ホルムズ海峡封鎖で日本のエネルギーはどうなる?
中東情勢が緊迫化する度に注目されるホルムズ海峡の封鎖。実際に起きてしまった場合にどのようなことが起こるのか、解説します。
目次
ホルムズ海峡とは
ペルシャ湾の出入り口に位置する海峡です。北側はイラン、南側はオマーンという立地です。観光地としても注目されるドバイからは数百kmと、目と鼻の先の場所にあります。
中東地域で産出される原油の重要な輸送路となっており、日本に来るタンカーの約8割にあたる年間3400隻がホルムズ海峡を通過しているとされています。
2019年には日本やノルウェー企業が所有するタンカーが相次いで攻撃を受ける事件も発生しています。
ホルムズ海峡封鎖で何が起こるのか
ホルムズ海峡が封鎖されると起こり得る事態を解説します。
原油の輸入に大きな影響が
日本に来る原油の約8割がホルムズ海峡を通過していると言われており、原油の調達に大きな混乱が生じることになります。
ただし、日本国内には国内消費量の約200日分の国内備蓄があります。これは原油の輸入が完全に停止した場合でも、これまで通りの生活を約200日継続できることを意味します。ホルムズ海峡以外のルートでの輸入は停止しないことや、省エネへの意識向上によるエネルギー消費量の低下が見込まれることから、200日を裕に超える「持久戦」が可能です。
LNGの調達にも影響が
ホルムズ海峡封鎖では原油の調達への懸念がしばしば指摘されていますが、LNG(液化天然ガス)の調達にも支障が生じます。
中東依存度が9割を超える原油に対し、LNGは調達先の多角化が進んでおり中東依存度は1割弱と低いです。そのためホルムズ海峡が封鎖された場合でも、LNGの調達に対する影響は原油ほど大きなものではないにせよ、影響が全く無いわけではありません。ホルムズ海峡は世界のLNGの5分の1が通過すると言われています。
LNGは気体の天然ガスを-162度以下という超低温で冷却することで液体の状態にすることで、体積を圧縮し運搬や貯蔵をしやすくしています。超低温で液体の状態を長期間維持することが難しいことなどから、国内備蓄は国内消費量のわずか2週間分程度しかありません。
中東依存度が低いこと、また日本のような先進国は他の産地から「高いお金を出して買う」ことが出来るため、ホルムズ海峡封鎖のような事態が発生しても引き続き調達できる可能性が高いものの、混乱が生じることは避けられません。
エネルギー価格の高騰に繋がる
世界の原油生産の多くを占める中東地域産の原油の輸送に支障が生じるため、エネルギー価格が急激に高騰する恐れがあります。原油価格にとどまらず、LNGや石炭の価格にも影響が生じるでしょう。
電気代やガス代の高騰に繋がる恐れがあります。
停電・電力不足のリスクは?
不安なのが停電や電力不足のリスクです。これについて解説します。
真夏・真冬は節電が必要になる可能性
経済アナリストのジョセフ・クラフト氏は自身が出演するYoutube動画などで度々「ホルムズ海峡危機で日本が大停電に陥る」と発言しています。ですが大停電に陥るリスクは低いと言えます。
ホルムズ海峡封鎖により日本が調達できる原油の量が減少するリスクは小さくありません。しかし原油は約200日分の国内備蓄があり、国内備蓄が尽きる前に紛争の解決が図られる可能性が高いと言えます。ホルムズ海峡を生命線としているのは西側諸国だけでなく、中国やインドも同じことです。世界が一丸となって問題の解決が図られ、封鎖が長期化するリスクは低いと言えます。
LNGに関しては国内備蓄が少ないことから短期的に燃料不足に陥るリスクが低くないものの、中東依存度が1割弱と低いことから米国など他の産地からの調達を増やすことは不可能ではありません。
ホルムズ海峡封鎖が真夏や真冬の電力需要が伸びる季節に発生した場合、一時的に節電が必要となる可能性もゼロではありませんが、日本中が大停電に陥るリスクは低いと言えます。
意外とリスクが低い原油不足
日本は過去に発生した石油危機の反省もふまえ、国内消費量の200日分の国内備蓄を備えたり、それまで主力電源としていた石油火力発電所の新設を原則として禁止し、石油火力発電から脱却(2022年度の実績では電源構成の8%にまで低下)するなど様々な対策を講じています。
それに加え、ホルムズ海峡は日本のみならず中国やインドも含め「右から左まで」あらゆる国の生命線となっています。消費国だけでなく、中東の産油国にとっても輸出の停滞により収入源を絶たれることになります。ここで万が一問題が発生した場合、世界が団結して問題の解決に当たることが期待できることから、長期化するリスクは低いと言えます。ホルムズ海峡を封鎖する勢力が現れた場合、世界人類共通の敵となります。
「危機感」が高まる局面は避けられないものの、実際に原油不足で社会が停止する事態に陥ることは避けられる可能性が高いと言えるでしょう。ただしこれは日本のように十分な国内備蓄と、高い金額を払って代替調達ができる国の話で、備蓄も無く高騰した燃料を買うこともできない途上国には重大な影響が発生します。
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