電気代値上げも?容量市場拠出金とは
2024年度から容量市場拠出金という新たな制度が始まります。この制度により、一部の電力会社が電気代を値上げする可能性も。どのような制度なのか、分かりやすく解説します。
目次
2024年度から始まる容量市場とは
容量市場という新たな制度を解説します。
目的:長期的な電力不足を防ぐための制度
2024年度から、容量市場という新たな制度が本格的にスタートします。
容量市場は長期的な電力不足を防ぐための制度です。分かりやすくおおまかに説明すると、発電所が減少することを防ぎ、発電所を増やすために国民全体でお金を出す制度です。
日本では原発事故による原発の長期停止、石油火力発電所を始め火力発電所の老朽化による廃止、脱炭素化による火力発電所の新設の停滞など様々な要因が重なったことで、2011年以降は電力供給に余裕が無い状況が継続しています。
このような状況への対策として導入されたのが容量市場という新たな制度です。
容量市場拠出金は、この容量市場という仕組みを支えるための費用です。
容量市場拠出金の流れ
容量市場拠出金のお金の流れを簡単に説明します。
容量市場拠出金は容量市場というマーケットを介して、「電力会社」(小売)から「発電所」に分配されます。費用を負担するのは、電気の販売を行っている会社(小売電気事業者)です。消費者は電気代の一部として、容量市場拠出金を間接的に負担することになります。
発電所を保有する会社は、その発電能力などに応じて容量確保契約金額を受け取ることが出来ます。発電した量ではなく、発電能力に対してお金が支払われるため、これまでよりも発電所の採算が改善されることで、発電所の維持や新設が活発になることが期待されます。
ちなみに、容量市場では「4年後」の発電能力を取引しています。制度の本格的な運用が始まるのは2024年度からですが、既に2020年7月に初めての入札が行われ、価格が決定しています。
一部電力会社が値上げに動く可能性も
容量市場の制度が本格的に開始し、容量市場拠出金の支払いがスタートすることで一部の電力会社が電気代の値上げに動く可能性があります。
1kWhあたり3.86円のコスト増になるとの試算も
2020年に初めて行われた容量市場の入札(2024年度分)では、14,137円/kWという金額に決定されました。日本総研の試算によると、1kWhあたり3.86円(負荷率30%)になると試算されています。
家庭向けの電気料金の平均単価は30円/kWh程度なので、電力会社(小売)にとっては2024年度から販売価格の1割分のコスト増加が発生することになります。
中小新電力の電気代値上げが相次ぐ恐れ
中小の新電力の中には、容量市場の制度そのものや、費用負担に対して反対の声を挙げているところがあります。反対声明の中には「電気代への影響が避けられない」などと主張しているものもあることから、実際に容量市場の運用が始まる2024年春前後にかけて電気代を値上げする新電力が現れるでしょう。
特に卸電力取引所からの調達割合が高い新電力を中心に、容量市場拠出金の負担が大きくなる傾向があり、電気代に影響を与える可能性があります。
大手電力などでは既に織り込み済み
全ての電力会社が容量市場スタートにあわせて値上げするわけではありません。
2023年に電気料金の値上げを行った大手電力6社のうち、北海道電力や東京電力などは値上げの申請に容量市場拠出金を含めており、容量市場拠出金の支払い開始による値上げを行わない可能性が大きいです。
また、それらの大手電力にあわせて料金改定した新電力各社についても、容量市場を理由とした値上げを行わないケースが多いのではないかと予想しています。
容量市場制度では、電力会社(小売)が費用を負担する一方、発電所を保有する会社が収入を得ることができます。新電力の中には自社や自社グループで大規模な火力発電所を保有している場合があり、差し引きで大きな負担増とはならないケースもあります。
結論としては2023年のような値上げラッシュにはならないものの、中小の新電力を中心に散発的な値上げが発生するでしょう。
容量拠出金を理由に値上げを発表した新電力
容量拠出金の導入を理由に電気料金の値上げを発表した新電力をまとめます。
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