ペロブスカイト太陽電池は従来型と何が違うのか
いよいよ量産が始まるペロブスカイト太陽電池。従来型とは何が違い、その違いは社会にどのような影響をもたらすのか。わかりやすく解説します。
目次
ペロブスカイト太陽電池のメリット
まずは従来型の太陽電池と比較をふまえてペロブスカイト太陽電池のメリットを解説します。
将来的に低コストで製造が可能になる
ペロブスカイト太陽電池は将来的に、低コストでの製造が可能になると期待されています。
ペロブスカイト太陽電池は材料を塗布したり印刷して乾かすという製造工程がシンプルな特徴を持っています。従来型の太陽光パネルは1400度の高温状態を作り出す必要がある工程などがあります。ペロブスカイト式は製造工程が大幅にシンプルであるため、将来的には製造コストが安くなることが期待されています。
太陽光発電を設置できる場所が格段に増える
従来型の太陽光パネルは金属製のフレームの上にセルを置き、更に表面をガラスで覆う構造が一般的です。パネルを折り曲げることは難しいとされています。
一方、ペロブスカイト式ではフィルムのような薄い膜として製品化することが可能です。例えば2024年からKDDIがペロブスカイト太陽電池を電柱に取り付けた直径15cmのポールに巻き付け、携帯電話基地局の電源として活用する実証実験を行っています。
また、ペロブスカイト太陽電池は従来型のパネルより重量が軽いです。従来型のパネルの10分の1とも言われており、これまで強度の問題から太陽光発電を設置できなかった屋根などにも設置が容易となります。また、重量が軽いことで設置する架台の強度を落としたり、屋根の補強も最小限で済むことで設置コストも抑えることができるでしょう。
発電時にCO2を排出しない・製造時排出量も少ない
太陽光を浴びることで電気を作る点は従来型の太陽光発電パネルと同様です。ペロブスカイト太陽電池も発電時にCO2を排出しないゼロエミッション電源です。
加えて、ペロブスカイト太陽電池は製造時に発生するCO2も従来型より少ないとされています。従来型で必要な1400度(シリコン系)という高温の工程が無く、100度程度と低温での製造が可能とされています。
更に重量が軽量であるため運搬時に発生するCO2も抑制することが出来ます。
弱い光でも発電できる
ペロブスカイト太陽電池は従来型より「弱い光」でも発電が可能とされています。早朝や夕方、曇の日や屋内でも一定の発電量を確保できる点が、従来型との違いです。
2024年12月から旅行代理店のHISとコンビニ大手のローソンが、コンビニ店内にフィルム型のペロブスカイト太陽電池を設置し、電子棚札(値札)や広告を表示する電子ペーパーの電源とする実証実験を開始しています。
屋内では小さなサイズのパネルしか設置できませんが、わずかな電源を必要とする場所で、最低限の照明がある場合は配線工事を行うよりもペロブスカイト太陽電池から電源を取る方がコストが安く済む例も将来的には出てくるはずです。
主原材料が国内で産出
ペロブスカイト太陽電池の主原料であるヨウ素は国内で産出しています。世界最大の産出国は南米チリでそのシェアは60%にのぼりますが、2位は日本で28%を占めます。国内で安定的な調達が可能な原料です。
ヨウ素は日本国内でも特に千葉県で多く産出されています。ヨウ素を含む古代の海水(かん水)から製造します。
ペロブスカイト太陽電池のデメリット
続いて、ペロブスカイト太陽電池のデメリットや今後の課題を解説します。
実用化当初は製造コストが割高
ペロブスカイト太陽電池は2025年以降に国内企業が実用化されるとされていますが、実用化された当初は従来型の方式よりも製造コストが割高となり、パネルの価格も高価になることが予想されています。
従来型のパネルも実用化された当初は高価で、大量生産が進むことでコスト低減が進んだ歴史があります。ペロブスカイトも同じ道を辿ることとなるでしょう。
従来型より寿命が短い可能性も
従来型のシリコン系太陽電池の耐久性は一般的に20年以上と言われています。メーカーによっては家庭用太陽光発電パネルに25年あるいは30年の保証を付けている例もあり、実際に国内でも1980年代から稼働を続けている太陽光発電設備も存在しています。
一方、ペロブスカイト太陽電池は従来型のシリコン系と比べて寿命が短いことが現状の課題とされています。国内で実用化される前の段階では屋外に設置した場合の耐用年数は5〜10年とされています。積水化学工業では、ペロブスカイト太陽電池の耐用年数を20年まで伸ばすことを目標に掲げています。
ペロブスカイトで日本社会はどう変わる?
ペロブスカイト太陽電池は日本社会をどう変えるのか、具体的な影響を見てみましょう。
太陽光発電の更なる導入拡大
経産省は2024年に、ペロブスカイト太陽電池を2040年に20GW導入する目標を策定しています。2024年時点での太陽光発電の累積の導入量は約90GWなので、十数年の間にその2割以上を導入するというのは野心的な目標といえるでしょう。
折り曲げることができ、重量も大幅に軽いことで太陽電池をこれまで導入出来なかった場所にも、太陽電池の導入が可能となります。昨今、メガソーラーによる環境問題が話題に上る機会が増えていますが、ペロブスカイトは少なくとも現状ではメガソーラーに適したものではないため、トラブルを起こさない形で太陽光発電の導入拡大を後押しすることでしょう。
また、前述の通り弱い光でも発電が出来るため、例えば照明器具はあるが配線が無いため電源を取ることが出来なかった屋内で、配線工事不要の電源として活用したり、配電網が届いていない山奥などでも活用が期待されます。
停電に強い携帯電話基地局の普及
携帯電話基地局には停電時に電源を供給するバッテリーが設置されており、停電しても24時間程度は稼働を継続できる基地局が増えています。
基地局の電柱にペロブスカイト太陽電池を設置する実証実験を行っているKDDIによると、1日あたりの使用電力量の3割以上をペロブスカイト太陽電池でまかなうことが出来ていると報告されています。基地局にペロブスカイト太陽電池が導入されることで、停電時の基地局の稼働時間を伸ばすことが出来るかもしれません。
国内産業の振興
ペロブスカイトは桐蔭横浜大学の宮坂教授が発明した技術です。昨今は関連特許の件数で中国企業に圧倒されているものの、重要技術は日本勢が抑えておりまだまだ優位性があるということで経済産業省もペロブスカイト太陽電池の普及に前のめりです。また原料であるヨウ素も日本国内での調達が可能である点でも、ペロブスカイト太陽電池による国内産業の振興に注目が集まっています。
2000年代まで世界シェアの約40%を占めていた日本勢の太陽光パネルのシェアは、直近で1%未満にまで低下し、中国勢が約8割を占めています。経済産業省ではペロブスカイトにより日本勢のシェアを取り戻す目標を掲げています。
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