値上げリスクが高い新電力の特徴とは
2022年、23年と電力会社の値上げが相次ぎました。足元では値上げの動きは落ち着きつつあるものの、今後数年以内に再び値上げをする懸念のある新電力も存在しています。そうしたリスクのある新電力の見分け方を解説します。
目次
値上げリスクが高い新電力を選ぶべきでない理由
まず本題に入る前に、値上げ懸念がある新電力を利用すべきではない理由を解説します。
値上げの通知が届いたら他社に切り替えればよいと考える人も多いでしょう。それは正しいです。ですが実際には新電力が値上げをしても、他社に切り替えを行わない消費者は少なくありません。
様々な理由が考えられますが、2022年に大幅な値上げを実施した新電力各社の販売電力量に大きな減少が見られないことが根拠として指摘できます。値上げの通知が分かりづらく、値上げの影響を正常に判断できないことや、メールなどで届く値上げの通知を見落としていることなどが原因として考えられます。
加えて、値上げの発表から実施まで時間的猶予が無く、他社への切り替えが間に合わないケースも散見されます。直近ではタダ電が値上げの実施をわずか10日前に発表するという事例がありました。消費者には不親切ですが、ルール上は一応問題無いということになっています(ルールの方が間違っていると思いますが)
以上の理由から、将来的な値上げのリスクがある新電力を利用することによって生じるリスクは無視できるものではないと結論付けることが出来ます。
値上げリスクが高い新電力の特徴
では、どのような新電力で値上げリスクが大きいのか。電力小売完全自由化が行われた2016年以降の実例をふまえて解説します。
他社よりも電気代が大幅に安い
他社と比較して電気代が大幅に安いところは要警戒です。無理のある価格設定を行っている可能性があります。
新電力各社は同じような仕入先から電気を調達し、全く同額の「送料」を支払って電気の販売を行っています。電気の調達量を正確に予想することや、事務経費や宣伝費などの部分でコストに差が生まれる場合がありますが、特定の会社だけが大幅に安い値段でサービスを提供することは難しいです。
そのような無理のある価格設定の電力会社は、2023年以降はあまり見られなくなりました。2022年に燃料価格や電力取引価格の異常な高騰が起きたことで、アグレッシブな価格設定を行っていた新電力が軒並み倒産やサービス終了に追い込まれたためです。
また、一時的な割安な料金で顧客を集め、後に大幅に値上げした事例もあります。2022年春にエルピオでんきやあしたでんきなど当時「最安水準」だった新電力が続々とサービス終了を発表する中、グランデータ社のONEでんきが割安な料金を維持し、更に大手電気料金比較サイト上で高額なキャッシュバックをばら撒いて顧客を獲得していました。
ですが、そのような大盤振る舞いをしていたONEでんきへの「大移動」が起きた直後、グランデータ社は燃料費調整額の計算方法を変更。電力取引価格に連動する市場連動型へ移行しました。
すると料金シミュレーションで「割安」だったはずのONEでんきが、電力取引価格高騰に伴い一転して割高になり、2022年は時期によっては大手電力標準メニューの1.5倍以上の水準で推移しました(一般家庭の平均的な使用条件での試算)
この件では申込みを行い、切り替えを待っている間に市場連動型プランへ移行させられてしまったユーザーも多数おり混乱がひろがったほか、市場連動型プランのリスクについて正しい認識を持つことが出来なかったユーザーも多数いたため、2023年春ごろにSNSで「炎上」が発生、監督官庁である電力・ガス取引監視等委員会もホームページ上でグランデータ社を名指しして注意喚起を行う(後に業務改善勧告に発展)など大混乱が生じました。
過去に料金単価の引き上げを行った
過去に電気料金単価(基本料金・電力量料金単価)の引き上げを行ったところには注意が必要です。
託送料金改定や大手電力標準メニューの改定に伴う料金改定は多くの新電力が行っており、このようなタイミングでの料金改定はここでは気にする必要はありません。
問題なのは他社が行っていないタイミングで値上げした新電力です。2022年には一部の新電力が、料金単価の引き上げを実施しました。値上げしていない新電力も少なくない中、値上げせざるを得なかった新電力が一部存在しています。
このような新電力は経営基盤が脆弱であったり、リスク管理の体制が不十分、電力の安定的な調達体制に不備があるなどのリスクを抱えている可能性があります。リスクを図る一つの指標として、特に2022年中の動きは参考になると思います。とりわけ、2022年の早い時期に値上げに踏み切った新電力は危険性が高いと思います。
卸電力取引所からの調達割合が高い
電力の取引を行う日本卸電力取引所からの電気の調達割合が大きな新電力は脆弱です。電力の取引価格はしばしば暴騰することがあり、その影響を受けやすいからです。
卸電力取引所からの調達割合は、各社が公表している電源構成に記載されています。「卸電力取引所」と記載のあるものに加え、「FIT電気」と書かれている部分も電力取引価格に連動する調達方法です。
2024年春は新電力の値上げラッシュに?
2024年春は、中小の新電力を中心に再び値上げラッシュとなる可能性があります。
2024年度から、容量拠出金という新たな制度が始まり、新電力(大手電力も)の費用負担が増加します。日本総研の試算によれば、1kWhあたりの新電力の負担額は3.86円になると推計されています。電気の販売価格の1割以上に相当する金額です。
新電力が負担する容量拠出金は、電気の調達方法によっては軽減されます。また、容量拠出金として集められたお金は発電所を保有している会社に分配されるため、自社グループで大規模な火力発電所などを保有している一部の新電力にとっては差し引きで大きな負担増とはなりません。
2023年に電気料金の値上げを実施した大手電力各社の多くは、既にこの容量拠出金による負担増を織り込んで値上げ後の料金を設定しています。ですが卸電力取引所からの調達割合が大きい新電力を中心に、織り込みが十分でない新電力も少なくないと予想できます。1年先取りで織り込んでしまうと電気代が高くなり、顧客の新規獲得に支障が生じるからです。
特に上で挙げた特徴に当てはまる新電力への切り替えを検討している方、あるいは既に契約している方は今後の動向に注意してください。
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