解禁へ議論が進む「一括受ガス」とは?
解禁に向けて政府の専門家委員会などで検討が進む「一括受ガス」 大型マンションなどで、建物全体で同じガス会社と契約してガスを一括購入するという仕組みです。この一括受ガスのメリットとデメリットを両面から解説します。
目次
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導入の背景
まずは一括受ガスが解禁される「背景」を説明します。
既に電気は一括購入が可能だった
一括受ガスに先立って、大型マンションなど一つの建物で一つの電力会社とまとめて契約する「一括受電」が2005年に解禁され、60万世帯が利用しています。
電気の一括受電が認められているのだから、ガスの一括受ガスも認められるべきだ、という声が主に電力会社や一括受電を提供している会社から上がっており、それに後押しされる形で議論が進められてきました。
既に一部では行われているという実情も
一括受ガスは現在の制度上は認められていませんが、事実上「一括受ガス」と言えるような状態になっている事例が全国に数百件以上存在すると言われています。
例えば百貨店で、百貨店がガス会社と契約した上でテナントにガスを使わせて、料金を徴収している例が専門家会議で取り上げられています。
一括受ガス導入のメリットは?
前置きが長くなってしまいましたが、一括受ガスのメリットを説明していきます。
ガス料金を安くすることができる
一括受ガスの最大のメリットは、建物全体でガスを「一括購入」することで実現するガス料金の値下げ効果です。
例えば電気の一括受電の場合、住民の住戸部分(専有部分)で数%〜10%程度、共用部では20%以上安くなるプランが提示されることが多いようです。
ガスの場合は1世帯あたりの平均料金が月5000円程度ですから、そこから数%削減できれば年間数千円の節約になるというイメージです。
一括受ガスのデメリット
続いて、現時点で予想される一括受ガスのデメリットを紹介します。
料金の大幅な削減は期待できない
「一括受電」と比較しても、料金の下げ幅は更に小さなものにならざるを得ない背景があります。
一括受電では、「高圧電力」と「低圧電力」の間に存在する大きな価格差を利用することが出来ます。しかし、ガス供給の場合はそもそも大規模マンションであっても低圧導管での供給が一般的であるため、そうした大きな価格差が存在しません。
唯一の値下げの原資は、メーターで毎月の使用量を確認する「検針」に掛かるコストですが、これはガスの託送原価のわずか9.5%(大阪ガスの場合)に過ぎません。
値下げ余地が非常に限られるため、料金を大幅に削減する効果は期待できないというのが現実です。既に家庭向けのガス供給は自由化されていますから、戸別に乗り換えた場合と比較すると一括受ガスのメリットは非常に限られます。
導入に多大な手間が掛かる
一括受電と同様に、一括受ガスについても建物全体で同じ会社と契約しなくてはなりません。導入にあたっては現在居住している全ての世帯や、テナントとして入居している店舗や事務所の同意が必要になります。
契約しているプランやガス会社などの条件によっては一括受ガス導入でガス料金が高くなる世帯がある場合もあるため、導入に向けた合意形成は困難を極めるでしょう。
その点、新築時点で一括受ガスを導入した状態で分譲する、あるいは1棟賃貸で入居を募集するような事例では一括受ガスの導入は容易です。
一括受ガスには、大手電力会社やその資本が入った会社が参入する見込みです。政治的な理由から拒否反応を示す方もいるのではないでしょうか。
一度始めると解約が難しい
一括受電では10年単位の契約が基本です。
導入にあたって必要な設備の設置費用などが請求されないかわりに、長期間の契約継続が必要となります。
一括受ガスについても、一括受ガス業者が各戸のガスメーターなどの設備を自前で導入することになるはずなので、その分の投資コストを回収するには長期にわたる契約継続が必須になるでしょう。
また、今後エネルギーの分野でも制度改革や技術革新がどんどん進んでいきます。10年という長期契約は、そうした変化に取り残されるリスクにもつながるでしょう。
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