核融合発電を分かりやすく解説
日本でも徐々に注目が集まりつつある核融合発電。そのメリット・デメリットを冷静に解説します。期待が過大に膨らんでいる部分も指摘します。
目次
核融合発電とは?
核融合は、軽い原子核が高温・高圧の条件下で融合し、より重い原子核になる過程で大量のエネルギーを放出する現象です。太陽が光と熱を放出するのも、この核融合反応によるものです。核融合発電は、この原理を地上で再現し、エネルギーを取り出す技術です。
従来型の原子力発電は核融合とは反対の「核分裂」を利用し、熱エネルギーを取り出すことで発電する技術です。
核融合発電のメリット
他の発電方法と比較したメリットを解説します。
発電時にCO2を排出しないカーボンフリー電源
核融合発電の最大のメリットは、クリーンなエネルギー源であることです。核融合反応では、二酸化炭素やその他の温室効果ガスがほとんど発生しません。これにより、地球温暖化の防止に大きく貢献することが期待されています。
燃料の調達が容易
核融合の燃料として使用されるのは、主に水素の同位体である重水素と三重水素です。これらは海水から容易に取り出すことができ、地球上に豊富に存在します。したがって、燃料供給の面で心配する必要がありません。
エネルギー安全保障の面でも優位性があると言えます。
安全性が高い
核融合発電は、従来の原子力発電に比べて安全性が高いとされています。核融合反応は非常に高温・高圧の条件下でしか起こらないため、反応が制御不能になるリスクが低いです。設備が故障すると核融合反応は停止に至るとされています。連鎖的に反応が続いていく核分裂とは異なり、暴走し制御不能に陥るリスクは皆無です。
また、核融合反応によって生成される放射性廃棄物は、従来の原子力発電に比べて少なく、半減期も短いです。核融合発電によって発生する放射性廃棄物の多くは100年程度保管すれば害の無い水準にまで減衰するとされています。
発電コストを抑えられる可能性
内閣府原子力委員会核融合会議の試算によれば、116万kWの核融合発電所の発電コストは7.6円/kWhと見積もられており、これは原子力発電の11.5円〜やLNG火力の10.7円と比較しても安価と言えます。コストダウンが進むことで5.4円まで引き下げられるとも試算されています。
核融合発電のデメリット
デメリットや課題も山積しています。
実用化に向けた技術的ハードルが高い
核融合発電の実現には、非常に高度な技術が必要です。現在のところ、核融合反応を安定して長時間維持することは難しく、多くの技術的な課題が残されています。これらの課題を克服するためには、さらなる研究開発が必要です。
日本や欧米などが参加し核融合発電の実験炉を共同で建設する「ITER(イーター)」プロジェクトがフランス南部で進行していますが、2025年としていた運転開始時期を9年延期し2034年とするなど遅延もみられます。この延期により費用も追加で8700億円上振れする見通しです。
日本でも一部の政治家などが核融合発電の活用を掲げていますが、実用化にはまだ数十年以上の年月を必要とすることは自明です。次世代型ではなく「次次世代型」の発電と捉え、繋ぎとなる別の技術開発を同時進行で進める必要があると言えます。
設備コストが高額
フランス南部で進行している「ITER(イーター)」プロジェクトにも200億ユーロ(約3.5兆円)が投じられていることからも分かるように、膨大な研究開発コストが投じられています。
また、実用化された後も超高温に耐える設備などが必要となるため、多額の建設費用が発生することが見込まれます。とはいえ膨大な電力を安定的に発電することが出来るため発電コストとして見た時に安価となる見通しが示されていますが、発電所の建設にあたっては技術力だけでなく資金力のある企業が主体となる必要があります。
一部で「核融合発電の実用化で電気代がタダになる」という言説が飛び交っていますが、こうした設備費用や電気を送り届けるために必要なコスト(託送料金)をふまえると電気代が「タダ」になることは無いと言えます。
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