再エネ賦課金にまつわるウソと誤解を解き明かす | すぐ停止できる?中国の資金源?

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再エネ賦課金に対する誤解を解きます


 私たちが支払う電気代の1割を占めるまでに膨らんでいる再エネ賦課金。それに対する批判の声は年々高まっていますが、中には事実と明らかに異なる内容が少なくありません。この記事ではSNS上などでよく見られる「誤解」を解きます。



そもそも再エネ賦課金とは何か


再エネ賦課金単価の推移

再エネ賦課金単価の推移

 まずは再エネ賦課金を簡単に説明します。


 再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)は再生可能エネルギーの導入拡大を目的として導入された、「固定価格買取制度」を国民全体で支えるための費用負担です。


 電気を1kWh使うごとに決まった金額(毎年改定)が発生し、電気を使った人が負担し電気代といっしょに電力会社に支払います。支払いを受けた電力会社は受け取った再エネ賦課金を費用負担調整機関に支払います。


 固定価格買取制度では再エネの普及を促進するため、電力の市場価格よりも割高な値段で再エネ電力を一定期間買い取ります。再エネの導入コストが高いため、割高な価格で買い取らないと再エネが普及しないためです。買い取った電力を市場などで売却した金額と、買い取りに掛かった費用の「差額」を埋めるために再エネ賦課金が使われています。


再エネ賦課金へのよくある誤解


 再エネ賦課金にまつわる「よくある誤解」を解説します。


電力会社の売上になっている


 再エネ賦課金について最もよくみられる誤解が、電力会社の売上になっているというものです。電気代の請求書に再エネ賦課金の記載があり、実際にユーザーは電力会社に再エネ賦課金を含んだ電気料金を支払っているため、誤解するのも無理はないでしょう。


 ですが実際には再エネ賦課金は電力会社の利益にはなりません。徴収した金額をそのまま費用負担調整機関に支払う必要があるため、再エネ賦課金が増減しようと電力会社の利益が増えたり減ったりすることはありません。


 なお、上場している電力10社については会計基準により再エネ賦課金を売上にも含めておらず、売上にも影響しません。


 電力会社にも多数の苦情が寄せられているようで、例えば四国電力は「「再エネ賦課金」を払うのって、なんでやねん」というコンテンツを公式サイト上で公開し、『「再エネ賦課金」は、電気料金の一部としてお支払いいただいていますが、四国電力は預かったお金をすべて国が指定する機関に納めているだけで、儲けてはいないのです。』と説明しています。



中国にお金が流れている


 再エネ賦課金が中国に流れているとの批判の声があります。その背景として以下のような指摘があります。



 まず一点目の中国資本が日本国内に再エネの発電所を多数建てて、その売電のために再エネ賦課金が充てられているとの指摘があります。


 私は2019年に低圧分割ソーラーの問題を調べるため、固定価格買取制度の認定を受けた国内の全ての再エネ発電所のリストに目を通した経験があります。この経験をふまえると、中国企業とみられる企業や個人は全体の中では「珍しい」存在であったと記憶しています。全体の中でごくわずかと言ってよい存在です。帰化した中国人が好んで使う「華」が入った氏名が目立った記憶もありません。


太陽光発電


 太陽光発電機器のほとんどが中国メーカー製であり、再エネ賦課金が実質的に中国企業への補助金となっているとの指摘があります。令和6年5月の資源エネルギー庁資料によれば太陽光パネルの国際シェアの約8割を中国が占め、また国内シェアでも88.4%(2022年)が海外生産であるとされており「太陽光発電のほとんどが中国製」との指摘は事実といえます。固定価格買取制度での買い取りの約8割は太陽光が占めている事実もあります。


 再エネ賦課金が間接的に中国に流れてしまっているとの指摘は事実と言えるでしょう。とはいえ太陽光発電の導入コストの内、中国製が多いパネルやパワコンなどの費用は6割前後である点。また導入後のランニングコスト(点検、除草など)の多くは国内で還流している点をふまえると、再エネ賦課金の大部分が中国に流れてしまうわけではないにせよ、数割程度は実質的に中国に流れている事実があると言えます。


 中国製のパワコンは有事の際に遠隔操作されるリスクも指摘されています。例えば春秋の晴れた昼間に一斉に送電を停止させることで、送電ネットワークの中で急激な周波数の変動が発生し、大規模停電を引き起こすことも可能です。パワコンを含めた国産化率の向上は急務と言えるでしょう。ただし中国製のシェアが急拡大した背景には中国製が圧倒的に安価であるという背景があります。国産化率を高めるにあたっては再エネ賦課金の負担増を含めた国民の負担増が必要となるでしょう。


すぐに停止できる


 電気代が高騰した2022年によく話題にのぼっていたのが「再エネ賦課金の停止」です。国民民主党がさかんに主張していました。


 再エネ賦課金を停止すること自体は不可能ではないとみられます。ですが再エネ賦課金の課金を停止した場合、固定価格買取制度の維持に必要な費用を税から補填する必要性が生じます。


 固定価格買取制度自体を廃止せよ、との意見もSNSで目にする機会があります。ですがこれに関して私は「現実的ではない」と考えています。


 固定価格買取制度は文字通り、一定期間(例えば家庭用太陽光発電は10年間)にわたり、一定の金額で再エネ電力を買取ることを約束した制度です。一定期間・決まった金額で買取ることが約束した制度を途中で放棄した場合、我が国の信用を毀損する事態が生じることは避けられません。日本国への信用にも係る問題と言えます。約束を途中で放棄する国で、新たに投資をしようと考える人がどれだけいるでしょうか?


 固定価格買取制度はメガソーラーだけでなく、住宅用太陽光発電も対象です。追加で数百万円の住宅ローンを組み、自宅に太陽光発電を設置している人も少なくありません。そのような状況で固定価格買取制度を「途中放棄」することは現実的とは言えないでしょう。


 再エネ賦課金の停止は可能であっても、それを肩代わりする税支出は必須と言えます。国民民主党も固定価格買取制度の停止までは主張しておらず、税による費用負担を掲げていました。


再エネ賦課金・固定価格買取制度の課題


 再エネ賦課金や固定価格買取制度が抱えている課題を整理します。





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