F-Powerの120億円赤字問題

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巨額赤字計上から倒産したF-Power問題の経緯


 2018年から経営不安が取り沙汰されてきた新電力大手F-Powerが2021年3月に倒産しました。これまでの経緯と背景、契約者が取るべき対処方法を解説します。



そもそもF-Powerとは?


 まずはF-Powerという会社について簡単に解説します。


生い立ち


 省エネコンサルタントなどを行っているファーストエスコ(現エフオン)の新電力部門として創業し、2009年にF-Powerとして独立しました。


 新電力業界では16年にわたり、NTTや東京ガス、大阪ガスが出資して設立したエネットが首位の座を維持していましたが、F-Powerが猛追した結果、2018年に首位が入れ替わっています。


 家庭向けを含む低圧電力ではシェアが高くありませんが、工場などで使われる高圧・特別高圧でシェアが高い会社です。


エフパワーは工場などに電気を供給している


現在はファンド傘下


 ファーストエスコの新電力部門として設立された会社ですが、現在は大和証券系のインフラ投資ファンド、IDIインフラストラクチャーズの傘下にあるようです。


 F-Powerの社長を務める埼玉浩史氏はIDIの社長も兼務しています。
 IDIの資料にも「運用ファンドを通じて、電力小売事業者や各種発電所などを中心に数百億円規模の投資実績」とあり、サイトにも投資先としてF-Powerが紹介されています。


家庭向けのブランドを多数展開


 F-Powerは主に各地の代理店を通じて、家庭にも電気を供給しています。



 それに加え、2018年6月からは代理店を介さず「ピタでん」というブランド名でも家庭に電気を供給しています。


 家庭向けは法人向けと比べて利幅が大きく、また一度契約すれば流出も少ないと言われているため、契約獲得に力を入れているようです。


F-Power(ピタでん)公式サイト

2期連続の巨額赤字、その後倒産


第10期決算で120億円の赤字に


 2018年10月に公表された第10期決算(2017年7〜18年6月)で120.8億円の赤字(純損失)を計上しています。売上高が1599億円に対し、売上原価が1690億円と膨らんだことが主な要因です。「電気を売れば売るほど赤字」という状況です。


F-Power第10期決算公告


 ちなみに、前期は売上高1255億円に対し、7億円の純利益を出していました。


 2018年7月には社長が交代、また10月には本社が六本木から田町に移転と動きが慌ただしいです。


第11期決算で184億円の赤字


 2019年10月に公表された第11期決算(2019年6月期)では、赤字が184億円と前期よりも更に赤字幅が大幅に拡大しました。


 法人向けで北海道エリアからの撤退、また不採算の顧客との契約打ち切りを進めていることが伝わっていましたが、赤字幅が縮小するどころか拡大している状況です。


 一時は債務超過に陥ったものの、これまでもF-Powerに投資をしてきたIDIグループからの追加出資によって解消したことが日経エネルギーのインタビューで報じられています。


2021年3月に会社更生法申請し倒産


 2021年3月24日に会社更生法申請を行うことを公表しました。事実上、倒産したことになります。


 巨額赤字を出した10・11期から転じて、12期(2019年7月1日〜20年6月30日)は1.5億円とわずかではあるものの黒字転換していましたが、倒産に至りました。


倒産の背景・原因


 F-Powerがこの数年経営不振に陥り、結果として倒産に至った背景を解説します。


安売り


 1つ目の理由として指摘できるのが安売りです。


 F-Powerは2016年の電力全面自由化以降、わずか2年の内に販売量を2倍に増加させています。自治体など公共団体の競争入札でも次々に落札しているほか、企業向けにも他社を寄せ付けない低料金で乗り換えを提案していると言われています。


 定価がある家庭向け電力の料金プランを見てみると、F-Power(ピタでん)と同社の代理店が最安値群の新電力と比べて更に一段安い料金設定となっています。


卸電力取引所への依存


 それに加え、卸電力取引所への依存も要因として指摘されています。


 出資元である投資ファンドが保有する発電所や発電子会社、あるいは大手電力会社などからも調達しているものの、販売量が急激に増えたため電源が不足しています。そこで卸電力取引所への依存度を高めたという指摘があります。


 卸電力取引所の取引価格は時期によって「暴騰」することがしばしばあり、調達を依存する新電力の経営に打撃を与えています。


2018年7月24日の卸電力取引所の取引価格

2018年7月24日の取引価格 75円/kWhまで高騰

 これまでにも度々取引価格の高騰が発生していましたが、特に2020年12月末から約1ヶ月と長期にわたり異常な高騰が続きました。そのことが倒産の引き金になったと指摘されています。運が悪いことに、F-Power社は2020年9月には千葉県内の火力発電所を他社に売却していました。


各年度12月26日〜1月6日期間の取引価格の平均値

各年度12月26日〜1月6日期間の取引価格の平均値

契約者は何をすべきか


 F-Powerは今後どうなっていくのか、決算公告などの情報をもとに考えます。


突然停電するようなことは無い


 電力自由化の制度上、新電力が倒産などにより電気を供給できなくなった場合、送配電会社が代わって電力供給する仕組みになっています。したがって、突然停電するようなことは起きないです。


 万が一、F-Powerからの供給が停止した場合、郵送などで通知が出されるので、期限内に他社への切り替え手続きをすることで引き続き電力を使うことができます。


 また、会社更生法申請を公表した3月24日時点では「会社の事業をこれまでのとおり継続」また「今後の電力供給にはまったく支障はございません」とF-Power社が発表しており、契約者が直ちに何かをしなくてはならない状況にはありません。


 詳しくは以下の記事を参考にしてください。


不安に感じる人は他社への切り替えを


 停電するといった不利益が生じる恐れは無いと言えますが、とはいえ契約している電力会社が「倒産」したことに不安を感じる人は少なくないでしょう。


 不安に感じる場合は、他社への切り替えをおすすめします。F-Powerよりも安い電力会社が存在しないケースもありますが、同等の料金プランを提供している新電力もいくつかあります。以下の料金一括シミュレーションでF-Powerの料金プランと簡単に比較できます。




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