初めて値下げされる再エネ賦課金
制度開始から約10年、毎年値上がりを続けていた「再エネ賦課金」が初めて値下げされます。なぜ値下げに至ったのか、分かりやすく解説します。
目次
そもそも再エネ賦課金とは?
そもそも再エネ賦課金とは何か、分かりやすく簡単に解説します。
再エネ賦課金は正式には「再生可能エネルギー発電促進賦課金」と言います。再生可能エネルギーの導入を増やすために2012年にスタートした固定価格買取制度によって、再生可能エネルギーで作られた電気を高い値段で買い取ることになりました。その買い取りに掛かる費用をまかなうために「電気を使う全ての人」に負担してもらっているのが再エネ賦課金です。
毎年5月検針分(4月使用分)に再エネ賦課金の単価が変更されます。単価は基本的に全国一律(一部の業種では減免がある)で、どの電力会社と契約しても同じ金額が、電気の使用量に応じて課金されます。
ちなみに、再エネ賦課金は電気代と一緒に請求されるため電力会社の売上や利益になっていると勘違いされがちですが、電力会社にとっては消費税などと同じような「預り金」のようなイメージなので、再エネ賦課金によって電力会社が儲かっているわけではありません。
「初めて」値下げされる再エネ賦課金
2012年の制度開始以来、毎年の改定で単価が上昇を続けていた再エネ賦課金。ですが2023年度の再エネ賦課金の単価は制度開始以来初めて、値下がりします。
2023年度の単価は1.4円/kWh。2022年度の3.45円/kWhから約2円の値下がりです。月300kWhの電気を使う一般家庭では、毎月の電気代が約600円値下がりすることになります。
再エネ賦課金が値下げされる理由
これまで上昇を続けていた再エネ賦課金はなぜ、ここにきて値下がりするのか。その理由を解説します。
電気が高く売れるようになったから
再エネ賦課金は、再エネで発電された電気を「高値で」買い取るための費用に充てられています。
例えば2012年度に申請された家庭用の太陽光発電の余剰電力の買取価格は42円/kWhです。42円で買い取られた電力は、電力取引市場で売却されます。売却価格は通常、買取価格よりも安くなりその分が制度を運用する上で「損失」となり、その損失は再エネ賦課金で埋めることになります。
2021年の秋ごろから電力取引価格の高騰が続いています。これまで42円で買い取った電気を9円程度で売却し、33円の赤字が出ていたものが、昨今は20円以上の価格で売却出来る状況でした。売却時の価格が大幅に上昇し「赤字」が減ったことで、赤字を補填するための費用である再エネ賦課金の値下げに繋がりました。
また、再生可能エネルギーで作られた電力には「電気」としての使用価値に加えて、「再エネである・CO2排出量がゼロ」という環境価値があります。固定価格買取制度で買い取られた電気については、この「環境価値」の部分も売却が行われています。環境価値を買い求める企業が増えると再エネ賦課金は下がることになります。
政治的な理由ではない
国民民主党などが電気代の高騰対策として再エネ賦課金の徴収を停止することを主張していましたが、今回の再エネ賦課金の値下げは上で説明したように電力取引価格が高騰したことが主な要因です。様々な政党による活動が背景にあったのかもしれませんが、主要因はあくまでも電力取引価格の高騰です。政治の動きとは関係無いと言ってよいでしょう。
将来的な動向は?
電力取引価格が2021年秋以降、長期にわたり高騰していたことを受けて、2023年度の再エネ賦課金が値下がりしました。ですが2023年3月頃から、一時期と比べるとやや値下がりしています。
電力取引価格は主に「燃料の輸入価格」と「電力需給」によって決まります。燃料の輸入価格は今後も高騰するリスクはありますが、直近は一時期よりも落ち着いており、その影響で電力取引価格はやや低く推移する可能性があります。2024年度の再エネ賦課金は2023年度よりも高くなる可能性は否定出来ないでしょう。
とはいえ、環境省が2013年に行った試算によれば、再エネ賦課金は2030年頃をさかいに急激に下落していく見通しとなっています。
固定価格買取制度は決まった期間、決まった単価で余剰電力を買い取る制度です。例えば2012年度に導入された家庭用の太陽光発電は42円/kWhで10年間で買い取りが行われ、買い取り期間が過ぎるとそれで終了です。買い取り価格は年々下落を続けており、2023年度に申請された家庭用太陽光発電の買取価格は16円にまで下落しています。
買取価格は再生可能エネルギーの導入費用の低下に伴って下落を続けています。今後も導入費用の低下に伴い買取価格は下落を続け、更に過去に導入された高値で売電している発電所からの買取が順次終了していくことで、再エネ賦課金の負担が減少していく見通しです。
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