家電であれば車内、あるいは車の横に設置して使用することも容易ですが、エアコンや冷蔵庫など移動が難しい大型家電を電気自動車の電源で使用するのは現実的に難しいです。
電源の容量の観点で見れば、1500Wの容量があるのでエアコンや冷蔵庫も動作可能と言えますが、駐車場に停めた車の車内から、自宅内の大型家電まで長い延長ケーブルを使用して接続するのは現実的とは言えません。
100%フル活用するにはV2Hシステムが必要
電気自動車を停電対策としてフル活用するにはV2Hシステムが必要です。
V2H(ビークルトゥホーム)とは
V2Hは、電気自動車と住宅との間で電力を充電・放電する橋渡しをするシステムです。エアコンの室外機を少し大きくしたような設備を介して、電気自動車のバッテリーに電気を溜めたり、溜めた電力を取り出して住宅で使用することが出来ます。
V2Hと組み合わせれば停電対策に活躍する
V2Hを導入することで、電気自動車のバッテリーから取り出した電力を、住宅のコンセントから直接使うことが出来ます。
最大6kW程度まで出力(放電)出来るため、一般的な戸建て住宅で何も気にせず、平常通り電力を使うことが出来ます。エコキュートや電気温水器を動かすと厳しいですが、停電時は断水が発生している場合が多いので、その点は問題にならないでしょう。
充電する時と同じように電気自動車をV2Hにケーブルで接続するだけで、停電時に自宅で電力を使うことが出来ます。
再エネの普及拡大にも貢献できる
V2Hと電気自動車の組み合わせは、停電対策だけでなく再生可能エネルギーの導入拡大にも貢献します。
再生可能エネルギー、とりわけ風力や太陽光発電は発電量が一定しないという課題があります。特に太陽光発電は夜間や雨天時には発電できません。一方、九州などでは太陽光発電の電力が「増えすぎた」ことで、せっかく発電した電力を捨ててしまう措置が春・秋に頻繁に実施されており、更なる導入拡大に影響を及ぼしています。
例えば太陽光発電の電力が余りやすい昼間に電気自動車を充電し、夜間に放電することで太陽光発電の電力を有効活用することが出来ます。単に普通充電器などで電気自動車を昼間に充電するだけでも貢献は可能ですが、V2Hを利用して夜間に放電することでより大きな貢献が可能となります。将来的には充電・放電を電力需給に応じてV2Hが自動で制御するシステムも普及していくはずです。
家庭用蓄電池との競合も
電気自動車+V2Hの組み合わせによる「停電対策」は、家庭用蓄電池でも可能です。電気自動車は補助金を活用しても数百万円以上、またV2Hの導入には50万円以上の費用が掛かるのが一般的です。
家庭用蓄電池は100〜200万円程度で導入可能なので、電気自動車とV2Hを導入するよりも初期費用が少ないです。電気自動車のバッテリーの方が容量が数倍以上大きいのでその分は割引く必要がありますが、東日本大震災後の首都圏で実施された計画停電(1日1回3時間)であれば家庭用蓄電池の容量5〜7kWhでも十分に足りました。
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