石炭火力発電のメリット・デメリット

石炭火力発電の長所と短所は?


 世界的に「撤廃」の流れが加速している石炭火力発電。批判の声が強まっていますが、そのメリット・デメリットを両面を改めて「分かりやすく」整理して解説します。



石炭火力発電のメリット


 まずは石炭火力発電の優れている部分を紹介します。


発電コストが非常に安い


石炭


 日本の電源構成の32%(2017年度)を占める石炭火力発電の最大の利点は、発電コストの安さです。安い電気代を実現するのに必要不可欠な発電方法とされています。


発電方法 発電コスト
石炭火力発電 12.3円/kWh
LNG火力 13.7円/kWh
石油火力発電 30.6〜43.4円/kWh
水力発電 11.0円/kWh
メガソーラー 24.3円/kWh

 火力発電の中では最も発電コストが安く、原子力発電や水力発電と並んで発電コストが安い発電方法とされています。


 発電コストが安い理由は燃料代の安さで、LNG火力発電で1kWhあたり10.8円の燃料費が掛かるのに対し、石炭火力発電では5.5円と約半額で済むため発電コスト全体として安く済みます。


燃料の安定調達が可能


 石炭火力発電の燃料として使われる石炭は、安定した調達が可能です。



 可採年数が約50年程度の天然ガスや石油に対し、石炭は150年分程度の資源量があり、また埋蔵量の3分の2が中東に集中している石油と比較すると、世界各地で産出されているため調達が安定的に可能です。日本の輸入先は以下のとおり、各地に分散しています(2017年)



 また、日本が輸入する石炭の約9割が主に固定価格での「長期契約」となっており、安定した価格で長期にわたる輸入が可能です。


石炭の運搬船


石炭火力発電のデメリット・問題点


 石炭火力発電には以下のようなデメリットもあります。


環境負荷が大きい


 既に広く指摘されているように、石炭火力発電は環境負荷が大きい発電方法です。まず大きな問題点として指摘されているのがCO2排出量の多さです。


発電方法 発電時のCO2排出量
石炭火力発電 864g-co2/kWh
LNG火力 476g-co2/kWh
LNG火力
コンバインド
376g-co2/kWh
石油火力発電 695g-co2/kWh

 現在さかんに導入が進んでいるLNG火力発電(コンバインドサイクル)と比較すると、実に2倍以上のCO2を排出します。


 また、大気汚染などの原因となる汚染物質の排出量も多いです(出典:九州電力)


発電方法 LNG火力 石油火力 石炭火力
硫黄酸化物 0 1.919g/kWh 0.247g/kWh
窒素酸化物 0.099g/kWh 0.615g/kWh 0.271g/kWh
ばいじん 0 0.010g/kWh 0.010g/kWh
産業廃棄物 0.041g/kWh 1.408g/kWh 49.09g/kWh

 日本の石炭火力発電は世界でも最も「クリーン」とされていますが、LNG火力発電と比較すると汚染物質の排出量が多いです。


石炭の鉱山


国際的な批判を受けて新設が厳しい


 環境負荷が大きいとの批判を受けて、世界的に新設が難しくなっているという新たな問題も浮上しています。


 例えばドイツなどでは「脱石炭」を政策として掲げているほか、今後も石炭火力発電の導入が急速に進んでいくことが予測されている東南アジアにおいても、例えばフィリピンの財閥企業などが「脱石炭」を掲げるなど、石炭火力発電への風当たりが強まっています。


 日本国内でも、東京ガスなどが千葉県袖ケ浦市に新設する予定だった大規模な石炭火力発電所の計画が「断念」に追い込まれるなど、見直しを進める動きも出てきています。
 また、2020年7月には日本の経産省が旧型の石炭火力発電所約100基を2030年度までに「急廃止」する方針を表明しました。全国の140基の内の100基を止める非常に影響力の大きな方針転換と言えます。


 欧州では金融機関が石炭火力発電にお金を出さない方針を表明しているところが増えていましたが、それに追随する形で三井住友フィナンシャルグループが新設の石炭火力発電を支援しない方針を2020年に表明するなど、資金調達の面でも包囲網が狭まっているという状況です。


今後の展望は?


 風当たりが強まる石炭火力発電の動向を紹介します。


途上国では今後も大幅に増加する可能性が


 日本など先進国では新設が難しくなっている石炭火力発電ですが、途上国では今後も大幅な増加が見込まれています。


 かつての日本でもそうでしたが、発展著しい途上国では石炭火力発電でつくられた安価な電力が必要とされます。IEAのレポート(2015)では、世界での石炭火力発電の発電量は2013年時点で9612TWhでしたが、2040年には11868TWhと2割以上増加する見通しが示されています。


 日本を含む先進国では2040年までに年率1.9%程度減少する(日本は1.4%減の見通し)とされていますが、途上国では年率1.0%ずつ増える見通しです。


石炭の採掘地


技術革新による環境負荷の低減も進む


 環境負荷が大きいとされる石炭火力発電ですが、環境負荷を低減するための技術革新も活発に進んでおり、特に日本企業がその先頭を走っています。


方式 1kWhあたりCO2排出量 実用化時期
Sub-C
(亜臨界圧)
900g 1960年代
USC
(超々臨界圧)
820g 1995年頃
A-USC
(先進超々臨界圧)
710g 2016年頃
IGCC
(石炭ガス化複合発電)
650g 2020年頃
IGFC
(石炭ガス化燃料電池複合発電)
590g 2025年頃

 石炭をガス化して発電するIGCC(石炭ガス化複合発電)は広島県にある大崎発電所で2017年に試験運転を開始、2019年に実証実験を完了(成功)しています。IGFCは更に燃料電池を組み合わせることで無駄なく発電する仕組みです。


 発電の効率化に加え、発生したCO2を回収して貯蔵する技術「CCS」の開発も進められており、それらを組み合わせることでCO2排出量を大幅に削減することを目指しています。


 ただし、CO2の回収・貯蔵には現状で大きなコストが掛かります。2019年までに北海道の苫小牧で行われた大規模実証実験では30万トンのCO2を地下(海底の地層)に貯蔵することに成功しましたが、大幅なコスト削減を進めていく必要があります。


 また、既存の石炭火力発電についても、木質チップやパームヤシの殻といったバイオマス燃料を混ぜて燃やすことでCO2排出量を削減する取り組みも全国各地で活発に行われています。


 技術革新は進んでいますが、日本で現在稼働している石炭火力発電の主流は「亜臨界圧」と呼ばれる古いタイプです。


2030年度までに大規模削減される見通し


 2020年7月に梶山経済産業大臣が「旧式の石炭火力発電の休廃止」を2030年度までに行う方針を示しました。全国140基の石炭火力発電所の内、約100基を大胆に削減するという内容です。


 日本では1960年代に実用化された亜臨界圧という方式が石炭火力発電の「主流」となっているため、旧式を廃止するという方針に触れてしまう発電所が多数にのぼります。


 なお、離島などで直ちに電力供給に影響を及ぼす発電所は除外、また災害などによる大規模停電を防ぐために直ちに100基分が削減されることがないような仕組みを検討しています。また、高効率型の発電所の新設は認められます。




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