続く電気代高騰。原因は本当に円安なのか分析してみた。
高騰が続く電気代。そして続く円安。電気代高騰の「原因」は本当に円安なのか、コロナ前やロシアによるウクライナ侵攻前の数字を現在の数字と比較しながら解説します。
燃料輸入価格・為替レートの変化
燃料の輸入価格と、為替レートを過去のデータと比較します。なおデータの出典は財務省「貿易統計」です。多くの電力会社が電気代の算定に用いている値を元に比較します。
ロシア侵攻前と24年6月の比較
ロシアによるウクライナ侵攻(2022年2月)が起こる前の2021年6月分(21年1〜3月分平均)と、2024年6月分(24年1〜3月分平均)を比較します。
2024年6月分 | 2021年6月分 | 変化率 21→24年 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
ドル建て | 円換算 | ドル建て | 円換算 | ドル建て | 円換算 | |
原油 | 84.2$/b | 77911円/kl | 55.9$/b | 36942円/kl | +50.6% | +111% |
LNG | 673.2$/t | 99090円/t | 438.7$/t | 46064円/t | +53.5% | +115% |
石炭 | 166$/t | 24434円/t | 86.9$/t | 9128円/t | +91.0% | +168% |
為替 | 147円/$ | 105円/$ | +40.0% |
コロナ禍で世界的に経済活動が停滞し燃料価格が安かった時期との比較になります。菅総理の在任期間、東京2020オリンピックの開催に向けて揉めていた時期です。
欧米などで「石炭火力発電廃止」の機運が高まっていました。21年11月にCOP26でグラスゴー気候合意が採択され、石炭火力発電の「段階的削減」が盛り込まれました。日本でも2030年度の温室効果ガス排出量を13年度比46%減とする目標が打ち出され、小泉進次郎環境省がその数値について「おぼろげながら浮かんできた」などと話し物議を醸しました(2021年4月)
コロナ前と24年6月の比較
コロナが本格化する前の2019年6月分(19年1〜3月分平均)と、2024年6月分(24年1〜3月分平均)を比較します。
2024年6月分 | 2019年6月分 | 変化率 19→24年 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
ドル建て | 円換算 | ドル建て | 円換算 | ドル建て | 円換算 | |
原油 | 84.2$/b | 77911円/kl | 63.5$/b | 43984円/kl | +32.6% | +77.1% |
LNG | 673.2$/t | 99090円/t | 569.4$/t | 62662円/t | +18.2% | +58.1% |
石炭 | 166$/t | 24434円/t | 119$/t | 13092円/t | +39.5% | +86.6% |
為替 | 147円/$ | 110円/$ | +33.6% |
世界的に経済成長の鈍化がみられ、世界経済成長率がリーマン・ショック後最低(当時)となる2.6%を記録しました(翌年2020年は-3.1%と悪化) 日本は安倍首相、米国はトランプ大統領の在任期間です。ちなみに「老後2000万円」は2019年6月に金融庁のワーキンググループが発表した報告書をきっかけに世の中にひろがりました。
結論:円安と燃料高のダブルパンチ
日本が輸入する燃料は原則としてドル建てであるため、為替レートが3〜4割円安に進んだ影響は小さくないにせよ、石炭やLNGの価格も大幅に上昇しており、燃輸入料価格高騰の原因は円安と燃料価格高騰による「合せ技」と言えます。
燃料費調整単価と電気代への影響
最後に、燃料価格高騰による電気代への具体的な影響を紹介します。東京電力エナジーパートナーの2024年6月現在の燃料費調整制度における、燃料費調整単価と一般家庭の電気代への影響をまとめます(電気代補助金含めない、実際の計算方法は時期により変更されている点に留意)
燃料費調整単価 | 燃料費調整額 月300kWh | |
---|---|---|
2024年6月 | -5.80円/kWh | -1740円 |
2021年6月 | -11.40円/kWh | -3420円 |
2019年6月 | -9.75円/kWh | -2925円 |
計算方法が同じであった場合、燃料費調整額要因により電気代は21年比で月額1500円上昇、19年比較では月額1185円上昇していることになります(計算方法は同一、燃料価格を当時の数字で計算した値)
なお2023年6月に東京電力エナジーパートナーは電気料金の改定を行っており、燃料費調整額の計算方法だけでなく電気料金(基本料金+電力量料金)も改定されています。
関連記事
電力自由化とは? | 停電のリスクは? |
乗り換えでいくら安くなるの? | 乗り換えで料金が値上がりするケース |
新電力とは? |
どうやって契約するの? | 乗り換えのメリット・デメリット |
乗り換えにかかる初期費用 | 乗り換えに工事は必要? |
賃貸住宅でも乗り換えられるの? | 解約する時の違約金は? |
安くなる理由 | 電気の調達は? |