電力自由化でも選択肢が無い「離島」
電力自由化により電力会社を自由に選べるようになりましたが、「離島」に参入する新電力は皆無と言える状況が続いています。なぜそうなっているのか、背景にある事情を解説します。
目次
制度上は切り替え可能だが・・
まずは離島での電力自由化の状況を紹介します。
そもそも電力業界における「離島」とは
まずは電力における「離島」の定義を簡単に確認しましょう。
「離島」と言うと、本州・北海道・四国・九州の4島以外で、なおかつ4島と橋が接続していないものを指すイメージがりますが、電力業界での「離島」は必ずしもその定義とは異なります。
電力業界では、本土と送電線が接続していない島を、離島と扱っています。
橋がつながっていない「離島」であっても、海底で電力ケーブルが接続しているケースは多々あります。例えば香川県の小豆島は、高松港から船で1時間掛かりますが、本州からの海底ケーブルで中国電力が送電しているため、電力においては離島とは扱われません(香川県だが中国電力のエリア)
離島に参入する新電力が無い
2016年に電力自由化が始まり、企業や家庭で電力会社を自由に選べるようになりました。地域によっては既に20%を超える世帯が、新電力に切り替えています。
ですが冒頭でも紹介したように、離島では選べる新電力が「皆無」であるため、切り替えが実質的に不可能となっています。ほとんどの新電力が供給エリアを「離島をのぞく」と指定しています。
制度上は新電力も参入が可能であると経産省が回答していますが、実際に参入する企業は皆無です。
離島で電力会社を選べない理由
では、なぜ離島に供給する新電力が現れないのか。その理由を紹介します。
安い電源の調達が難しい
外部と送電線が接続していない離島では、ディーゼル発電機などを使って島内で発電をしています。
ディーゼル発電機を使った発電は非常にコストが高いです。高いコストをそのまま顧客に転嫁すると離島の電気代がとても高くなってしまうため、ユニバーサルサービスの観点から本土で暮らす人たちがコストを負担をすることで、本土と「同程度」の料金水準を保っています。
例えば中国電力の場合、本土と同程度の料金で離島に電気を届けるには、約15億円の収入に対し、コストは33億円と見積もられています(2016〜18年平均) 約18億円の赤字分は、本土で電気を使っている人たちが負担することで賄われています。
ビジネスとしてペイしにくい
離島は人口が少ないため、電力の需要も大きくありません。
例えば新規で発電所を建設するなどの投資をしても、採算が取れるほどの顧客を獲得するのが難しいという事情もあります。
今後の離島の電力供給はどうなるの?
では、離島の電力は今後どうなっていくのか、見通しを説明します。
供給義務は○○が負ってくれる
電力自由化後は、各地域の「送配電事業者」が離島への電気の供給に対して、責任を負います。送配電事業者というのは、東電や関電など大手電力会社の中で電線や電柱、鉄塔などを管理している部門です。
送配電の分野は自由化されておらず、地域に1社ずつの会社が独占しています。独占する代わりに、責任を負ってくれます。
大幅に電気料金が上がることは無い
気になる電気料金ですが、今後も離島に参入する新電力が増えていく見通しは無く、電気代を「安くする」ことは出来ないでしょう。
しかし、かといって電気代が大幅に上がっていくようなことも起こりません。本土と同程度の料金水準を保つことが「電気事業法」という法律で義務付けられています(第二十一条) また、同じ法律で離島の電気料金は経産大臣の承認が必要と定めれているため、電力自由化前と大きく変わりません。
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